また10日の夜「とおかんや」がやってきた。
今日は早朝にお師匠さんによる「駒つなぎの桜」奉納舞が執り行われた。
阿智村の銘木、樹齢400年の桜の木の下で、毎年ご家族で舞を奉納されてきた活動がだんだんと人に知られることになり、今では例年、桜とその下の田んぼの水鏡に映る鶏舞を写真に収めようとシャッターを切る人々が集まる。
あくまでもご家族での奉納なので私はお囃子のお手伝いなどはせず遠くから見守った。これを観るといよいよ外仕事を本格的に始める季節が来たことを実感する。
今は外仕事の中では薪の仕事が好きだ。薪はただ割ればよいというものではなく、そのあと積んでようやくひと段落する。
その積み方も、崩れないように見た目も美しく積むにはいろいろとコツがある。積んでからすぐにそこから取って燃やすのか、それとも1年寝かしておくのかによっても積み方は変わる。薪を取りに来た人がけがをしないように、どこかを取ったらどこかが崩れたりしないように積むのも大事だ。
その時手に取った薪の形状、木の種類、乾いているかどうか、重いかどうかなどを瞬時に把握して、適材適所な場所へ積んでいく。最近ようやく少しコツがつかめたような気がする。
お師匠さんは物まねがうまい。物まねと言っても芸能人のまねではなく、その辺によくいる普通の人のまねだ。「そうそう!そういう人いますよね。」と膝を叩きたくなるような、人間観察から掴んだと思われる、個性のデフォルメが面白い。
例えば、ちょっと気取ったOL、農家のKさん、デート中に気まずい雰囲気になるカップルのやり取りなど、今までに目撃したレパートリーはかなり多い。
「なんでそんなに物まねが上手いのですか。」と尋ねたら
「踊りだって言ってみれば物まねだからね。」
とおっしゃっていた。
本当にそうだなと実感するのが、お師匠さんによる翁の舞だ。
昨日、ユーラシアさんという、ギター、ベース、尺八、大正琴のバンドのみなさんとのコラボによるコンサートがあり、最後の演目でお師匠さんが翁に扮して舞った。
散る桜をイメージしてリーダー桑原さんが作曲した『ひとひらの』という曲に合わせ、翁が鍬を担いで登場し、農耕のしぐさを取り入れた舞がある。途中若者へと面が変わるところで番楽のお囃子が入ってガラッと雰囲気が変わり、新しい命の横溢が表現されている。
この時のお師匠さんはまさに翁そのもの。本物の翁になられるまでずっと舞台を傍で観ていたい。