岐阜のけん坊です
「魚籠(びく)」と聞いて、まっ先に思い浮かぶのが「郡上魚籠(ぐじょうびく)」
そんな人が日本全国には幾人もいることでしょう。
「魚籠」というのは本来、魚を獲った後に魚を入れて歩くための道具です。
が、単に魚を入れるだけでは無いんです
昔からある魚籠は竹を素材として作っており、竹を編み込むことで新鮮な空気を魚籠の内部に通し、かつ魚籠自体の強度を保つことにも役立ててあります
それによって魚を傷めず新鮮な状態で持ち帰ることが出来るそうです。
その中でも「郡上魚籠」というのは素晴らしい一品として日本全国に知れ渡っているのです
↑郡上魚籠
この魚籠の特徴は、底がせまく口元になるに従って広がる三角形のような形にあります。この形によって魚籠に放り込んだ魚が自然に腹を下にして並び魚が痛まないのだそうです。
郡上の漁具はまさに郡上地域のつり人たちが「郡上釣り」という独自の技術を創造し、文化にまで高めた歴史の証拠といえます
夢のようですが、そんな「郡上魚籠」を今もなお現役でつくっておられる方に本日お会いできました。
郡上・白鳥町大島にお住まいの郷戸進(ごうどすすむ)さんです。
郡上の釣具店で扱っている実用の魚籠のほとんどは、郷戸さんの作品です。
郷戸さんの工房には、作製途中の魚籠がいくつも並んでおりました。
そのひとつの魚籠の内側を見せてもらいました。
するとそこには意外な配慮
があったんです。
↑どんな配慮かわかるかな?
材には真竹を用います。
郷戸さんが自作された専用のナタはこれまでに見たこともないような形をしており、そして真竹はみるみる紙のように薄くなっていきます。
↑郷戸さん自作の道具
↑使用できない竹の片
竹ひご一本一本を薄く裂いていくだけでもかなりの技術と神経を使うと思われるのですが、ここからが郷戸さんの技です。
その竹ひご一本一本の角をとり除き、丸みをつけていくのです
郷戸さんに尋ねると、
「中に入れた魚が痛まんほうがええやろ」と一言
郷戸さんはサラッと一言で片付けてしまいますが、それを完成させるために竹ひご一本一本を丹念に丸くする作業風景なんて、想像するだけでその労力の大きさに僕などは腰がひけてしまいます。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。
使い手のことを考えて、より良いものを創りあげるという「本物の職人魂」をこの工房で感じさせられるばかりでした・・・
会話からも優しさがにじみでてくるそんな郷戸さんがつくられる魚籠からは、伝統工芸品という力強さだけでなく、とても優しい女性的なものも感じられました。だから、郡上や日本全国の男衆が川で使用する以外にも、女性の宿る家庭内において、花の一輪挿しとしての利用もなされています。
工房には、郷戸さんと向かい合うように座る凛々しい地元少年の姿もありました。
15歳のますだ君は昨年5月頃からこの工房で魚籠づくりの技を磨いています!
ますだ君の手元や製作途中の魚籠を見せていただきました。
ますだ君もとても器用な手先です。
いつの日か、ますだ君のつくった郡上魚籠を郡上の釣具店で見られる日がやってくるといいなo(^-^)o
ちなみに・・・
この魚籠の色は真新しい竹の色ですが、
中に入れるアマゴのヌメリでそのうち深い色に変わっていきます。
ということは・・・
魚籠の色を見れば、持ち主の魚釣りの腕がわかってしまうんです
奥美濃・郡上魚籠の伝統技法を有する郷戸進さん。
職人と呼ばれる郷戸さんの工房には今日も地元のお母さんや地元の少年が訪れており、郷戸さんを囲んでいます
その温かい工房内にはたくさんの笑い声がありました。
そんな優しい郷戸さんの人柄が「郡上魚籠」を通して私たちの手元に伝わるのだと思います。
郷戸さんの居る白鳥町大島にまた行きたくなりました。
けん坊
※だいたい11月~5月が魚籠づくりでお忙しくなる期間だそうです