この頃、急にサーッと黒い雲が流れてきて雨がほんの一時降って止む、という日が多い。そのあとで風が昼間の熱を全て連れ去っていく。

張り切って植えた西瓜の実はピンポン玉くらいの大きさにしかならなかったし、夏がもう少し続いて欲しかったが、自然界はすでに秋への引っ越し完了らしい。

 

今回はブログをさぼっていたここ数か月のご報告をしようと思う。

梅雨のころは7月の和来座公演に向けての稽古に加えて、初めて披露する鹿踊の装束の作製で連日深夜まで作業が続いていた。その合間にお師匠さんの仕事で富山へ。その足で帰りに大阪に寄り、お師匠さんにだんじり囃子を教えてくださったという「かずら会」の皆さんの生のお囃子を聴いてきた。

そして和来座終了後は岡山へ2度行ったり来たり。

 

「こうだったらいいのにな」とひらめいたら、それを即実行に移すのがお師匠さん。

備前焼をやっている幼馴染のお宅が五右衛門風呂で、ご高齢のお母さんが入浴に難儀しているとわかり、新しい風呂を設置することを思いついてしまった。そうなったら最後、実現するまで台本が進まなくなってしまうそう。

近所の大工さんからいただいたボイラー、風呂桶、ブロックに、セメント、木材、工具類、それに我々の布団(布団袋というものがあることを初めて知った)まで積み込んだハイエースはずっしり沈み込んで、いつもよりゆっくり西へひた走ること片道430キロ。

桃太郎じゃないけど、お師匠さんは弟子2人をお供にして旅に出た。きび団子の代わりにサービスエリアでポテチやソフトクリームを買い与えながら。

そのお宅は百年以上昔から建っている立派な茅葺屋根の家で、背後に低い山を背負い、田んぼや点在する民家を見下ろす高台に建つ。天井が見上げるほど高く、木と紙の家は呼吸していて、真夏も扇風機だけで十分過ごせた。

工事は風呂となる場所の土壁をぶち抜き、土間を掘って排水管のありかを探るところから始まり、サッシの設置、壁と床づくり、タイル貼り…鋸で木を切ったり、コンクリートを練ったり、朝から本当に寝るまで、ほぼ1度もスマホを手にしない生活。下手をすると時計すら見ずに数日間過ごす生活を送った。

 

この一行が工事を終え、岡山から戻りお盆休みも終わり、一気に10月の和力公演に向けて全力を傾けている。チケット販売や事務的な諸々の仕事に加え、またしても稽古と衣装づくりの日々が始まっている。お供はポテチを燃料に頑張っています。

 

 

居間でブログを書き始めた今、稽古場からしばらくトントンという金槌を使う音がして、その後とても静かになった。気分転換に隣の様子を見に行ってみたら、お師匠さんが折れた竹割鉈を短く切って作ったナイフの、今度は鞘を自分で革細工で作っていらっしゃるのだった。

このブログには繰り返し書いている通り、なんでも自分でやってしまう人なのだ。

最近、近所の大工さんから「焚き物にして」と廃材を沢山いただき、まだまだ使えるものが多かったので、稽古場に棚を作ったり、三味線スタンド、本棚、さらに下駄箱まで作った。こういう「作り物ハイ」とでもいうべき状態のお師匠さんは、夜も寝ないで設計図に思いを巡らせ、翌日は何をどういう順番で進めようと計画しているそうだ。

今日はお休みの日なのでそれぞれ自由に過ごす。真央ちゃんはづくりが好きなのでよく自分でいろいろ作っていて、今日は鉈の鞘を作っていた。

私はというと、立体的なものを頭の中で想像するのは苦手なタイプで、正直作り物は休みの日にまでやりたいことではない。もっぱら稽古をしたり、疲れたらゴロゴロしておやつを食べている。

スマホで最近撮った写真を何気なく見返すと、須磨の海岸に立つ5本の椰子の木の下で海をバックに撮った1枚が目を引く。(和力のFacebookにもアップしたもの)

GWの最後の2日間、神戸の「うたごえ西日本郷土芸能講習会」でお師匠さんが太鼓を指導されたのだが、早く現地に着き過ぎたので3人で海を見てきたのだ。

講習会はコロナで中止が続き今回が久しぶりの開催だったそうで、受講生の皆さんはとても熱心に取り組んでいらっしゃった。限られた時間の中でお師匠さんはいつものように、撥の握り方や振りかぶり一つとっても「なぜそうしたほうが良いのか」を分かりやすい言葉で説明していく。

そうするのには必ず理由がある。聞くとすごく納得できるのだけど、教えていただいたことを体で理解できるまでにはすごく時間がかかる。私も、まだ未消化の宝物のような言葉をいくつもため込んでいる人間の一人だ。

今日はそれでも、少しだけ秩父屋台囃子の玉入れの稽古が進んだ気がする。

左右の小さくて揃ったコロコロという音を出すためにひたすら転がしを稽古していると、理由はわからないがいつも必ずだんだん胸がムカムカしてきて車酔いに似た気分になったものだが、今日は初めてそうならずに打てた。

神戸の講習会のあとの交流会で、参加者みんなで歌いたい歌を選んで一緒に合唱する時間があって、マイクを向けられたお師匠さんは「エーデルワイス」を選んだ。鶏舞や鹿踊など芸能のうた以外の歌声を初めて聞いて、なんだか少年のころのお師匠さんを想像して、胸がじ~んとした。

今夜はブログの日ですが、13日に迫ったいいだ音楽鑑賞会の準備と稽古があまりにもギリギリなので書くのを延期します。

急遽、木村さんがゲスト出演してくださることになり、あんなことやこんあこと、音舞語りもありの豪華公演になります。

昨年7月の和来座公演をさらに発展させた一部と、今回独自の二部。

どうなるのかとてもワクワクしています。(*^^)v