先日、お隣の艇に貸そうとしたら故障していたことが発覚(『23,24日は。。。』http://ameblo.jp/oceansailor/entry-11479235552.html )した『マルチインパクトドライバー』。
僕が使っているのは、まだパナソニックがナショナル名も使っていたときの、
National 充電マルチインパクトドライバー『EZT614YKY』です。
この商品はプロ仕様のロースペックモデルをDIY仕様(MY JOYシリーズ)のハイスペックモデルとしてホームセンターなどで販売されていました。
プロ仕様のモデルは『EZ6507 X-H(本体のみ)』
他にケースとバッテリー充電器とニッケル水素電池×2が付属した『EZ6507 N22KN-H』があります。
僕が購入したこのマルチインパクトドライバーは一番安いニカドバッテリーを搭載したDIY仕様、ホームセンターで安く手に入れれるようにプロ仕様のバッテリーを変更した商品です。
個人でヨットだけに使うには十分かと思います。
他に、『EZT614X(本体のみ)』もあったようです。
この商品、プロ仕様とDIY仕様の違いはバッテリーと色だけのようです。
商品名に『マルチ』とあります。
名前からも色々なことができそうな感じですが、何ができるの?ということで、
スイッチは4種類
1、オン・オフ兼スピード・トルク調整のためのトリガースイッチ
2、正転・逆転を切り替えるための左右スライドスイッチ
3、インパクトとクラッチを切り替えるための前後スライドスイッチ
4、クラッチのトルクの調整とドリルへの変更の回転スイッチ(というかギアチェンジ)
このスイッチで気になるのは『インパクト』と『クラッチ』、さらに『クラッチの強さ』と『ドリルへの変更』ではないでしょうか?
じゃあ、『マルチ』とはこれら4つのスイッチで何通りも機能があるの?と思うかも知れませんが、実際には大きく3つ機能があります。
1つ目は、『インパクトドライバー』としての機能。
ヨットでは木工をするときや、マストトップに風向風速計と取り付けるときに使うタッピングビスを締め付けたり外したりするときに使います。この機能がないと、たとえ普通のドリルで下穴を開けたとしても、最後まで人力で締めこむには相当の労力が必要です。下手をすると、ビスの頭をなめてしまいます。このマルチインパクトドライバーがなかったときは、充電ドリルとインパクトドライバーの2つを持ってマストトップまで上がっていました。。。
スイッチはインパクト側にして、正転・逆転スイッチが使用でき、スピードと強さをトリガースイッチによって変化できます。
負荷がかかっていないときは普通のドリルとなんら変わりはありません。しかし負荷がかかると『ガ、ガ、ガ、』という音に変わり、負荷が最大になると『ガガガガガ・・・』という連続音に変わります。これは内部で打撃を加えている音です。この打撃によって2つ目の機能の『ドリルドライバー』よりも締め付けトルクが数倍あるようです。
2つ目は、『ドライバー』としての機能。
その名のごとく手で回すプラスやマイナス、あるいはボックスや六角レンチなどを先端ビットの交換で色々なものを回して締め付けや取り外しができます。
スイッチはクラッチ側にして、正転・逆転スイッチが使用でき、スピードをトリガースイッチで、締め付けトルクを回転スイッチの1~21までの段階で調整できます。
ビスを沢山締めたいときに重宝します。
『インパクトドライバー』機能はこのマルチインパクトドライバーが持っているトルクを最大限まで無段階にトリガーの引き込みで調整するのに対して、『ドライバー』は回転スイッチの1~21段階で調整した締め付けトルクに達したらクラッチが働き『ガガガガガッ』という打撃音だけ聞こえてそれ以上締めこみません。(インパクトは打撃し続けます。)
あまり使う機能ではないかも知れませんが、僕は我が艇のレストアでデッキを大修理したときに、ヘッドセールのトラベラートラックの取り付けや、アイパッド・スタンションベース・クリートなどの取り付けはすべてこの機能を使いました。この機能のお陰で2日で作業を終えることができました。なければ手にマメを作りながら4~5日かかっていたと思います。
