「ローマに消えた男」(2013) 62点

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「グレート・ビューティ 追憶のローマ」(2013)主演のトニ・セルビッロが飄々とした表情でコチラを覗き込んでいるポスターを見てからずっと気になっていたが、年末進行の仕事波にのまれて先送りに。
12月になってやっと恵比寿ガーデンシネマにて鑑賞。

[「グレート・ビューティ 追憶のローマ」鑑賞時の感想はコチラ]



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支持率の低迷や民衆からのプレッシャーに耐えかねた野党の党首エンリコが突然失踪。
側近の妙案で、長らく精神病院に入っていた双子の兄ジョヴァンニを替え玉に立てる。

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モチロン双子、トニ・セルビッロの一人二役でそっくりなんですが、表情や白髪染めの具合で見分けが付く。
エンリコは几帳面で真面目、独りで思い詰めるタイプなのに対し、兄ジョヴァンニは明るく開放的で楽観主義。
ウイットに富み、斬新(に見える)彼の演説やインタビューは、低迷していた党の人気を一気に高沸させる。

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一方、古い友人宅に身を寄せ隠れる当の本人、弟エンリコは、友人一家や同僚たちとの交流により、忘れかけていた人間らしい感情を徐々に取り戻していく。

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この友人の女性が映画のスクリプター、旦那が映画監督ということで、映画のロケ地に一定期間滞在するのだが、それに付いて行くエンリコが面白い。
国外に逃亡して更にまた映画撮影…非現実の入れ子状態。

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そこに滞在しながらも、一定の期間が過ぎれば現実に戻らざるを得ない状況を示唆され、確実にその日はやって来る。
だがその事実に悲壮感は無い。
人間らしさを取り戻し、次第に活き活きとした表情に戻ってゆくエンリコ

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一方、今や民衆の人気者、メディアにも連日取り上げられ、社会的重責や圧力も高まり、徐々に不安定になっていく(ように見える)ジョヴァンニ
所詮一時の空論、とコチラも心配になるが、彼の言動や魅力的な振る舞いは、確実に人々の心を捉える “何か” があるのも事実。

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初めは見分けがつきやすかった二人は、物語りが進むにつれ、あまり違いが無くなってくる(ように見える)。
そして彼らを取り巻く人々も次第に変化してゆく。
とりわけ、側近のアンドレア・ボッチの変化は、見ているコチラまでニヤリとさせられる。

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【こっからネタバレと完全な私感】注意

終盤、またジョヴァンニが失踪。
エンリコと連絡を取り合い、再度入れ替わり無事に元通り…と見せかけて、本当はどっちはてなマークという、観客に結末を委ねるエンディング。

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真面目に国の行く末を案じるエンリコ
魅力的でカリスマ性に富んだジョヴァンニ
どちらも良い面があり、足りない部分もある双子。

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正に陰陽を一体化させた陰陽魚太極図太極図のように、二人が一体化すれば完璧なのにビックリマークと思っていたが、もしや…
表に露出する人物はジョヴァンニ、影で政策を練るのはエンリコ…と二人三脚で国政を背負って行くのでははてなマークと想像したnagiでした。



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地球儀“地球儀の間” で繰り広げられる、一見親密そうな大統領との会見…政治的駆け引き。
この画ヅラが面白いなぁと印象に残っていたら、どうもチャップリン「独裁者」(1940) へのオマージュらしい。
メモ勉強不足…拙者、まだまだでござる。土下座

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[参考画像:チャップリンの「独裁者」]



[この日の恵比寿ガーデンヒルズ]
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