哀愁の闘魂記念日 | 珈琲にハチミツ

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2002年といえば、5.2東京ドームの新日本プロレス30周年記念大会-闘魂記念日-にもふれていきたい。このドーム大会について印象深いことをいくつかピックアップしてみる。

すこし遡って2000年4月、悪夢の橋本真也34歳負けたら即引退スペシャル以降、たびたびゴールデンタイム中継されてきたドーム大会だが、新日はこのチャンスを活かすことができずにプロレス人気を復興させるどころか、お粗末な顛末も多く…ついにこの闘魂記念日をもってしてゴールデンタイム撤退というまことに残念な結果を迎えることになった。

さらに切ないのが、ゴールデンタイム復活のきっかけを作った橋本真也自身がその幕引きとなるこの日に参戦してた事実。なんとも奇妙な巡り合わせか。そして橋本にとっては呉越同舟、前年から揉めに揉めているアントニオ猪木と、三沢光晴(この日のメインカードは蝶野正洋対三沢光晴のシングル)との鉢合わせ。ところが橋本は新日本の現場監督になし崩し的に(2月札幌の猪木御殿)就任してしまった盟友蝶野の要請に応えてみせたのだ。ここに橋本の男気を感じずにいられない。



移動中の蝶野に猪木からの電話が鳴る。
猪木「蝶野、やりたいようにやれよ!」
蝶野「…」

ピッ(電話を切る)

蝶野「……好きにやらせてもらうよ。」
※闘魂記念日番宣にて


余談だが、どうやら前年から新日本のマッチメイクは長州永島のワンマン体制から合議制のトロイカ体制と移っており、ここにポンっと蝶野が据えられたことで現場はますます混乱をきたし、何が闘魂なのかわからない全く統一性のないカード編成となっていた。例を出すと、オープニングマッチが全日本女子プロレスの提供マッチ、アンダーカードは中西学対バス・ルッテンと安田忠夫対ドン・フライのプロ格路線かと思えば、スタイナーブラザーズ対佐々木健介、棚橋弘至で、レフリーは元WWFのチャイナ、とわけがわからない。

さて橋本の試合は?というと、お馴染みとなったOH砲の新日本逆上陸と相成った。迎え撃つは天山広吉、スコット・ノートン組。駆け引きなしの真っ向勝負である。
※レフリーは山本小鉄!

内容はテレビ中継の放送出鼻ともあり、両チームとも思い切りのいい展開で流れていきケレン味のない好試合となった。結果的にはOH砲が合体技狩龍怒、俺ごと狩れを炸裂させ勝利をものにしたが、見逃せなかったのは橋本が3カウントを奪った直後の憔悴した表情。

このしんどそうな橋本から何がみてとれたのか。

たぶん新日時代に当たり前のようにぶつかり合っていた天山、ノートンを相手にしたことで逆に2002年の現時点で己の体力が下り坂にあることを自覚してしまったのでは?と、そう勘ぐってしまうのは考えすぎか…


もうひとつ記しておきたい。

やはり三銃士はドームがよく似合う。武藤はこの場にいなかったが、橋本、蝶野と平成初期からドーム大会(闘強導夢)に上がり続けている男達は身に纏うオーラが違う。本当に違う!

ケロちゃんのコールを受けてテーマ曲が鳴り、入場ゲートからのお披露目からリングに上がるまで、ここまでで一枚の絵を描けるレスラーはそういないはず。
この写真は94年の1.4


と三銃士ばかり絶賛してしまったが、この日は恩讐渦巻くOH砲やかつてのライバル団体のエース参戦、はたまた倍賞美津子(元妻)のサプライズ登場を笑顔で迎えてみせたアントニオ猪木のおおらかさも知ってもらいたい。

この猪木のおおらかさが、時として新日に混沌を巻き起こすことになるのだが、この日以降は、もはや猪木ひとりの問題ではなく、マット界全体が一気に地盤沈下の様相を見せていくことになる。

90年代のような天井知らずの良い時代は終わりを告げた。ゼロ年代はこれからますます混沌へ突き進んでいくことになるが、橋本真也率いるゼロワンはここへきて時代に逆行していく荒技を敢行する。温故知新、新日、K-1、PRIDEらが都市集中型ならば、小回りが利くゼロワンは地方の熱を蘇らせることから着手したのだ。

先に述べた猪木のおおらかさ、そしていいかげんさ、無頓着さを地で引き継いでいた橋本のゼロワンはかつてないほど開放感溢れる団体になっていたのだ。※小川曰くこだわりのない団体だったという。

プレデター、ハワード、デンプシーを迎え撃つゼロワン本隊with小川、すなわち日本人対外国人路線がゼロワンの本流だったが、再びあの空手家が破壊王に牙を剥く!


続く