妊娠中であることを示す「マタニティーマーク」を厚生労働省が定めて10年。全国の自治体が妊婦にキーホルダーなどのグッズ類を配布しているが、「反感を持たれそう」などと使用を控える動きが広がりつつあり、妊婦からは「電車で席を譲れと圧力をかけるようで気が引けた」とか妊婦以外からは「妊娠は病気じゃないのに特別扱いはおかしい」といった風潮があるらしい。厚生労働省は「本来の趣旨が理解されていない」としてより啓発に力を入れていくというが、本来の目的とはおなかの目立たない妊娠初期ほど重いつわりに悩むケースが多く妊婦であることを知らせることで配慮してもらえるように、受動喫煙の防止・体調不良や緊急時対応のため・災害時に妊娠中と知らせるなどの役割をもつものである。オフィスタでも妊婦が職場で安心してはたらけるように「マタニティマークPC壁紙」を平成23年から同省に相談し無料で配布している。オフィスタは育児と仕事は両立できるというコンセプトの下、これからママさんになる妊婦さんも職場で気持ちよく働けるように、また職場側も雇用環境の整備を進めていただくための支援に取り組んでいます。そういう意味ではマタニティマークは意味があるものだと考えていて、オフィスタのマタニティーマークPC壁紙も全国で活用されているようです。このマーク自体の認知度がまだまだ低いというのは残念な結果でもある。このマークは妊婦への思いやりということでは効果がありそうなのに、何故反感を買うような結果になっているのか。私が思うに、鉄道など交通各社は優先席にマークを掲示し、お年寄りなどと同様に席を譲るように呼びかけている。マークの目的は妊婦であることを知らせることで配慮してもらうことであり、やさしさの押し売りとは別である。普通に考えて電車内で目の前に妊婦さんがいれば(マタニティーマークを付けている女性がいれば)席を譲るのは当然の事であり、わざわざ妊婦に席をお譲り下さいなんてアナウンスは必要ないと思う。もし妊婦に席を譲ってくださいとアナウンスをしなければ誰も席を譲らないような世の中だとしたら、それはそういう大人を生み出した教育なり国作り自体が悪いのである。子供のころに風邪ひかないように帰ったらうがいをしようと思って家に着くと、母親が「帰ったらうがいしなさいよ!」と言われたら、「わかってるよ、うるさいな!」という経験をした方も多いと思いますが、妊婦へ過剰な配慮の強要はそれに近くて、妊婦さんがいれば席を譲るなんて言われなくてもわかっている、妊婦さんの目の前でタバコ吸わないでくださいなんてわざわざ言われなくてもそんなことわかっているに決まっている。にもかかわらず「妊婦には席を譲ってください」、「妊婦の前でタバコ吸わないでください」と執拗にアナウンスされれば「うるさいな、わかってるよそんなこと!」と反感の元凶となりえるだろう。「電車で席を譲れと圧力をかけるようで気が引けた」という妊婦の声があるように、妊婦は別に席を譲って欲しいわけではないだろうし、タバコ吸ってる人のそばになんてそもそも近づかない。配慮は周囲の者が自発的に行うことで第三者が強要したりすべき類のものではない。過剰なやさしさの押し売りが逆に妊婦にしてみれば有難迷惑の状態になってしまったというのが一理あるように思う。障がい者も同様で過剰な親切心の押し売りや同情は本人の自尊心を傷付けるそうで、健常者と同等に見て欲しいという気持ちはあり特別扱いを望んでいないが周囲はなかなかそのような対応をしてくれないと聞いたことがあります。極論すぎるかもしれないがマタニティマークは妊婦であることを知らせることが目的で、それ以上「やさしくしてあげてください」なんていう言葉はいらないかもしれない。そんな言葉がなくても配慮を絶やさない者ばかりだと信じたい。もし、「妊婦に席をお譲り下さい」と言わなければ席を譲ってもらえないようなそんな世界だとしたら、妊婦云々の議論などではなくこの国のありかたを根本から考え直さなければダメだと思います。昭和の時代にあって平成の時代にないもの、それは”人の情念”だと聞いたことがありますが、だとしたら日本は何か大事なものを失ってねじ曲がった方向に向かっているのかもしれませんね。