朗読劇『瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった』が終わりました。千穐楽から少し配信もやっていたから少しだけホッとしていたのに、配信も終わってしまいました。
「ま、終わらない夏休みなんてあるわけないもんね」とキヨのセリフが物語の中にもあるけれど、終わらないものってこの世界にほとんどないから仕方なく、それに向き合うしかない。
どうせ終わるなら、最高の終わり方にしたい、誰もに自慢できる、かっこいい時間だったと胸を張りたい。
これは、演出の時にみんなに話したことでもありました。夏休みの自由研究を、クラスの前で、めちゃくちゃかっこよく発表する、それが5人のワクワクしてたまらない夢でした。5人とも、めちゃくちゃ仲間外れなんですよね、校内で。だから、「キモい5人」が集まって発表なんて黒板の前に並んだ瞬間、クラスメイトはくすくすと意地悪な笑いをぶつけてくるだろうと5人はわかってるんです。それでも、海を盗んできたんだ!最高の冒険を経てな!と、そう叫んでやるのは、想像するだけでうっとりする時間だったのです。50年も経ってしまったんですけどね。50年も終わらなかったヴィンテージものの夏休み、それを自分の意思で今更終わらせないといけないのは、頭おかしくなるくらい悲しい。選ぶはめになったトノキヨもかわいそうです、ほんと。
『僕たちはその鉄橋を』
というタイトルの絵です。
50年もの間、ポセイドン号は橋の上に居続けて待ち侘びた。
渡り切れなかった鉄橋を、5人は渡り切る、想像の力で。
彼らは世界の現実にさえ頼らないで、自分たちの力で橋を渡りきり、砂浜を駆け巡り、波と戯れ、キャンプファイヤーをやり、そしてついには朝日まで昇らせてしまう。勇者なんです。どんなかっこいい戦隊モノのヒーローたちも、彼らには勝てない。
僕らは稽古場でそんなことを語らって本番に挑みました。
2021年、舞台初演。
必死で作り上げたのでした。
2022年、小説化、出版。
時を同じくして、舞台再演。
ダブルキャストにし、ダンサーたちも入れて演出も派手にした。
朗読劇、一度目。
実力派の声優たちを集めて挑んだ。
初めて、自分は出演をしないリュズタンだった。
不思議な気持ちだったけれど、出演者も来場者も物語を愛してくれた。
物語が独り立ちした気持ちになった。
そして今年、朗読劇2度目。
実に5回も姿を変えて、贈り直してきた。
こんな作品は人生でも初めてです。
向き合うたびに心がどうにかなってしまいそうになる作品です。
て言うのは、いろんなところで語っているので、毎年言うのもどうかと思いつつ何ですが、この作品は僕の父が他界したことににまつわって描いたものです。詳しくは2021年7〜8月あたりのブログを読んでもらえたりするとこの作品が生まれた経緯がよくわかるとは思うんですが、リュズタンは、僕にとってとてつもなく私的な意味合いも持っている物語です。
死の直前まで父はこのリュズタンのサウンドトラックを創っていました。筆の遅い息子より先に音楽を創ってしまうというタイプの創作はこれまでも何度かありましたが、その後でこんなに遠くに行ってしまうのは初めて。父の遺した音楽を使って物語を創る、歯を食いしばりながら挑んだのもいまや懐かしい記憶です。
だからこそ、この物語をみんなのものにしたいと言う強い気持ちがあります。それは、世界が父と、父の音楽を忘れないで欲しいと言う思いです。父は肉体を捨てて音楽になってしまったのですが、それはそれで、父なので。世界から忘れ去られ無い限りは、父は消えてなくなったりはしないな、と。
なんで、父とリュズタン、そしてその音楽を知る人が次から次に現れてくれますようにと願いながら物語を続けるし、そんな仲間が、リュズタンに触れる度に末原康志という存在を思い出してもらえれば嬉しいです。
