2004年8月1日
後楽園ホール大会
橋本はついに決断を下した。「ここで、俺はひとつ決心をします。これから本当にプロレスが大変な中…自分の目標は今でも変わってません。天下をとること。そのために、今の状態で闘っていくことがきっと得策ではないと思います。治るか治らないか。もうこれは天のことだと思います。ここで皆さんに僅かな時間をいただきまして肩の手術をしたいと思います。」オォーッ‼︎と万雷の拍手に包まれる橋本。誰もが橋本の体を案じていた。治療に専念して、また破壊王としてリングに帰ってきてくれればそれでいい。そんなファンの気持ちが伝わるような温かい光景がそこにあった。
が、その余韻に浸ることすら許されない厳しい状況が橋本を待っていた。
後日話し合いの場を設ける事を約束して、謎の男を追い返した橋本。あまりにも社会派寄りの話題のせいか、この二人のやりとりが紙面を飾ることはなかった…後日発売されたゼロワン公式の映像ソフトのみが記録するのみである。
ハッスルが軌道に乗りじめたことで、ほぼ同一の選手で興行を打つゼロワンはこうした際どい路線を進めることが多くなってきた。
※同年4月に高岩が「僕は在日韓国人です」とカミングアウト
あるいは正統派なマッチメイクではどうしてもハッスルと比べるとスケールダウンしがちな為か、デスマッチに近いハードコア路線も増え始めている。
ゼロワンの終焉が静かに近づいてきた。
一方で、ハッスルキング・小川はPRIDEグランプリ2004決勝大会を迎えていた。
8月15日
さいたまスーパーアリーナ大会
相手はエメリヤーエンコ・ヒョードル!これ以上ない大舞台である。下馬評は小川不利の声が多数のなか、もしかしたら…と一縷の望みがないわけでもなかった。しかし
ゴングが鳴ってから数秒間、大の字になって宙を見つめる小川から何かが抜けていくようにも見えた。
そして試合後と大会終了後、涙を滲ませながらも律儀にファンへむけてハッスルポーズを披露してみせた小川。その姿は、ハッスルキングでも暴走王でもなく人間・小川直也であった。
第6部 完