今は何もなかったことに… | ブドリの森

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最近見た あるTV番組のことです。


 
被災地の子どもたちの中には、震災で受けた衝撃の大きさに耐え切れず、
 
感情を表に出せなくなっているケースが数多く潜んでいると言われている。
 
 
そうした子どもたちの状況に、全国で有名なダンスグループが動き出した。
 
メンバーの多くは、かつて不登校や非行に走った心に傷を抱える子どもたちだが、
 
ダンスを通じた指導から 生き方を変化させてきた。
 
 
そこで今年3月、宮城県南三陸町で団員を募集、30人の子どもたちが集まった。
 
子どもたちの中には、祖父母を失い、悲しみから抜け出せない子、
 
行方不明のままの母親を思い、立ち直れない子どもがいた。
 
 
彼らにダンスで悲しみや苦しみをはき出して、前向きになってもらいたい。
 
週2回の特訓を通して 心を変化させていく 被災地の子どもたち、
 
そして被災地にかかわることで、自分を見つめ直していく京都の子どもたちの姿があった。
     
 
イメージ 1
 
                            南三陸町や気仙沼から集まった被災地の子どもたち
 

 
 
1年4ヶ月以上経った今でも 母親が行方不明で見つかっていない、
 
南三陸町の中学生の女の子 Mちゃんは、どんな時でも笑顔だった。
 
津波の直後、父親に「お母さんは…?」と一度聞いたきり、
 
母親のことはいっさい口にしないという。
 
 
そんなMちゃんに気づいた 京都から来た世話役の若い女性が、家庭訪問をした。
 
「Mちゃんってさぁ、いつも笑顔だよね? どうしてかなぁ?」
 
女性は優しく思いやりのある口調で Mちゃんに尋ねた。
 
Mちゃんは いつものように笑っていた。
 
同じことを 何度か訊かれても、やっぱり笑っているだけで答えない。
 
 
その若い女性もかつては心に深い傷を受けた経験があり、
 
Mちゃんのことを心から気づかい、助けになりたいと願っていたと思う。
 
 
確かに 辛い時には、誰か思いやりのある人に訊いてもらえるだけでも 心が軽くなる。
 
でも、人によっては 口に出すことすら 出来ない苦しみもある…
 
無理に 心をこじ開けて 話させようとする圧力に 笑って取り繕うことしか出来ない。
 
 
 
「お母さんのことは考えたくない
 
今は思い出させないで欲しい
 
言葉にした瞬間に 噴き出す自分の感情にどう対処したらいいのかわからない
 
だから、今は
 
何もなかったことにしていては駄目ですか」
 
 
 
私は Mちゃんの笑顔の裏に隠されたそんな叫びを 痛いほど感じた。
 
 
イメージ 2
 
          「がんばろう東北」「南三陸」「気仙沼」の旗を掲げて、
                          関西のダンスグループと共に踊る 被災地の子どもたち
 

 
 
心に深い傷を負った人たちに
 
現実を受け止めなければ 前に進めないと言うけど、
 
今すぐにしなければいけないのでしょうか。
 
自分から話せるようになるまでには 長い時間が必要で、
 
彼らがやっと 心を開いた時が、はじまりなのかもしれない。
 
その時に 「まだ  そんなことを言ってるの?」と一笑に付したりしないように
 
私たちは 自分の生活だけに没頭することなく、
 
被災地のことを決して忘れてはならないと痛感した。