(社)日本雇用環境整備機構がハローワークの新着案件をホームページで出していますが、オフィスタも団体の会員ということで眺めているのですが、全体的に給与(または時給)が下がってきているなという感じをうけます。同時に高い資格・経験・スキルが求められている案件が増えてきているようにも感じます。そこで、今日はハローワークへ求人を出す企業さま向けに書いてみようと思います。
確かに現在は求人案件数に対して求職者数が溢れている国内状況ですので、企業さまが最も誤りがちなのが、「給料が安くても人は来るだろう」という考え方です。たしかに人気案件はハローワークへ出せば100倍200倍の応募はあると思います。しかし、その給料に見合った内容でなければ応募者は来ないのもまた現実です。数百通の応募が来る案件もあれば、誰一人として応募が来ない案件も当然あります。都内ですと時給あたりで1,000円以下の案件は応募者がないというのは一般的ですが、では何故給料を安く設定しても応募者が殺到するなどと言う噂が広まったのでしょうか?
1つに行政庁アルバイトが900円前後で募集しても何十何百通の応募があるという話は良く聞きますので、この辺りが噂の発端ではないかと思います。行政庁(省庁・役所)でのお仕事というネームバリューが成せる業ですので、一般の企業が真似をすると期待に反して反響がないということはあるでしょう。上場企業であるというネームバリューによる労働者への安心感であったり、勤務地が憧れの丸の内の高層ビル内のオフィスであったりという時給1,000円程度でもそれ以上の満足を与える付加価値がある案件には誰でも応募したくなるものですので、このような事例は一部の限られた企業だけの特権ではないでしょうか。
または、時給900円でたまたま高スキルの大満足のいく人材が応募され採用に至ったというレアケースの自慢話に尾ひれがついてこのような噂に発展したのかもしれません。
一般的には最低でも、時給で1200~1400円程度、月給で20~23万円程度、社員であれば当然賞与等はご用意しないと、労働者も当然生活がありますので、そうそう応募はしないでしょう。次の良い仕事が見つかるまでのつなぎとして応募するケースはあるかもしれませんが、初めから腰かけ入社なのでモチベーションも定着率も期待できないと思いますので、それを覚悟の上で採用せざるを得なくなるというリスクはあります。
派遣の方が時給が高いので、ハローワークの案件に応募せずに、派遣を利用する方がここにきて急増しているのはこのような背景が理由です。
次に多いのが求職者に求めるものが高く時給と釣り合わない案件が目につきます。例えば、「税理士資格取得者で決算まで出来る方、経理の実務経験5年以上、残業できる方で休日出勤もできる方、営業もできる方、従業員数2名、賞与なし、交通費月に2000円まで支給、月給14万円、社保完備」等は、まず第一に企業側の理想・希望を並べただけで労働者への歩み寄りが見えてきません。社保完備ともっともらしく書かれてはいますが、一体手取りはいくらになってくるのかと思うとゾッとしてしまいます。妻子(もしかしたら住宅ローンも)を持つ税理士資格取得者の経理のスペシャリストが応募するとは正直とても考えられません。該当する求職者は自分の持っているスキル・経験がどこの企業も欲している貴重な財産であることは知っていますので自身の安売りはまずしません。いくら就職難のご時世とはいえ世の中そうそう虫の良い話はありませんので、労働者にしてみれば応募の検討の余地すら得られないと思いますし、何よりこのような求人募集は企業イメージを低下しかねません。ハローワークはさまざまな人間が貴社を見る機会でもありますので、ある意味自社の広告でもあるという点も気を付けなければインターネット社会の世の中ですので尚更危険です。
以前にも書いたことがありますが、就業難・不況の現在だからこそ、優秀な人材が市場に眠っています。その優秀な人材を発掘するためにどこまで歩み寄った魅力ある諸条件を付加できるかは大切です。就業難の時代だからこそ労働者に好条件を用意しようという企業は優秀な人材を獲得でき、不況なので良い人材を安い人件費で獲得したいと考える企業はなかなか思うように採用活動が進んでいないようです。企業さまにしてみれば「不況でうちも苦しいんだ」というのはもっともだと思いますし、経営者の方にしてみればそれは切実な問題であることも紛れもない事実ですので、求職者と求人企業の間の溝というかギャップを感じずにはいられません。仕事柄さまざまな企業・団体さま、そして求職中の方々と接する機会があるのですが、共通してそのことをしみじみ実感しています。
参考:ハローワーク新着案件リスト((社)日本雇用環境整備機構)