さて、昆虫標本の即売会に行きましたのでちょっと昆虫関係の記事を続けてます。

 

先週購入した標本の中で思わず呪詛を吐いてしまったあのパキソマ

Pachysoma:ナミビアから南アフリカにかけて生息する飛べない糞虫の仲間)

 

翅はなんか補修してるみたいだし、おまけに塗装もされてる。さらに裏側を見たら胸部と腹部が外れたのか盛大に大穴が開いてる…。

 

B品もいい所のこの標本。というか、これ胸部と腹部の間が長すぎてバランスがおかしい。

やはり色々と納得できないので思い切って大工事!という事で再組み立てを実行。

まず胸部を外そうとしたらなんか黒い液体が…なんだこれインク?ガチガチに固められていたのを何とか取り外すとボンドで付けた後に瞬間接着剤を流し込んで取り付けていました。

 

ん?ちょっと待て!これ翅の跡は全部瞬着だ!翅の割れを直した跡じゃなくて胸部を接着した時に翅にまで瞬着が流れてコートされちゃったんだ!

瞬着の固まった層の下には多分元の翅がある!という事でピンセットとデザインナイフでペリペリ剥がし。

しかしこの標本、赤っぽいと思ったらテネラル(成虫になったばかりで柔らかい)でペコペコして脆い…瞬着剥がすの失敗したら最悪翅ごと割れるか剥がれる…。

 

ちょっと賭けでしたが胸部に付いていた瞬着も含めて無事に除去完了。塗装はおそらく瞬着が固まって白濁したりテカテカしたのを誤魔化すために赤マジックで上から塗ったみたいですね。酷い修理…。

 

塗装跡を清掃した後に合体!元々の胸の隙間はこんな感じですね。展脚板が汚いのはご勘弁を。

 

しかし、今度は展脚し直して気が付いたのは右脚が奇形でちょっと短い…こればかりはどうしようも無いので上から見た時に違和感が無いように調整。

 

そして完成。これで修理跡が消えた本来の姿になりました。疲れた…。

 

色々と欠点の多い標本ですがパキソマの中でもこのPachysoma rodrigueziは貴重ですし、完全なA品ならオークションで10万近くまで値が付いたのを見た事もありますので、このお値段でここまで直せたのなら上出来でしょう。

今更ではありますが、修理内容をちゃんと分かるようにしててくれればここまで悩んだりしなかったのに。値切ったりなんてしないので標本を販売する方も詳細はちゃんと書いておいてほしいです。

 

修理が終わって改めて見てみると超絶にカッコ良い昆虫です。

 

同じ糞虫であるスカラベも結構特異な形をしていますが、近縁種のパキソマはさらに造詣が極まって完全にヒョウタン型に胸の間が窄まって凄いです。

スカラベは糞を求めて頻繁に飛び回りますが、パキソマは飛ぶための後翅が退化してしまって飛べなくなっています。おそらく飛ぶための筋肉が消失しているのもこの体形の理由なのでしょう。

さらにナミブの砂漠を走り回るためか砂に沈みにくいように生えた大量の脚の毛も素敵。新成虫なので毛の抜けも無く各部のトゲトゲの摩耗も無し。あれっ逆にテネラルだから状態が良いともいえるの?

 

ナミビアのパキソマの仲間

 

ナミビアのキリアツメの仲間

 

現存で誕生したのが最古と言われるナミビアのナミブ砂漠(約8,000万年前)

 

”何もない”という名前の意味とは裏腹にこんな素晴らしい昆虫がいるのですから何もないなんてとんでもないですね。

同地に生息するパキソマの仲間や、たまに自然番組なんかで紹介される逆立ちして霧で付いた水滴を飲むキリアツメの仲間など、特異な昆虫がいるので好きな方なら憧れの地でもありますね。

比較的治安も良いらしくツアーもありますので国内でも結構行っている人も多いみたいです。

 

余談になりますがちょっと前に話題になっていたナミブのライブカメラが面白かったので、お暇な人は一見してみてください。

 

こういう所でオリックスでも眺めながらカメラメンテや水飲み場を掃除する仕事で生活したり、昆虫採取するのも悪くないかもしれませんね。

 

私も砂漠の昆虫が好きなのでパキソマやキリアツメを何種類か入手してみましたが、これでようやく目玉となるような大型種を標本箱に入れる事が出来ました。

 

ついでに一緒に買ったカブトエンマコガネの仲間の追記。

フォローしているK庵さんのコメントでちょっと調べてみたのですが、Proagoderus rangiferという名で売られていたのですが、よく似た種でProagoderus ramosicornisというのもいるのでこれどっちなんだろう?ramosicornisは緑でrangiferは赤い色だと思っていたのですが、どうも緑色型もいるようで、うむむ。

 

丸山氏の本や拡大画像で細部を見比べてみるとrangiferの方は胸部が点刻で結構ザラザラ。ramosicornisは比較的ツルツル。

で、今回の標本は…。

 

ツルツル。

 

他の細部も見比べてみたのですが、ramosicornisだと思います。たぶん。rangiferの方が珍しいらしく角の伸びたこの大きさならかなりお得だったのですが、どちらも持っていませんでしたしこの値段ならOKです。

小さい糞虫ですがトナカイツノとかシカツノエンマコガネとかの和名の通り鹿の角のように伸びた二本の角がカッコ良い。

 

立続けに昆虫関係の記事を書きましたが、実はもう一つ書きたい…。申し訳ないのですがコインの記事はもう少しお休みします。

 

ではこんな所で。

 

今日は浜松町へ行ってきました。

コインの話?いえいえ、今回はAW社がある方とは反対側へ行きまして、毎年3月頃に行われますインセクトフェスティバルという昆虫標本の即売会に参加しておりました。

以前に大宮でやってる頃は行っていたのですが、浜松町に変わってからは初めてです。

 

行ってきまーす。

 

ただいまー。

予算使い過ぎました…。明日から生活どうすればいいんだ!

