私が遺せるもの | 小椋聡@カバ丸クリエイティブ工房

小椋聡@カバ丸クリエイティブ工房

兵庫県の田舎で、茅葺きトタン引きの古民家でデザイナー&イラストレーターとして生活しています。
自宅兼事務所の「古民家空間 kotonoha」は、雑貨屋、民泊、シェアキッチン、レンタルスペースとしても活用しています。

自分の人生が80年だと仮定したら、現在43歳の自分は既に半分を折り返したことになります。ついこの間まで子供から大人になったばかりだと思っていたのに、いつの間にか社会を支える重要な役割を担うような年代にさしかかっていますが…ホントにそう成れているのか甚だ疑問です。もちろん、若い頃よりも今の自分の方がずっと自分を好きでいられるのですが(若い頃の自分はトゲトゲしていてあまり好きではない)、かといって何かを成し遂げて来たのかと言われると、それもまだはっきりとは形に出来ていないような気がしています。この地球の上に数多存在している人間のひとりとして、短いこの人生の中で自分にしかできないことが、これから先に何か遺せるのでしょうか。

現在はイラストレーターとデザイナーの仕事をしていますが、僕が描く絵の多くは動物の「いのち」や子供の教育に関わるものがほとんどですので、自分が死んだ後にもこれらのイラストを福祉活動に関わる人たちが自由に使ってくれるようになれば、それはとても素敵なことだと感じています。犬のウンチを拾っている場面やワクチンを打っているところなど、ボランティア団体の皆さんが啓発活動に使いたいと思っているマニアックなカットは意外と存在しないのです。このことは自分の役割として、これからもライフワークを含めた仕事として関わっていきたいと思っています。

イラストとは全く違う分野ですが、大学で勉強をして来た作曲家としての自分にどれぐらいの可能性があるのか、自分でも未開拓の部分が多くて未知数です。高校生の頃などにはたくさん歌の曲を作っていたので、最近また純粋な歌の曲を作りたいな…と思うことがよくあります。大学時代から27、8歳ぐらいまでは、クラシックの器楽曲や舞台の音楽などを書いていましたが、大学を出るとオーケストラの曲を書いても演奏される機会もないので、動物の保護活動に関わり始めた頃から曲を書かなくなってしまいました。でも今、聞き直してみても、結構いい曲をたくさん書いているんです!今は、仕事の傍らに舞台に関することで必要があれば編曲をしたり、短い曲を書いたりすることもあるけど、もう少し自分の可能性を探ってみたいという気もしています。そんなことを思いつつもう半分を過ぎてしまいましたので、残りの40年で全部吐き出さないと…。

その他、自分では思いもしなかったことで、意外な才能が発揮されることもあるかもしれません。例えば、実は畑仕事をしたらもの凄いセンスを発揮し、誰も思いつかなかったような育て方でスゴく美味しい野菜を育てる才能があったり、今は全く無頓着と思っているファッションのデザインをしたら、実はスゴいセンスを発揮したり…自分でも知らない可能性がまだあるはずだと思って、そういったことを考えると少しワクワクします。いずれにしても自分が動き出さなければ、それらの才能に気が付くことすら無く死んでいくことになるので、いろんなことにチャレンジしてみたいと思っています。

人間はどんなにもがいても金を持っていても、150年も200年も生きることはできませんし、そこまで生きても幸せであるとも思えない。なので、自分に与えられた決して長くはない時間の中で、私はこのために生きてきたんだと思えるものを遺して人生を全うすることができれば、日々、地球のどこかで繰り返されている人間の生き死にの中で、自分が存在した意味を感じることができるのではないかと思います。