一年前、新日本とパンクラスの対抗戦が浮上。マッチメイク会議の席でライガーはこう叫んだという。自分のプロレスに絶対の自信を持つライガーだからこそ言える素敵な言葉である。そして想像の範疇だが、アルティメットクラッシュでも同様にカード決めは難航したのではないだろうか。当時、新日本のマッチメイク委員会は以下のメンバーで組織されていたといわれている。
フロント側は上井取締役、田中リングアナ、サイモン猪木
選手側は蝶野、ライガー、平田淳嗣、後藤達俊
さていざ蓋を開けてみると、なんと生え抜きのレスラーは前座に追いやられ、猪木事務所、LA道場、パンクラスら外部勢力が大多数を占めていたのだった。
以下、VT戦のみを抜粋すると…
第8試合
中西学対藤田和之
第7試合
ジョシュ・バーネット対ジミー・アンブリッツ
第6試合
中邑真輔対ヤン・“ザ・ジャイアント”・ノルキヤ
中西学対藤田和之
第7試合
ジョシュ・バーネット対ジミー・アンブリッツ
第6試合
中邑真輔対ヤン・“ザ・ジャイアント”・ノルキヤ
第5試合
ドルゴルスレン・スミヤバザル対高阪剛
第4試合
LYOTO対謙吾
まさにその通り。
後ろのカードには魔界倶楽部、蝶野対小橋建太、永田対高山と再び純プロレスが続くが、となると新日本のレスラーが続々とVT戦に挑むというよりかは、同日興行でVTと純プロレスをリトマス試験紙のように棲み分けしてどちらが面白いかを観る者に問う。という実験的な興行かもしれない。
一方、この試みに否!を突きつけた男がいた。
「あっしには関わりのねぇことでござんす……ぺっ!」
「ぺっ!じゃねぇな、ぷっ!だな。」
「…一番大切なのはプロレスが軸なんだから。そのプロレスのために彼らが頑張るのはいいと思うよ。それがプロレス界全体の問題になってしまうのはオレらにとっては迷惑な話なんだけどね。新日本がやってることがプロレス界の全てに及んで、ルールにしても何か意味深なことが書いてあるから、それは迷惑な話になる場合も多いから。いちいちオレたちが弁解するのも面倒くさいやろ。だから新日本さんがすべてだと思うのはちょっと増長し過ぎじゃないの、と。こっちは木枯し紋次郎の世界や!!」
同日の後楽園ホール大会にて、全日本プロレスと抗争中のゼロワンはついにその渦中にOH砲を投入することを決断した。数年前のWARを思い起こさせるような展開で、怪気炎をあげる橋本は紙プロのインタビューで裏5.2への意気込みを訊かれるとこう力強く答えた。
「どプロレス!!オレらが思っているプロレスをやりますよ。猪木さんに教えていただいたプロレス!!自分たちなりのアイディアを散りばめながら、オレたちなりに考える〝ストロングスタイル〟のプロレスをやっていきますよ。」
01 Worldメインイベント
橋本真也、小川直也対武藤敬司、小島聡
裏5.2へ向けて追い風吹けといわんばかりに、もうひとつ明るいニュースが届いた。橋本のレスラー生活20周年記念日の4月21日、「破壊王プロレスZERO-ONE」の番組制作発表会が開かれた。
「プロレスを大事に、今日を新たなスタートとして、プロレスをもう一度、見ている人の心にきざむ。」
橋本の語り口は簡潔そのもの、心のこもった素晴らしい決意表明であった。
ところが、この頃にマスコミ・関係者の間で奇妙な噂が流れはじめる。
橋本が巡業に来ない。
…続く