この回転スイッチによる1~21段階の締め付けトルクはいうなれば、人が片手で軽く作業をしたり、片手で力を入れて作業したり、両手で軽く作業したり、両手で力を入れて作業したり、さらには体重をかけたり、ドライバーにスパナを取り付けて作業したりの調整をすべてやってくれるくらい万能です。しかもドライバーを持ち直さなくてもいいので作業効率の良さといったら。。。締め付けトルクの調整は始めは弱く徐々に必要なトルクまで上げていきます。
3つ目は見たままの『ドリル』としての機能。
ドリル=穴開けの道具ですね。
スイッチはクラッチ側にして、回転スイッチをドリルマークの位置にします。この状態で『ドライバー』機能の21段階目のトルクのままクラッチを働かせず繋ぎっぱなしになります。穴を開けるときは正転、普通は正転のまま引き抜けますが、引き抜けないようなときは逆転させながら抜くこともあります。
トリガースイッチはトルクとスピードを無段階に調整することになります。クラッチが働かないので、固定された素材に穴を開けようとして噛んでしまったらビットが折れるか、持っている手が振り払われますのでご注意を。。。
先端ビットの交換で様々なものに穴を開けることができます。
木やFRPに穴を開ける場合は、開け始めはゆっくりセンターがずれないようにすれば、あとはトリガーを引き込んで一気に開けれます。
マストなどの薄いアルミなら木やFRPより少しだけビットの先端を押し当てる力を増すだけで、木やFRPと同じように開けれますが、厚みのあるもに穴をを開ける場合はマルチインパクトドライバーが熱を持たないように注意しながら休み休みあけましょう。(時々空回しをして、内蔵ファンで強制的に冷却するほうがいいようです。)
ステンレスに穴をあける場合はスピードはゆっくり、材料に力強くビットの先を当てて削りとっていく感じで開けましょう。スピードが速くて、押し当てる力が弱ければ、ビット先端が熱くなり、鈍ら刀状態になって、穴が開けれなくなります。
カーボンに穴を開けるのが一番難しいようですが、僕には経験がありません。とにかくビットがよく折れるようなので何本も用意したり、ビットを削りながら(尖らせながら)開けるそうですが真相のほどは???
気になる穴開け能力は、
説明書には
・木工ドリルφ20まで
・鉄工ドリルφ10まで
・ホールソーφ19まで
とあります。
実際には穴を開ける材料などによると思いますが、僕が実際にこれ以上の穴をこのマルチインパクトドライバーで開けたことのある実績は、
・φ24mmホールソーで先日マストに穴を開けました。
・φ90mmホールソーでサンドイッチのFRP(FRP自体は表と裏で薄く積層されて中はクレゲセルと、バルサ)は簡単に開きました。(レイマリンのインスツルメントの取り付け)他にもφ26~φ57などで開けたこともあります。
・φ90mmに設定した自在ホールソーでFRP単板も開けたことがあります。
・φ8mmかφ10mmの鉄工ドリルで40mm厚のアルミや5mm厚のステンレスに穴を開けたこともあります。ステンレスは刃のほうが駄目になることが多いです。
まぁ、説明書にないサイズを開けるのは自己責任で!!
他にも、ワイヤーブラシを取り付けて錆取り、ホイールタイプの研磨ビットを使えばパイプ内側のバリ取りや、攪拌機を取り付けて船底塗料の攪拌など、回転させる道具ならほぼ『マルチ』に使用できます。
先日、ブログ繋がりのAdagio様に教えてもらって工具屋さんに行ったらリベッターまで売っていました。
本当にヨットではマストの上から船底まで『マルチ』に使える道具ですね。
で、どのように故障したの?ということですが、原因は故障というよりも内部の消耗品だと思います。
僕の見立てでは、
・使用過多によるブラシの磨耗による通電不良。
・キャビン内の湿気による内部の錆や、使用による内部の汚れによる通電不良。
このどちらかだと思います。
説明書には『サービスマン以外は分解しないこと』という内容が。。。
そこで、パナソニックの『修理ご相談センター』に問い合わせてみると、『その症状は間違えなくブラシですね。修理は技術料込みで9450円だと思います。』とのこと。。。
送料込みで3000円~5000円くらいならと思っていましたが。。。ブラシは部品代としては数百円で販売しているようなもの。。。もしかしたら汎用品を使っているかもと、
自分で分解して確認しましたが、
これ以上のマニアではない僕はとりあえずモーターの軸を回転させ、ブラシを上下するだけで使えるようにしました。