あまり昆虫に詳しくない方にはマニアック過ぎるラインナップですね。

 

でもまあ前から欲しかったカブトハナムグリや

 

モフモフの状態が良いアフリカのケブカフトタマムシを買えたからいいや。

しばらくは水と塩で生活します。

 

ちょっと糞虫も追加で入手してみましたが、カブトエンマコガネはお買い得だったかも。

しかし、同じお店で買ったナミビアの巨大パキソマは上翅の浸みが油でも浮いてるのかと思ったら、なんと翅の亀裂を塗装で誤魔化していたのでした!おのれ…妙に安いと思ったら。

 

でも良いのです。ぱっと見はそれ程気にならないし、コレクターはこうして騙されて成長していく物なのです。(えっ、私はもうこれ以上成長する事ありませんので退化していくだけですよ。)

 

とはいえ、最近人気の糞虫やブローチハムシのような種類も古い仕入れのままお値段据え置きで売っていたり、お得な物も各ブースの標本箱を丹念に見て行けばまだまだあるなといった印象ではありました。

しかし、予算も使い果たしたので早々と帰宅。うーん、ライオンコガネやあっちのブースのあれやこれやとか買っておけばよかったかな…また今度ですね。(そういうのは大抵次回には売れているんですけどね。)

 

二箱あるその他ごちゃまぜ標本箱もだいぶ手狭になってきましたので整理しないともう入らないです。思い切って大箱に引っ越ししようかしら。

 

ではこんな所で。

 

バクトリアのコインはエウクラティデスだけでいいかもと言ったな?

あれは嘘だ。

 

バクトリア王国 紀元前180-165年 

アンティマコス1世

テトラドラクマ銀貨

Ch AU Strike5/5 Surface3/5

 

また買っちゃったバクトリア!

という事で、この方もエウクラティデスに次いで代表的ではないかと思うアンティマコスのテトラドラクマ銀貨をちょっと前に入手しておりました。

 

バクトリアのコインの肖像は色々と特徴的な被り物を付けている方が多いのですが、アンティマコスはマケドニアで庶民も日常的に被る民族帽的な帽子であるカウシア帽を被った姿で打ち出されています。表情も穏やかで雰囲気は庶民的な親しみやすさといった感じですかね。

 

肖像の打ち出しは極印がちょっと浅く作られているようですが、周囲のビーズ打刻も綺麗に入っていて、当時の職人もコインを打ち出すのならこうであれと思っていたような出来だと思います。

(ちなみに諸説あるようですが、NGCラベル記載の紀元前180-165年だとアンティマコス2世の時代とも被ってしまってると思いますが良く分かりません。)

 

裏面はポセイドン神。

海を司る神様の印象ですが、大河や地震、馬といった内陸部のバクトリアでも必ずしも無関係ではない神様だそうです。

 

碑文は"ΒΑΣΙΛΕΩΣ ΘΕΟΥ / ΑΝΤΙΜΑΧΟΥ"(神アンティマコス王)庶民的な表面とは打って変わって神なんて称号を彫っています。

(ΘΕΟΥ:テウー=神)と初期のギリシア世界から考えると人間が神を名乗るなどとんでもなく大胆な事なのですが、これも時代が進んだヘレニズムらしいコインと言えるかもしれませんね。

 

とはいえ、この方も多くのバクトリアの諸王達と同じようにコイン以外の記録が殆ど残されておらず、どのように王位に就いたかも不明だそうです。

なにかしらこの称号を名乗る事になった出来事があったのかもしれませんが、今の所は消滅したギリシア人の王国を想像するしかありませんね。(一応前のエウクラティデスの記事では前王であるデメトリオス1世の血縁という事で書きました。)

 

しかし、この方がバクトリアの王位に就いていた時は前に紹介したエウクラティデスが蜂起してバクトリア王位を簒奪した頃と重なるようで、インド側の領土を固持していたアンティマコスとその後を継いだアンティマコス2世はエウクラティデスの攻勢の矢面に立たされてしまい、最終的にその戦争中か死後に領土を奪われてしまったようです。

 

おそらくアンティマコスの死の前後はこんな感じだったかと。例によって参考程度です。

 

私のアンティマコスのコインはプシュカラヴァティのミントなのですが、以前紹介したエウクラティデスのコインもhirame-hkさんのお陰で同じプシュカラヴァティミントという事が分りましたので、おそらく戦いに負けて奪われてしまったようです。

あまり記録も無く戦いに負けてしまった可哀そうな方ですが、バクトリアとインドグリークを統一したエウクラティデスの死後にグレコバクトリア王国は早々と崩壊してしまい、その後、残されていたインドグリークがメナンドロスの元で最盛期と呼べる発展を遂げるのですから未来の事は分からない物です。

 

あと、このプシュカラヴァティミントはどうも兄弟銭がまとめて沢山見つかったのか、以前にもAWで同じミントが出ていたようにネットの情報だけでも結構見掛けます。カウシア帽の左辺りの極印の亀裂跡がほぼすべての同一コインに見られるので同じ極印から打ち出されたのが分るのです。

 

 

古代コインの兄弟銭は珍しいと思いますが、結構な確率で現存していますので詳しく調べた訳では無いものの、おそらく製造されたままか、まとめて支払いにでもされたのか、ある程度まとまった数で見つかったのではないかなと勝手に考えているのです。

 

という事で、マケドニアのポセイドンは手放してしまいましたが、バクトリアのポセイドンが代わりに来たのでこれも入れ替え?という事にしましょうかね。

 

ではこんな所で。