2段ロケットモータ燃焼試験前後

 

イプシロンSロケット2段モータのケースと推進薬


点火後20秒から予測圧力より上昇=極地異常燃焼が継続
異常燃焼により温度上昇=温度上昇により想定外の燃焼の勃発か?
連鎖反応で急激な温度上昇によりケース損傷と同時に推力上昇、圧力は損傷個所より逃げる。
ケース損傷により空気中の酸素が供給され一気に爆発した。のではないか???

 

CFRP製ケース
強化型(M-35 ケース:Φ2.5x2.3)からイプシロンS(E-21 ケース:Φ2.5x2.6)は、長さを300mm伸ばしたもの。

断熱材は、IHIオリジナル 1層で断熱・気密・水密の機能を持つ単層構造。
それ以前は、断熱・気密・水密を1層ずつ重ねた三層構造(水密は耐圧試験で水を使う為)

 

 
※E-21の圧力・推力曲線は爆発までは録れたはずですが公開してくれません。

推進薬
宇宙開発用の固体推進薬としては通常、合成ゴム系バインダ(10~16%)、過塩素酸アンモニ ウム(65~75%)、アルミニウム粉末(10~20%)の三成分からなるコンポジ ット推進薬が使われる。

 

M-35の推進薬は、Al粉末をSRB-Aと共通品を使用
燃焼速度は、AP粒子の大きさの割合で調整していたものを燃焼触媒の酸化鉄で調整
推進薬形状は、内孔貫通型で光芒は無し。
配合は、(HTPB/Al/AP = 12/20/68 wt.%)に0.1%酸化鉄を加えたものか?
 

E-21の推進薬はSRB-3と共通
※SRB-3はSRB-A(HTPB/Al/AP = 14/18/68 wt.%+Fe203 0.1%)のバインダを国産に変えた物。
 なお個々の材料はコスト低減のため製法等を変えている可能性有り。

 

燃料兼燃結剤(バインダ)HTPB末端水酸基ポリブタジエン

バインダは、

 ①推進薬内部に気泡を発生させない流動性

 ②酸化剤や添加剤が分散して強固に結合する密着性、

 ③発射時の振動に耐える強度と弾性を有する柔軟性
        
がロケットの性能を大きく左右する。

 

開発したバインダは、ARCO社 R-45M特性とほぼ同じとのこと。

ほぼ同じとは“特性が違う”と言うことです。小さな印象操作ですね。


参考:IHIが日産の宇宙航空事業部時代のバインダ
SRB以外は国産のバインダを使っていたはずです。

 

【酸化剤AP(NH4ClO4)過塩素酸アンモニウム】

過塩素酸アンモニウム(AP)は,燃焼に必要な酸素を供給し,有効酸素量が多く,燃焼性がよい,化学安定性が高く,バインダとの相互作用がない,しかも低価格である。

APは、推進薬への固体成分の充填効率を高めるために,一般に3種類のAP(平均粒径:400μm,200μm,50μm) を組み合わせて用いられる。そしてAPの粒子径が減少または比表面積が増加するにしたがい,燃焼速度は速くなる。 特に粒子径20μm以下のAPを用いた場合,燃焼速度は急激に増加する。

 

過塩素酸アンモニウム NH4ClO4 の特性

u 強い衝撃又は分解温度以上の急激な加熱を受けると爆発する。

u 約130℃で分解を始めて酸素を放出し300℃で急激に分解を始め400℃で発火する。分解時、多量の塩素ガスを発生する。

u 水に溶けるが潮解性はない

2NH4ClO4 Cl2 + N2 + 2O2 + 4H2O

4NH4ClO4 4HCl + 2N2 + 5O2 + 6H2O
塩素及び塩化水素(液体では塩酸)が発生する。

 

【助燃剤Alアルミニウム粉末】

アルミニウム粒子は着火性が良く、発熱量が大きく、高密度、低コストで有る為金属燃料として利用される。アルミニウム粒子の組成比は10~20%であり、組成比を15%としたとき比推力を10%向上し燃焼の安定化も得られる。

Al 粒子は、平均粒径5~50μm球状微粉末が使用される。

Al 粒子は、固体ロケットモータ内での燃焼過程で集塊が起こり一般に粒径は200μm程度まで成長する。集塊したAl粒子は推進性能を低下させ、完全燃焼に至らない集塊はスラグとなり残留しノズルやモータケース内の断熱材などに想定以上の熱負荷を与え問題を起こす。

 

アルミ Al の特性

粉末の場合400℃で発火する。融点は660℃、沸点は2327℃

微粉化すると、空気中で発火する。 粉末や顆粒状で空気と混合すると、粉塵爆発の危険性がある。

 

注意点:アルミニウム粉末と酸化鉄〈Ⅲ〉でテルミット反応が起こる。
アルミニウム(Al)と酸化鉄(Fe2O3)で酸化還元反応が起こり、強い光と大量の熱が発生する。

 

https://youtu.be/2iIiWL8GDn0

 

 

【燃焼触媒Fe2O3酸化第二鉄】

燃焼速度変更方法として酸化触媒が知られている。

酸化触媒はAPの分解過程(NH4ClO4→NH3+HClO4)に作用して分解速度を変える触媒として,その代表的なものに高燃焼速度用としてFe2O3などの鉄化合物や亜クロム酸銅,低燃焼速度用としてLiFなどがある。

酸化鉄(Fe2O3)は、APの分解過程で分解温度を下げる効果が大きく活性化エネルギを下げる効果も有している。

 

酸化第二鉄(Fe2O3)の粒径:0.2μm

 

注意点:アルミニウム粉末と酸化鉄〈Ⅲ〉でテルミット反応が起こる。
アルミニウム(Al)と酸化鉄(Fe2O3)で酸化還元反応が起こり、強い光と大量の熱が発生する。

 

 

【邪推】

モータケースを300mm伸ばしたことにより、燃焼圧力変動による振動と音波による燃焼面への影響が変わった為燃焼速度がほんの少し増加した。燃焼速度が速く成った為その分燃焼が進み予想より圧力が上がり温度も上昇した。その影響で燃焼面近傍のAPとAlに(或いはAl/Fe2O3と熱によるテルミット反応)異常燃焼を誘発し急激な温度変化でAPが燃焼面全体で極所爆発→誘爆、初期の爆圧でAPやALの粉末が周辺に飛び散り盛大な粉塵爆発起こした。

3段が成功しているのでよっぽどのポカが無い限りミスは起こらないと思います。

唯一の違いは大きさだけなので音波と圧力振動の共振で燃焼が影響を受け異常燃焼を起こしたと考えました。

音波は炎の向きを変える。燃焼圧力の変動は燃焼面をより激しく燃焼させる。
尚;圧力変動は、両端が高くなる様です。

 

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以上です。

 

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