先日ある新聞の朝刊でこんな記事を目にした。ある大学教授が執筆した記事である。要旨はざっと次のようなものでしたが、興味深かったため書いてみます。
『大学4年生は就活に入り内定3とか5とか内定数を競うかのごとく自慢げに話している。会社から内定通知が届いたらお礼と入社したら頑張りますという返事を出す。第2第3の内定企業にはすぐに辞退をするべきではないか。・・・にもかかわらず内定通知を受けたら全ての会社に承諾の返事を出してそれから3社のうちどこにしようか選ぶという。ということは3社のうち2社は採用計画が狂い、その2社に採用される可能性のあった学生の就業機会を奪う結果となっている。就職率が低いのはこういった内定妨害が一因で、このような行為は利己的であり、こんな利己主義の学生を企業は採用しても役に立つはずがない。自身の内定数を3とか5とか誇ることなどもってのほかで、大学教育を受けておきながら道徳性が高められなかった、むしろ教育の問題ではなく人間としての欠陥である。』
というものである。なるほど、一理あるようにも感じます。自身の体は1つしかないのに内定3社全てに良い顔をし、さも入社を匂わせておきながら、腹の中ではどこにしようか3社を兼ね合いにかけて自分に都合の良い会社だけを選んで、他の2社には悪びれる様子もなく当たり前のようにお断りをする。そんな利己主義が当然のようにまかり通っている今の世の中に悲観するというのがこの教授の内容です。たまに「他の派遣会社にも応募して内定をもらっています、もっと良い条件のお仕事があればと思って応募しました。」と平然と答える方もいらっしゃいますが、自分の事しか考えず、他人への迷惑を考慮できない方はどんなにスキル・能力があっても欠陥と言わざるを得ないかもしれません。インターネットの求人サイトでも気に入ったお仕事案件をカートに入れて一括で応募というお買い物感覚のシステムも目にしますが、何の疑問も持たずに当たり前のように利用している方の感覚も正直わたし個人的には理解できませんし、この先の就業への熱意というものが薄っぺらくなっていくような危機感すら感じます。なお、くだりはこう続く。
『このような欠陥人間が社会に出ることの見本が子の虐待死である。若者男女がくっついて同棲。やがて子が生まれると男は逃げ出し、女はまた他の男とくっつく。男は無職。今度は2人揃って子を虐待する。己が幸せならそれで良いという利己主義であり、反省も悔恨も謙虚さもない。大阪寝屋川市で典型的な事件があった。1歳の子を虐待死した両親に対して大阪地裁は検察の求刑10年を上回る懲役15年を言い渡した。後日この両親は控訴した。理由は判決が重すぎるから不服とのこと。呆れた、確かに控訴する権利はあるかもしれないが、この理由は何の反省もないことを意味している。無抵抗の幼児に対して犯した罪は非人道的殺人であり、本来は万死に値する。本当に反省するならばいかなる罪も受け入れるべきなのに、その反省など全く無く、罪が重いの・お助けを・もっと軽くして・・・という利己そのものであり人間として欠けている。』
毎日当たり前のように新聞・ニュースで人が殺されたり、非人道的な報道を目にしますが、TVのニュースで殺人事件が流れるのは今の日本では珍しいことでも驚くことでもなくなってきています。就職でも同じように内定3社あれば全ての会社に良い顔をしておきながら、利己主義だけで平然と2社に断りを入れるのが当たり前の神経になってしまった日本というのも考え改めることなのかなと思いながら読んでいました。罪悪という意識が希薄になり、希薄どころか利己主義ではそれが当たり前の感覚になってきている今の社会って一体何なの?って考えさせられる記事でした。求人企業や派遣会社が利己主義求職者を増幅させないよう歯止めをかけるべきなのに逆に利己が当たり前という就活状況を生み出すシステムや要因を作ってしまったことも反省しなければならないかもしれない。間違いなく日本はアメリカ的になってきている、日本の古き良き心を失いつつあると思う。昨日も京都で18歳の若者(自称無職)が無免許運転でドライブを楽しみ通学途中の児童の列に突っ込んだ。妊婦・児童が亡くなり、妊婦のお腹の子供を含む犠牲者を出す痛ましい惨事になった。苦しむ被害者を前にして加害者の若者達は車外で助けもせずに携帯電話をいじくっていたという報道もあった。この加害者の若者達にとってはそれが当然の感覚なのだろう。日本の教育と将来を背負う若者の道徳がここまで地に落ちたことに残念だ。今後のこの少年たちの罪への見解に関心があります。最後に記事はこう括られていた。
『検察の求刑を上回る判決・・・乱世の昨今にあって、みごとな春光であった。論語、君子は刑(責任を取る覚悟)を懐い、小人は恵み(お助け)を懐う。』
出典:産経新聞 H24年4月17日付「あふれる利己主義者」立命館大学教授 加地伸行
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