中国「革命の聖地」、いまや人気観光地 | 特亜祭り

中国「革命の聖地」、いまや人気観光地

6月19日20時25分配信 産経新聞


中国「革命の聖地」、いまや人気観光地

井岡山の土産店の中で、各種サイズの毛沢東像が並べられ、一番の売れ筋だという

 ■名ばかり「共産主義思想の教育」 歴史展示物説明ずさん
 中国政府が推進する愛国主義教育キャンペーンの一環として、中国共産革命ゆかりの地を訪ねる「紅色旅遊」がここ数年、人気を博している。しかし、政府指定の「赤い観光地」は、いまや完全な観光スポットと化している。肝心の歴史展示物の説明はずさんで「共産主義思想の教育」など名ばかりというのが実態だ。革命発祥の地・江西省の今を報告する。(井岡山=矢板明夫)

 ≪歴史をかがみに?≫
 中国共産党が1930年代初めに樹立した中華ソビエト共和国臨時政府の“首都”だった瑞金では、敷地面積2万2000平方メートルの瑞金革命烈士記念館が人気観光スポットとなっている。
 同館には、革命に殉じた約1万7000人の烈士の名簿が納められ、うち代表的な100人余りの画像や遺物が展示されている。しかし、そこに書かれている説明には間違いが目立つ。例えば鐘天法烈士の説明文には「1947年清風店で日本軍との戦いで戦死」とあるが、47年、日中戦争はすでに終わっている。同じく日中戦争で戦死したという邱積成烈士の説明文では「第18集団軍政治部主任などを歴任」とあったが、事実とすれば当時のトウ小平(師団政治委員)の上司に当たる共産党の主要指導者のはず。しかし、この人物は歴史書に登場せず肩書を間違えているようだ。
 同館の女性スタッフにこれらの誤りを指摘したところ「私にはよくわからない」というだけだった。
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 ≪カネの聖地≫
 瑞金から約300キロ離れた井岡山は、20年代後半に毛沢東が作った最初の解放区で「革命の聖地」だ。ここ数年、観光業は急速に発展した。中国メディアによると、井岡山を訪れた観光客は昨年史上最高の約250万人を記録、今年はさらに増える勢いだ。
 井岡山周辺の土産店では、どこでも高さ数センチから1メートル以上のものまで各サイズの毛沢東像がそろう。また、観光客が一緒に写真を撮るため、ベニヤ板製の毛沢東パネルがあちこちに立っている。飲食店は毛沢東の好物料理「紅焼肉」を人気メニューにして、まさに毛沢東づくしだ。
 現地ガイドによると、多くの中国人は毛沢東を革命家ではなく神様として崇拝しているという。
 毛沢東が井岡山を下りてから約80年たったが、数万人といわれる住民は今はほぼ全員が観光業に従事。今年5月の連休には、史上最多の観光客が押し寄せ、ホテルは満員となり、現地中学校は、急遽(きゅうきょ)教室を客室に変えてひともうけしたとか。
 タクシー運転手の顔文明さん(34)は「子供のころ、『革命聖地』出身という誇りを持っていたが、今は金もうけばかりの生活になって、その誇りはどこかへ行ってしまった」と笑った。

【用語解説】紅色旅遊
 中国共産党の成立(1921)から新中国建国(1949)までの中国の共産革命と関連する旧跡、戦場跡などを訪ねる観光旅行のこと。「紅色」は共産主義思想を身につけるという意味も。中国政府はこれらの場所を愛国主義教育拠点に指定し整備を進めてきた。2004年ごろから、観光キャンペーンを展開。指定された「赤い観光地」は全国で計100カ所以上あるが、瑞金、井岡山のほか延安が代表的なところ。