長文「路上ライブで」 | オカハセのブログ

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2年前に、ストリートミュージシャンのマナーについて書いた記事があります。
友人の何人かには以前からストリートミュージシャンのマナーの悪さを話していて、そのうちの一人は【通行人として地下道を歩いていると同時に2つも3つも歌が聞こえてきて、それもお互いが負けん気の強さで競っている】ことに辟易していたから、僕の言ってることはよく理解できたみたいでした。通行人はただでさえ半ば強制的に音楽を聴かされているわけです。しかも2つ以上の音楽が…そして更に競っているわけです…  通行人にしてみれば正にカオスです。しかも路上ライブは【軽犯罪】なのです。問題が起きなければ黙認してもらっているだけのことです。実際、一昨年は【締め出す】方向で市が検討していました。若干ブームがおとなしくなったせいか、今は市や警察は黙認の傾向にあるようです。
2年前の↑の記事を書く直前、ある若者のストリートミュージシャンと少々揉めました。まあ揉めたというよりも、向こうはずっと薄ら笑いを浮かべていたから「くだらねえオカリナ吹きのクレームの相手をした」くらいにしか思っていないだろうけど…

僕がその時に彼に訴えたことは。

①ここは誰の場所っていう意味ではなく、自分がライブ始める前に音を出している人間が近くにいたら、ひと言断わって欲しい。

②通行人にしてみたら、同時に2つも3つも音がバッティングしているのはカオスなんだし、本来ならやってはいけない事を黙認してもらってやってるのだから、マナーを守って欲しい。

③音が何重にも流れる地下道は通報の元になる。
それはうちらだけで済む問題ではなく【マナーを守っているアクセサリー売りや占い師も締め出しを食らっておまんまが食べられなくなる】、演れて当たり前と思わないで欲しい。

恐らく彼は、僕が言った①〜③の内容をはじめっからろくに聞く気などはなくて【オカリナ吹きが「俺が先にやってたんだからやめろ」と言ってるとしか思っていなかったのではないかと思います。
僕がマナーを訴えていても「因縁を付けられてるという感情が前提の思考」だから、僕が言えば言うほど彼は頑なになっていっていたように思う。

彼は①に対し
「別にお互いに許可を取ってやってないんなら、誰が近くで始めようが関係ないんじゃないんですか?ひと言ことわる必要はないと思いますね。僕は近くで始めようが気にならないので…」

②に対しては
「そりゃそうですけど、それ言ったらひとりだけ歌ってたってうるさいと感じる人もいる。だからそれはそっちの考えであって、僕はそういう考えかたじゃないですから」

③に関しては
「通法する人は何やったって通法するでしょう。そんなの気にしてたら何も出来ない。とにかく俺は人が近くでやっていてもいつも通りに歌いますよ」

以上だった。
そしてその程度の人間が歌う歌にしか聴こえなかった。一度たまたま観に行ったライブハウスでも彼が歌っていたが同じような印象だった。

ところが、それから一年近く過ぎてから、あるお店で彼の歌を聴いた時には正直びっくりした。
とてもそんなマナーを守らないとは思えないくらい、歌いかたや詞の内容のフィーリングが変化していた。

僕は友人と2人でこの店に行ったのですが、友人は「彼の歌は凄くいいよ」と言った。
僕は【確かにいいかも知れないけど、路上での彼の僕に対する態度は忘れられないから「そういう傲慢さが鼻についてて、結果僕には良いと感じられない歌」だろう】と予想した。つまり…あんな態度の路上ミュージシャンが歌う「いい歌」なんてたかが知れてるだろうと。
彼は歌い始めた。
ワンコーラス歌い終わると友人が耳元で「どう?」と聞いてきた(友人は僕と彼が揉めたことを知っている)。
僕は「かなりいい…」と答えた。
正直、これがあの時揉めた同一人物とは思えなかった。本気で「そっくりさんじゃないよな」と確かめてしまった。しかしそれは間違い無く本人だった。

僕の頭は軽く混乱してしまった。

【これだけの歌を歌われたら僕の路上での揉めた話は誰も信じはくれないだろう】と思った。
実際友人も「彼がそんな路上でのマナーが悪い奴とは思えない」と、つまり心の中ではきっと「オカハセに問題があったんじゃ無いのか?」と感じていたかもしれない。
確かに彼の歌に変化があったからといってあの時のことはチャラにはならない。だけど彼の出方次第では水に流して「それはそれこれはこれ」と考えるスタンスになるくらいに彼の歌は魅力を増していた。それは歌が彼の心の傷とかを癒してくれるリアリティの感じるものだったから。
しかしその会場で彼と目が合うとあの路上で揉めた時と同じ目付きをしていたのでガッカリした。
でもそれはもしかすると❶【僕が寄せ付けないオーラを出していたので向こうも意地になっていたのかもしれない】。
或いは、❷全く僕との揉めたことは【俺は悪くない。俺の歌が良いと思うならそっちが声をかけてこえばいいと思っているのかもしれない】。
或いは、❸【本当は謝りたいけど気後れしているのかもしれない】。
まあ❸は多分ないだろうと思う。
少なくとも路上で揉めた時に本当に僕が言わんとすることは受け取っていないとは思う。単に「俺が先にやってるんだから退け」と言われたとしか思っていないのだと思う。
歌が相当良かっただけに残念な気持ちで店をあとにした。
けれど、路上で彼と揉めた内容に対しての納得はもちろんいってないが【怒りは完全になくなった】。
とりあえず保留にして置く。
縁があればなんとやらということで。
少なくとも彼が歌い出すとその店の中の人達が皆聴き入っていた事は間違い無かった。
これだけの歌を歌われたら、僕が路上で彼と揉めたことを言っても誰も僕の味方には付かないだろうと思うくらいの素晴らしいものだった。
違うカタチで出会っていたら仲良くなれたのかもしれない。
僕はこの時【路上で揉めたのが彼との出会いだったという現実を何とか忘れられたらどんなにいいだろう】と思った。



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