この物語が、いつか古典と呼ばれるようになるのを願っています。生まれて経緯なんていつしか忘れ去られても良くて、僕自身もいなくなって、忘れられてもいいから、リュズタンみんなのものであってほしい。みんなの御守り出会ってほしい。どうかこの物語があなたの物語でありますように。
キヨは、実は4人の仲間といない時間はいつも暗い家の中で一人ぼっちなんです。母親は昼間も夜中も仕事に出かけていて、滅多に話すこともできない。借金取りが来ることも多いので明かりを消している。そんな中でキヨはリュズタンと過ごし、想像の力で無理矢理に毎日を美しい物語に変えていった。キヨは学校でも「それ、リュズタンに言おうかな」とか突然口走るので、当然周りからは浮いている。
物語中盤で想像力の練習をする場面は、あれは屋根裏部屋なんですが、キヨなりに調べた海にまつわる絵とか資料とかが吊り下げられてたり、ノリムネからもらった魚の骨とか貝とかがあちこちに飾られています。
4人の存在はキヨにとってはすべて。奇跡のような仲間。生まれ変わっても永遠に繋がり続けたいというのは、切実な、夢のような願いなのでした。
フナノはとにかく父親を全面的に尊敬しています。尊敬していい父親ではほんとうはないんですけどね・・・言うまでもなく、周りからは浮きまくり。別に彼自身のフィジカルが強いわけでもないし、やさぐれたメンタルがあるわけでもない。父を、父という理由だけで尊敬し、そしていつか自分もそうなりたいと願っています。古典文学が得意なのは、年老いた祖父と共に暮らしているからだったりします。父から受け継いだポセイドン号をどれほど大切にしていたか、なんてこともよく話しました。毎晩みがいてたんだろうなあ
クラスではほとんど誰とも喋らないミナ。劇中では語られていないけれど、ミナはトノキヨと出会ってから、トノキヨの前で何度も歌と踊りを披露するようになるんです。ミナは、トノキヨだけのアイドルになれればいいと思ったのですね。トノキヨはもちろん、あんなですからね、べた褒めし続けます。
ノリムネは幼い頃から店番を任されていたし、商店街に買い物に来るおとなたちと対等に会話をし続けていて、小学生の頃から性格的にはちょっと嫌な老け方をしています。舞台版では、彼は「生臭坊主」という悪口でクラスのレン中から仲間外れにされていたという設定もありました。そんなある日、キヨが店を訪ねてきて、彼の人生はガラリと変わるんです。
この物語のおかげで出会えた人がたくさんいて、それが幸せ。
(かずき、ひろくん、かおり、こうたろうくん)
今年なんかは常に大爆笑しながらワイワイと稽古を楽しみました。夏休みの自由研究をやっている気分だった。今年で2年目になる下野紘くん、佐藤拓也くん、西山宏太朗くん、みんな作品をとても大切に思っていてくれて、それ自体がとっても嬉しかった。新しい出演者に、「この冒険は楽しいんだよ!」みたいに語ってくれて共犯者的にみんなを巻き込んでくれて、劇団ぽくて楽しい。
新たな仲間も随分と増えて、誰もが本当に素敵だった。ほんと、ほんとうに仲間になったなあ、と思えてる。絶対に再会しようよ、またやろうよ、と約束して別れた。声優は舞台俳優と比べても圧倒的に出会ってきている物語の数が多いんですよね。その経験値、物語の読解能力、技術と、並々ならぬ感情の瞬発力、それらぶつけ合って、一度きりの物語セッションライブをする、刹那的で、永遠的な時間は、ゾクッとする刺激に溢れていました。そして、同じ物語の中を生きたということが、切りようのない大切な絆になってしまう。
同じ役なのにひとによってぜんぜん違う味わいがあったのは御覧頂いたとおり。演出家にとって、演者と役の内部や、台本に描かれていない部分について話し合う時間てのは本当に幸福です。ひとそれぞれ、質問してくるところとか気になるところが違って、話しながら想像して道を見つけていく時間には宝探しめいた楽しさがある。自分で描いた物語だし、何度もやっているのに、まだ新しい宝物が見つかるのかって驚く。
(さき、ゆうと、たくやくん、りょうた)
