気仙沼の外れ
小さな入り江の奥の 浸水域で
数台の重機が 木質被災材で 盛り土をしていた

埋めてしまえ
埋めてしまえ
もとはと言えば 気仙の山で育まれ
気仙大工の 伝統の業の極みだったのだから
穢れているなどと 道理をわきまえない輩に
一片たりとも 渡すことはない
東北人の誇りを 踏みにじらせるな

高田の町には入らずに
姉歯橋のたもとを 左に曲がって 今泉を通る道
盛岡に行ってからは 数え切れないほど 通っているから
目をつぶってでも行けるのに
道に迷ってしまった

道はあっても 目印がない
あるべきはずの 家並みがない
日が落ちても 灯りもない
夢とも現ともわからぬ 荒漠とした闇
かつての 思い出から 逃れるかのように
コンクリートのかけらの中を 走りつづけた