厚生労働省はメンタルヘルスの企業側への法令義務化の方向で検討しています。既にご存知の方も多いかと思いますが、労働政策審議会は通過して、国会で現在審議中というところだと思いますが、もし施行されれば企業側は労働者をメンタルヘルスの医師の診断を受けさせなければならない、“受けさせなければならないという義務化”するのが改正案です。しかし現実的に、年に数回医師に見せただけでうつ病などのメンタルの発見ができるものなのでしょうか。
しかし、もしうつ病などで社員が自殺などしてしまったとしたら、会社側は「法律に従って年に1回お医者さんに見せました、だから会社には責任ありません。」で済むのでしょうか?遺族は納得しないでしょうし当然労働争議、訴訟になるでしょうし、現に何億という賠償金で会社側が負けているケースもありますし、こうなってしまうととても労災だけでは補償しきれないのではないでしょうか。
やはりこういうメンタルヘルスも年に数回医者にみせれば法律の義務はクリアしたと安易に考えてはいけないのではないかと思います。専門の知識を持っているお医者さんも初めて会う人と20~30分話したくらいでは発見できないと思います。やはり、一番初めに気付いてあげられるのは一緒に働く職場の方なんですよね。「彼女は最近ちょっと元気がないんじゃないかな、もしかしたらうつ病になりかけているんじゃないかな」とかやっぱり気付いてあげられるのは職場の方だと思います。「上司とうまが合ってないんじゃないかな?」とかそういうのは毎日見ている人でないとわからない。医者は今日初めて会った患者がどんな毎日を過ごしているのか、どんな上司の下で働いているのかまでは知らないですからね。
本当は社員全員がこういう意識を持っていただくのが理想ではありますが、専門的な知識でもありますので、なかなかそうもいかないと思います。せめて雇用環境整備士の方は積極的にこういうケースでも社内で活躍していって欲しいと思っています。これは先日、雇用環境整備士の講習会を受けてきたときの受け売りですが、雇用環境・職場環境を整備するってとっても大切な事なんだなと良い勉強になりました。そもそも周囲の同僚に互いに気遣うやさしさを各自が持って、思いやりのある職場を創ることこそ現代では最も難しい関門だからです。
労働基準法も労働者派遣法も厳しくなってきており、労働者権利の保護は強化される一方で、なにかと法律論が社内で持ち上がってきている企業さんも多いのではないでしょうか。何かあればハラスメントになってしまうので上司もついつい言いたいことも言えない状況の企業も増えてきていると聞きます。法律には過剰に反応するがそうでないものには我れ関せずの従業員、昭和の時代にあって、平成の時代にないもの、上手く表現できませんが確実に日本の職場は何か大事なものを失っていっているように感じてなりません。職場でのうつ病が増えてきている背景は実は灯台下暗しだったなんてことではシャレにもなりませんからね・・・。