本年度の地域別最低賃金額の改定については、厚生労働大臣の諮問機関である中央最低賃金審議会が、本年7月27日に示した答申「平成23年度地域別最低賃金額改定の目安について」を踏まえて、各地方最低賃金審議会で調査審議が行われた結果、9月12日までに、すべての地方最低賃金審議会で改定後の地域別最低賃金額の答申があり今後手続きを経て、正式に決定されます。改定額の全国加重平均額は737円(昨年度730円)で、改定額の分布は645円(岩手県、高知県、沖縄県)~837円(東京都)、すべての都道府県で1円~18円の引上げが答申されました。最近TVやニュースで生活保護受給者の方が、働いている人よりも収入が多いという地域別最低賃金額が生活保護水準と逆転していた埼玉、東京、京都、大阪、兵庫、広島の6都府県で逆転を解消した結果となります。
そもそも生活保護とは生活に困窮する国民に最低限度の生活を保障し、自立を助長することを目的としたものです(生活保護法第一条)。長引く不況で生活保護受給者が急増しているのはご存知かと思いますが、一度受給し始めると働く意欲が阻害され抜け出せなくなるという制度上の欠陥があります。多少の不便さえ我慢すれば食べていけるから働く必要がないと思ってしまう人が増えてしまいます。法の目的は「自立の助長」ですがこの部分が機能していないのです。雇用が厳しい現在、“働けない方”へ生活を保障することは大切ですが、一方で“働きたくない方”が増加する原因ともなります。働きたくない方にしてみれば、気に入った仕事がない・時給が安いということを理由に職業選択の自由の下での主張ができてしまいます。問題は働く意思があるかないかその真意が誰にも判断できないことにあります。最近の日本では権利と保護について過剰に手厚く扱われる傾向にあります。そしてこのことを逆手にとって、さも当然のように自身に有利な権利主張をする者が多いように思います。過保護すぎる法律体制は悪意のもとでは利用しやすい道具にすぎません。「疑わしきは罰せず」という言葉がありますが、日本は本当にこれでいいのかな?とふと思う時があります。
戦後の混乱で活躍したこの法律が、今頃になって働きたくない者の正当な権利主張という建前の下で活躍するものにならないことを一国民として祈ります。また、NPOや地域の協力で社会から孤立しがちな受給者の就労意欲を喚起しているケースもあるそうです。受給期間が長期化した方へ「自分が周りから必要とされていると実感できる居場所を提供する」ことが大事なのだそうです。このような職業あっせん事業はハローワークにしか権限が認められていませんが、届け出をすれば職業のあっせんが認められております。オフィスタでも許可を取得し事業として行っておりますし、(社)日本雇用環境整備機構でも無料職業あっせんという形でハローワークとほぼ同様の形態での職業あっせんも行う予定でいます。失業対策というのは“現在、職に就いている者”ではなかなか意識が芽生えないそうですが、昭和の時代には同様の困難を乗り越えた実績があるのですから、むしろ当時を知る方は積極的に雇用対策・失業対策に関心を抱いて欲しいと思います。