とおかんや

和力主宰、加藤木 朗の許で学ぶ地力塾生が、十日夜に書く日記。


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4日の「下栗ふれあい祭り」にお師匠さんが出演され、私もお伴をしてきた。下栗の里は長野県飯田市の中心部から車で一時間半以上かかる、秘境と言ってよい山村である。標高800m以上の急峻な山肌に家屋が佇んでおり斜面を利用した段々畑が広がる。田んぼは作れないので、蕎麦や麦、イモ、豆などを栽培しているそうだ。ガードレールの一歩外の勾配はほとんど絶壁に等しいものに見える。

お祭り会場は県内外からの車がいっぱいで、大勢の人で賑わっていた。お師匠さんのだんじり囃子の途中から雨が降り始めてしまったが、沢山の笑顔、歓声、そしてお花を頂戴し、無事に終わった。狩猟でお世話になっている皆さんの屋台で下栗イモポタージュや鹿肉コロッケをいただき、祭りの後の慰労会の焼肉にも参加させてもらい、地元の皆さんと親睦を深めることができた。霜月祭りを大切に受け継いできた皆さんの熱い想いも伺うことができた。

さて、この記事を書いているのは実は10日ではなく5日で、祭りは昨日のことである。薪ストーブの上で収穫したばかりの里いもを肉や白菜と共にぐつぐつ煮ながらパソコンに向かっている。今日は休みだったが天気も良く野良仕事をしたくなり、サツマイモと里芋の収穫、土手の草刈りなどをした。里芋を満載した一輪車を押して坂を運び、刈った土手の草を熊手でかきあげて来る作業はしんどかったが、「下栗の畑に比べたら何のこれしき!」と思ってがんばった。これも私の修行の一環なのである。

お師匠さんがおっしゃるには、田んぼや畑や山で働いていると自然に芸能の太鼓や踊りに必要な体が養われるという。だから日頃から特別走ったり筋トレしたりはなさらないし、私にもするようにおっしゃらない。その代わり、農繁期になると日頃の運動量はかなりのものがある。素晴らしい鶏舞や鬼剣舞も、足腰の粘りと安定感がベースにあってこそ。もう、どっしりぴたっと地面に張り付いている感じなのである。それでいて軽やかに動く。私も農作業や狩猟を通じてそのような身体の感覚を養い、少しでもお師匠さんの踊りに近づきたい。

 煮えた里芋を食べては書き、食べては書きしていたらいつの間にか何度もお代わりを重ねていた。もうここらで箸をおくべきなのだが、昆布とカツオ、豚肉の出汁をたっぷり吸った里芋が手招きしている。もう一杯いくか、踊れるカラダのためによそうか・・・究極の選択を迫られ、またも絶壁に立っている気分だ。

 

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普段は自分たちの足音しかしない静かな林で、その日は何かがガサッと落ち葉を踏む音がした。お師匠さんと私の仕掛けた罠に、ついに獲物がかかったのである。

白いハート型のおしりの毛、まっすぐな角を持った雄の鹿が、ワイヤーを引きちぎって逃れようと必死にもがいていた。

「かかったね。」

口調はあくまで冷静だが興奮を隠しきれない光を目にたたえて、お師匠さんがおっしゃる。

すぐに獲物の息の根をとめ血抜きをしなくてはならない。頭を狙った棍棒の一撃に声も立てず鹿はふらふらとうずくまってしまう。ナイフで刺した頸動脈から血がほとばしり、みるみるうちに土に吸い込まれていった。大きな目がだんだんと光を失っていく。痛々しくちぎれかかっていた前脚は、ワイヤーが木の幹にからまったため外すことができず結局切り落とした。その時、この立派な生き物を自分が食べるために殺したのだという想いが肺腑をついた。

 帰って早速解体にとりかかる。準備のよいお師匠さんはそのための一角を庭に設けてあったのである。まずは腹をスッと縦に切り内臓を出す。まだ熱を持っている肉から、白い湯気がふぁっと立ち上る。

 果たしてどこから「美味しそう」と感じるか興味があった。生きている間は美味しそうに見えなかったし、とどめをさしてからもまだ鹿は「鹿」で、「肉」に見えなかった。しかし今目の前のまな板の上でスライスされつつある鹿は、まさしく美味しそうな「肉」に見えた。

この時私の内面で起こった感情をどう説明すればよいだろうか。たくましく生きてきた命へ畏敬の念を抱きつつも、ついに獲物を得たという原始的な喜びで徐々に胸は満たされていった。毎日毎日蚊に食われながら山道を往復してきたことが、ついに報われたのだった。

さて、突然だが私のお師匠さんは大変気前のよい方で、日頃から何でも分かち合って下さる。この日も一頭から2本しかとれない背ロースを、惜しげもなく「これはくみちゃんの分。」と切り分けてくださった。本当に美味しい、いや、うまい肉だった。

 気前の良さが高じて「原稿の〆切りに追われる苦しみ」も分かち合いたいとお考えになり、かくして毎月10日の夜(十日夜・とおかんや)に私は煩悶しつつこの日記を書くこととなった。しかし私の締め切りが10日なのに対し、お師匠さんのそれは20日頃。なので今まで通りお師匠さんの締め切り日には、私はスッキリした笑顔で申し上げるだろう。「がんばってくださいませ!」と。

 

 

 

 

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このブログのこと、自己紹介

 

このブログを訪問された方へ

 

初めまして。私は2016年の春から加藤木 朗さんの許で芸能の修行をしております、平澤久美子と申します。2017年の夏にお師匠さんの稽古場に併設された研修所(地力塾)に引っ越し、現在は住み込みで勉強中です。

ここ阿智村は自然豊かな場所ですが、逆にいえば自然の厳しさを感じる場所でもあります。数か月ごとはっきりとその様相を変える四季があり、生身のにんげんが生きていくためには食糧を生み出すこと、冬場に暖をとるための薪をこしらえることなど、様々なしごとを時期を逃さずこなしていかなくてはなりません。

お金を出せばそれで済ませることもできる日々の営みを、あえて大事に自らの手と頭で行っていくこと、必要なものはなるべく自らの手で生み出すこと、そうした暮らしの中で芸能に親しみ、ときにぶつかりながら身につけていくこと。それがお師匠さんが日々体現して示して下さる生き方であり、私が辿っていきたい道です。

このブログでは、私が修行生活を通じて学んだこと、体験したことの一場面を、毎月10日の夜(十日夜)に日記のかたちでざっくばらんに書き留めていくつもりです。時には野山で、また時には舞台やお祭りの現場であらゆるしごとを一緒にさせていただきお師匠さんの教えと生き方に触れている者として、この体験を何らかの形で残していかなくては、と感じています。拙い文章ではありますが、「ふむふむ、こいつはこんなことをしてるのか。」と、気楽に覗いていただければ幸いです。

 

2017年10月10日  平澤久美子

 

※十日夜(とおかんや)というのは、ここ信州を含む広範にわたる地域で伝統的に10月10日に行われている行事の名です。このことばに愛着があり、ブログのタイトルにしてみました。

 

 

 

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