老父の長い一日②。 | がん闘病~妹とあたし、おまけに老父も~

がん闘病~妹とあたし、おまけに老父も~

なんでか乳がんになってしまった私のつぶやき。
公開することでいつかどこかで誰かの参考になればと思って。

タクシーを降り家に入るなり「気合いダー!」を連呼する老父、に、驚く熟年姉妹。


「ど、ど、どしたん???」「いや、ガンバらなアカンと思うてな。ガンバるゾー。」

うなだれから上向いてくれるのは嬉しいが…言葉と握りこぶしと裏腹に歩くことさえままならず。

「ちょおっと、助けてくれや。」


ベッドに横たわると「せっかく三人揃うたし、寿司でもとらんか?寿司食べたい!」ここんとこ、

お酢系のものしか食べられなくなっていて、寿司飯ばかり食べている。

老父のベッドを囲み、三人で出前の寿司を食べる。

「あーん、」と口に運んでやりながらなみだがあふれてくる私、堪える妹。

「写真、写真撮ろ!」入院してから折に触れては自分の写真を撮ってくれとせがむ老父だが

「ふたり、ワシが撮るから、並べぇ。」嬉しそうにシャッターを押すチカラが足らず、何度めかに

やっと撮れた。

「今度は三人、三人で撮れんか?」セルフタイマーは付いているが「顔寄せて撮ろう!」と

妹が手を伸ばしてパチリ。


「まだまだガンバるゾー!おー!…ちょっと、寝るか、な。」疲れも限界にきていたようで。

いつものように、すぐに爆睡状態…でも、しばらくすると、急に何かをつかんで離さないような、

何かをたぐりよせているような、動作をする老父。薄眼が開いた状態。

「何か夢でもみてるんかな?」


そして「すぐには要らない、かもしれんが、念のために、」と妹に紙おむつを買いに行かせ、

洗いものをしてから老父の枕元で私が物音をたてた瞬間…痙攣が始まった。

あたふたしながら時間外となった病院へ電話しても救急外来が立て込んで当番医も看護師も

電話に出てくれず、他の機関の番号を教えられ、妹が帰り、そうこうしているうちに、老父は目を

見開き、まばたきしなくなった。


救急車到着。「呼吸はあるが…」と言われながら搬送。通院中の病院も含め近隣病院は

混みあっているだの、専門医がいないだの、どこも受け入れてくれず。

それでも救急隊員さんが直接交渉してくれてようやく主治医のいる病院へ。

主治医もまもなく駆けつけてくれ「数時間前に会ったばかりなのに…」と驚きを隠せない様子。

「脳梗塞の症状かも…頭のCTと血液検査してみます。」…近くに住む叔母に連絡をいれた…