嫌われ剛の生涯[10]完 | オカハセのブログ

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順也「剛さん、、最後のライブをやりましょう!」

剛「いや、もうまともに吹けないよ…」

順也「だけどこのまま死んでしまって後悔は無いんですか?」

剛「そりゃやりたいよ。だけど今の俺は聴いてる人をがっかりさせるだけだよ。バラードとかならなんとかギリギリ吹けるかもしれないけど」

順也「じゃあバラードライブということにしてライブすればいい。バラードじゃない曲も俺らがサポートしますよ。」

剛「順也のベースはマジックを起こすからな。やれるかもしれないなぁ」

順也「じゃあ決まりです!じゃあライブは2週間後にしましょう」

剛「日が近いけど、体力があるうちにやらないとな…」

それから順也は、客を集めるためにありとあらゆる人に宣伝をした。
順也の働きかけでライブ当日は少し大きめのライブハウスを満員にすることが出来た。
どうやら剛が末期ガンという噂は広がっていて、お客の大半はわかっていたのだ。だから「きっと最後のライブだろう」と思ってこれだけのお客が来たのだ。

ライブでやった曲は殆どがバラード曲で1ステージ目の終わりに少し軽快な曲をサラッとやり、2ステージ目の最後は渾身の激しい曲をやった。剛は最後の曲は体力的に自信がなかったのだが、順也のマジックで見事にその時だけ奇跡的に体力が戻った。
順也のお陰で剛はこの最後の曲ではほぼトランス状態になっていた。
「ああ、良かった。命がある間に順也のマジックのお陰で、またこんな音空間にやって来ることが出来た。もうこの世に思い残すことはない……と言うには修行が足りないな。もっともっとこの音空間を経験したかった。だけど最後だからここまでの経験が出来たのかもしれないなぁ」
剛は不思議なことにこれらのことに思い巡らすこととトランスした音空間を、なんと同時に味わっていたのだ。
お客は皆このバンドの演奏に釘付けになっていた。剛の中で最後の奇跡が起きていることはその場に居合わせた人間は全員感じていた。
しかし、実際には剛の身体は悲鳴を上げていて後から疲労がどっと来ることは順也も担当医(実は剛の容態が急に悪くなったりした時のための痛み止めの処置も兼ねて、最後のライブを担当医自ら聴きに来ていた)もわかってはいるけど、剛がそれで身を削っても後悔はないこともわかっているのでじっと見守った。

アンコールの拍手。

剛は倒れそうだったけど、アンコールはオリジナルのバラードを演奏してライブを終えた。拍手はしばらく鳴り止まなかった。
ライブが終わった後も、すぐに席を立つ客は1人もいなかった。それはバンドの演奏があまりにも凄かったせいだ。

そして病院へ向かう順也の運転する車のFMラジオからなんとも言えない郷愁を誘うオカリナの音色が聴こえて来た。
剛「ボリューム上げてもらえるかな?」と言って、目を閉じて陶次郎のオカリナに聴きいった。
そして剛は「ああ、もっと生きられたらこの楽器を始めたかったな…もっと早く出会えていれば…今度生まれて来たら俺はこの楽器だな…」と呟いた。

翌日、順也は病院へ陶次郎のCDを買って持っていった。剛はとても喜んだ。
それからは四六時中取り憑かれたようにそのCDを聴き続けた。
数日後、剛は危篤状態になり順也を含めた最後のライブのメンバーが駆けつけた。

最後に順也が剛の手を握ると、剛は微かな声で「ありがとう…」と言って息をひきとった。




〈あとがき〉

やっと最終回を迎えました。
まあ僕の書く短編なんてこの程度のレベルですが。
これは僕の幼少の頃からの経験に尾びれや背びれをたっぷりと付けて、更に後半は僕の願望と妄想をてんこ盛りに盛り込んでディフォルメしました。
お楽しみ頂けましたでしょうか?
え?つまらなかった?(笑)
コメントで感想頂けたら嬉しいです。でもあまり辛口書かれると落ち込むので程々にしてください(笑)。
またアイデア浮かんだら短編書いてみます。
え?書かなくていいって?(笑)





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