現実世界の中で本を開いて、呼んでいくうちにどんどん物語の中に潜り込んで、気が付いたら現実との見境がつかなくなっていく、この感じは演劇以上に没入感があるとも思っています。
ぜひみなさんも仲間を5人集めて、声に出して朗読会をやってみてほしい。5人集まらなかったら、自分の中に5人分の人格を召喚して一人でやってみるのもいいです。なあに、別に誰に見せるわけでもないんだから、うまくできる必要なんてなんにもない。
今回、運命のいたずら的に自分も一緒に語り部の一人として物語のなかに入ることになりました。稽古場で素晴らしい演技をしてくれたしょうへいとたすくの芝居を世の中に贈ることができなかったのは悔しかったけれど、未来に持ち越しの約束があるというのは、生きなくちゃいけない理由にもなるし、いい。いいと思うことにします。
僕は舞台版ではずっとキヨをやっていたけれど、今回は、ラッコとワカメ。全員がそもそも自分の分身みたいなところもあるから抵抗はなかったけれど、違う角度から物語や他の登場人物を見つめるのは楽しいことでした。物語の中のほうが現実よりも生きている感じがする僕としては、物語の中で仲間と遊べたのは最高の時間でした。
とりとめもなく文字を書き連ねてしまってごめんなさい。まだまだ言いたいことがあるし、なにより、書き終えたら公演がちゃんと締めくくれてしまう感じに戸惑って、冗長になっています。ま、でも、ね。
どうかみなさん、また会いましょう。
そのために、長生きをしてください。
リュズタンのご観劇、ずいぶん難しいことだったと思うんです。想像力と、物語に没入する才能が必要ですから、実は人を選びます。もしもお楽しみいただけたと言うなら、あなたは僕のとっても貴重な仲間である気がするのです。僕は生涯こうやって物語を創り続けるし、それこそが世界を変えるための、僕に持ち得る唯一の手段と思っています。
想像力至上主義、物語愛好家のあなた、どうか、これからも、僕の物語の中に遊びに来てほしいと強く願います。
また会えるぞ、と、またあったとき嬉しいぞ、と想像するだけで、いまこの瞬間が輝く思いです。
。。
僕は次は10月27日にひとり芝居をやる予定があります。
路上で独り芝居をやっていたというのがそもそも僕の居演劇キャリアの始まりです。
この日は赤坂に張られたテントの中で公演をするんですが、客入れから客出しまでずっと場内をうろついていると思いますので、もしよかったらいらっしゃって、気安く話しかけてください。あなたという物語仲間の顔を覚えたいし、物語を贈りたい気持ちです。
末原拓馬ひとり芝居
『カスタネット』
10月27日13時開演
@赤坂サカス広場 特設紫テント
僕が生涯をかけて世界中に広めていきたいと願っている物語です。
受付開始 12:00
開場 12:30
開演 13:00
【あらすじ】
世界に復讐を誓う盗人ドブロクは、花瓶に言葉を吹き込み兵器とする作戦を王に持ちかけ死罪を免れようとする。国中に66の花瓶を配り歩く中で最後に出会ったのは、孤児の少女カスタネットだった... ーー憎しみから生まれた兵器、愛から生まれた奇跡。戦火の中で生まれた愛と祈りの物語。
【チケットについて】
〇お金持ち 時価 ~78万
〇ふつうの人 6000円
〇貧乏な人 2500円
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/025rqjxksi041.html#detail
主催:赤坂舞台芸術祭
協力:TBSホールディングス
どうぞ軽はずみにご予約いただいて、遊びに来てください。
この度は、リュズタンの物語にご参加くださり本当にありがとうございました。
また会いましょう。
どうかあなたが、素敵な想像力とともにいつまでも幸せでありますように。そう想像するだけで、幸せです。
ありがとうございた。
また会いましょう。






























