今回は、「ミラーリング」について、お伝えします。
ブログ『こころを、つくる ① メンタライゼーション』も、
参考になさって下さい。
「メンタライゼーション」について、少し復習すると…。
「メンタライゼーション」は、
人が行動をとる背景には、何かしらの理由や意味があるだろう、
それって、どんな理由や意味があったんだろう…、
と考えてみたり、思いを巡らせてみたり、
気にかけておくこと、と言えるかもしれません。(※1)
前回と別の言い方をすると、「メンタライゼーション」は、
「心で心を思うこと(holding mind in mind)」。(※2)
自分の心で、相手の心を、思ったり。
自分の心で、自分の心を、思ったりすること。
「メンタライゼーション」に、決めつけや、絶対こう、
ということはありません。
…こうかな、ああかな…、と思いを巡らしながら
心を理解しようとすること、と言えるもしれません。
♯「ミラーリング」の仕組み
メンタライゼーション、メンタライズする能力を育てる背景に、
「ミラーリング(mirroring)」という、
こころを育てる仕組みがあります。
この言葉は、いろいろな業界で用いられているようです。
ここで用いる「ミラーリング」は、養育者と子どもとの関係や、
心の発達において、重要とされる考え方です。
例えば、赤ちゃんが、ぐずって、手足をバタバタさせ、
ワーンと泣き始めたとします。
それを見た養育者であるお母さんは、
「あらあら、泣いちゃったの。
どうしたんだろうね。ヨシヨシ…。」
お母さんは、赤ちゃんに声をかけるとも、
自分の心にきいてみるとも、とれるような声を発したとします。
お母さんは、赤ちゃんをさすりながら、
赤ちゃんが苦痛な状態に、<①共鳴>しました。
そして、「おっぱいが欲しいのかな?
それとも、おむつかな? お熱があるのかな?」
お母さんは、赤ちゃんのご機嫌が斜めになった理由を、
ああかな、こうかな? と考えます。
赤ちゃんに何が起こっているのか、<②省みています(リフレクト)>。
すると、おむつが濡れていたとします。
「あぁ、おむつが濡れていたんだね。気持ち悪かったね」
お母さんは、赤ちゃんが泣いていた理由がわかり、
それを、子どもに、返してあげます。
これが、ここで言う、こころをつくる仕組みの、
<③ミラーリング>です。
お母さんは、赤ちゃんの、おむつを交換してくれたとします。
赤ちゃんは、さっぱりしたおむつで、ニコニコ笑顔に戻りました。
すると、お母さんは、
「あぁ、気持ちいいね。おむつがキレイになって、さっぱりしたね」
と抱っこしながら、声をかけるかもしれません。
これも、①共鳴、②リフレクト、③ミラーリング、が行われています。
♯「ミラーリング」は、苦痛を和らげ、存在を確かにしてゆく
赤ちゃん自身は、いろいろなことがわかる存在ですが、
身体的な快・不快の感覚を中心に、
世界と関わっている段階があります。
赤ちゃんの、身体的な快・不快の世界は、
まだ、言葉の世界に至っていません。
自分の気持ちを、消化し、言葉の世界に分類していくことは、
多くの積み重ねが必要です。
人は、気持ちの通った言葉によって、苦痛が和らいだり、
自分の気持ちを理解し、符号化することによって、
不安や恐怖をある程度内在させ、自分という存在を
確立してゆくと考えられています。
ここで示した例では、子の未分化な情動を、
母が自分の心を通して推察し、まとまりのあるものにして、
鏡に映してあげるように、子どもに示してあげています。
お母さんの心に、ああかな、こうかな、といった、
赤ちゃんへの気持ちを推察していく心の積み重ねが
できることによって、また、赤ちゃんも、それを取り込んで、
自分が、おむつが濡れて気持ちが悪かったんだ、
ということを、理解できるようになっていくわけです。
ミラーリングの積み重ねによって、心は、
身体的な快・不快の世界から、より『精緻な心』へ
発展していきます。
これは、ミラーリングの一例です。
こうした、良質な映し返し・ミラーリングは、
大人にも、良質で健康的な自己愛を保っていくために、
必要な過程です。
そして、ミラーリングの体験には、
どうしても他者との関係が必要です。
あなたの心を、こうかな、ああかな、と省み、
『おもんぱかられる』こころの動きは、
大人の心の健康にも、とても重要な要素なのです。
自分がまだ、はっきりとわかっていない気持ちを、
ああかな、こうかなと、考えながら、話し合いながら、
映し返してくれる、良質な他者が、こころを育て、
こころを発展させていくために、どうしても必要な存在です。
「こころを、つくる③ ミラーリングされることに慣れていない」へ、つづく。
※1 参考文献:『メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服』(チェ・ヒョンイン著・星和書店出版)
※2 参考文献:『メンタライジングの理論と臨床』(J.G.アレン他著・北大路書房)