この写真の左右の金色のケースの中に入っているのがブラシ、そのブラシをスプリングでモーターの軸に押し当てて通電させています。
このブラシは磨耗品なので小さくなってきたら、スプリングによってモーター軸に押し当てることができなくなって通電不良を起こします。
プロ用の工具やエンジンのセルモーターなども原理は同じ。
DIY用だから分解しないように説明書には書かれているけど、プロ用の工具などは交換部品としてブラシが販売店にあり、半田付けではなく簡単にビス止めで交換できるようになっているものもあります。セルモーターも同じ。たぶんDIY用なのでブラシのパーツ供給もしてくれないでしょう。(最近はブラスレス仕様のモーターもあるようです。)
僕がもっとマニアックなら、サイズの合うブラシを探し出し、自分で半田付けするのですが諦めます。
今はレイマリンのレーダーとバースクッションの素材購入でふところが寂しい。。。もう少しふところが温まってから、
・ブラシ交換
・内部の洗浄
・取り付けビスの新替え(ビスのヘッドが錆びているから)
・ストラップの新替え(ストラップのカシメバンドが錆びているから)
の4点をお願いするつもりです。
ブラシのトラブルなら、とりあえず順番に、
ステップ1、トリガースイッチを連続して何度も引いてみる。(通電の可能性がある)
ステップ2、ブラシの辺りを軽く何か硬いもので叩いてみる。(ブラシの位置が変わり通電する可能性が高まる)
これでも駄目なら僕のように、
ステップ3、分解して強制的に軸を回し、ブラシを上下させて接点を移動する。
それでも駄目なら、
ステップ4、諦めて修理に出す。
さらに駄目なら、
ステップ5、新しいのを買う。
ですね。
このブログを読んで分解してトラブルが起きても当方は責任を持ちません。自己責任でお願いします。
新規購入から無理をしなくても調子が悪くなるのは、
1、使用頻度によるブラシの磨耗。(予防策はなし、磨耗したら交換する消耗品)
2、使用継続時間の減少。(予防策はなし、バッテリーは消耗品)
の2点です。
『EZT614YKY』にはニカドバッテリーが2つ付属していましたが、2年ほど前に満充電にしても使用時間数分、ホールソーを使っての穴開けが充電しながら一日かかったりしたので、同じニカドバッテリーを買うか、新しく出たリチウムイオンバッテリーと専用充電器を購入するか悩みましたが、
奮発してリチウムイオンバッテリー『EZ9L31』と専用充電器『EZT003』を購入しました。
元々『EZT614YKY』に付属していたバッテリーは『EZT901』。
『EZ9L31』は『EZT901』の約7.5倍の作業量があるようです。
だから、先日のジンバルマウントの取り付けのときに、6.5mmの穴を18箇所、24mmの穴を1箇所開けるのに半日の作業で終えることができたのですね~。
v(^-^)v
あと、注意しないといけないのはオーバーワークをさせすぎることによる熱。これはモーターを傷めることになったり、プラスチックハウジングを変形させるほどの熱が発生することがあります。
説明書以上のオーバーワークをさせる場合、熱を帯びていないかの点検(上の方にも書いたけど時々空回しをして、内蔵ファンで強制的に冷却)しながら、休み休み使用すれば、大丈夫だと思います。
プロ仕様(高級品)とDIY仕様(廉価品)の違いは主に
・パワー(トルク)の最大値の違い。(バッテリーのパワーとモーターのパワー)
・連続作業量の違い(バッテリーの容量と、モーターの冷却性能の違い)
だと思います。
僕が購入したのが2006年末くらいで、レストアに使用するなど頻度は一般DIYユーザーより激しいかも知れませんが、よく持ってくれていると思います。とりあえず動くようにはなりましたが、ロングに行く前にはきちんとメンテナンスしないといけませんね。しかし、艇に積んでいる標準的な工具だと思っていたら知り合いのレーサーは積んでいないようです。。。僕はインショアレースでも降ろしたことないんだけどな~(・・。)ゞ
僕のマイベストヒット工具です。お勧めですよ。皆さんも一艇に一台いかがですか?(決してパナソニックの回し者ではございません。)今でもこの仕様であるかどうかは不明ですが。。。また、ホームセンターに行ったときにでも見てみます。
『マルチインパクトドライバー(先端パーツ)』へいつか続く。。。と思う。。。