日時:令和元年5月10日(金) 18:00~19:30
アドバイザー:中谷常二先生、岡部幸徳先生
出席:社会人8名、学生6名
課題図書:フリードマン 「資本主義と自由」日経BPクラシックス 1、2、6章

第1、2章
〇 自由主義の前提・必要条件は「個人が自由に決められる」ことだが、現代社会では様々な障害・制約がある。セブンイレブンの終夜営業に対して公正取引委員会が優越的地位の乱用の適用を検討しているようだが、判断は難しいところ。
 ・ 経産大臣がコンビニ各社の社長を呼んで意見したが、行きすぎだと思う。
 ・ 現実には情報の非対称性から、自由な判断が阻害されるケースが多いので政府の役割の中にこの非対称性への対応があっても良いと感じた。

第6章
〇 日本では低所得者層に対する教育補助の法案が本日通過(※)。
〇 以前フリードマンの企業経営者は金儲け以外のことを考えるべきでないという論文を読んだときには極端な考え方だと感じたが、今回2,3,6章を読んで思ったより正統派の議論だと感じた。
〇 日本では国立、公立大学で安い授業料しか負担していない者方が就職で有利なのが実態。米国ではハーバードやMIT、スタンフォード等有名大学は軒並み私立で授業料が高い。この違いはどこから生まれたのか?
 ・ 米国では政府のヒモつきになりたくない先輩たちが大学を守ってきたのでは。
 ・ バウチャー制にすると人気のある科目ばかりがもてはやされて基礎研究がおろそかになるのでは?
 ・ 国立大学は国力を上げるための選択と集中の政策ではないか。
〇 阪大は理系の大学。司法浪人は大学を休学して浪人していたが、学長が理系に変わってから休学を受け付けなくなり学生から不満が出ていた。
〇 職業=金儲けが前提になっているところに違和感。儲かる仕事が良い仕事とは言い切れないのでは。
 ・ 教育を投資とリターンという観点のみで考えるところに同じ違和感がある。
〇 外部効果が政府介入の理由としているが、時代とともに外部効果の態様がかなり広がっているので介入の余地が広がってくるのではないか。
 ・ 過疎地への医師供給という目的のために補助金を出すことはフリードマン的にも許されるのではないか(この場合、就業地域が限定されることになるのでは)
 ・ フリードマンであれば田舎に住むことが住みにくいのであれば済まない自由があるというのでは?
〇 完全情報、合理的行動が前提の議論なのでその時点でかみ合わない。
 ・ 金沢の方が明らかに住みやすいのになぜ東京に戻るのか、自分でもジレンマ。
 ・ 自由な選択をすることで一方不利益もあるかもしれないが、各自の判断で行動すればよいという考え方だと素直に読んだ。
〇 大学のバウチャー制度は面白いと感じた。伊勢の皇學館大学は戦後一度廃学になった大学。人気のある大学になるのは難しく、大学が競争にさらされる世の中になったら生き残れるか疑問。
〇 神社は保護されている印象があるかもしれないが、実はあまり国のお金は入らない。文化財指定があったとしても補助金は微々たるもの。
 ・ 自分の経験でも文化財行政は「金は出さないが口は出す」というのが基本的スタンスだという印象。
 ・ 橋下知事の時に文楽等への補助金がカットされたが神社関係でも突然補助が打ち切られたケースもある。
〇 私学の幼稚園に通わせているとやめさせるのは簡単だが転園先は簡単には見つからない。最低限の保育サポートは必要と感じた。
〇 幼稚園、保育園を基礎教育と考えるかどうかも意見の分かれるところかもしれない。
〇 リバタリアニズムからすると「保育園落ちた、日本死ね」はとんでもない話?
〇 序章を読んでなるほどと思った。フリードマンの考える自由の範囲等。
〇 保育園が不足しているのは東京など大都市周辺であり、例えば金沢では余っている。それでも東京に住みたいのであれば自助努力が必要なのでは、という人もいるだろう。

※    参考 大学無償化法が成立-大学ジャーナルオンラインより抜粋
低所得者世帯を対象に大学など高等教育を無償化する大学無償化法が、参議院本会議で与党と国民民主党などの賛成多数で可決、成立した。世帯の経済状況で教育格差が固定化するのを防ぐのが狙いで、2020年4月から新制度がスタートする。財源は10月に予定する消費税率の10%への引き上げ分を充てる。

 参議院によると、大学無償化法案には与党の自民党、公明党に加え、野党の国民民主党、日本維新の会も賛成し、立憲民主党、共産党などが反対した。投票総数230票のうち、賛成は185票で、反対が45票。

 大学無償化は年収の目安が380万円未満の世帯の学生を対象に、大学などの授業料減免と返済が不要な給付型奨学金の拡充で対応する。対象となる学校は文部科学省が設定する要件を満たした大学、短期大学、高等専門学校、専門学校。

 授業料の減免や給付水準は親の年収に合わせて差を設ける。授業料減免の上限は国公立大学で年間54万円、私立大学で年間70万円。給付型奨学金の上限は国公立大学へ通う自宅生で年間35万円、私立大学に通学する下宿生で年間91万円となる。

以上(文責 北村)