35.取れた | 脂肪肉腫との戦い

脂肪肉腫との戦い

2015年8月14日に腹腔内の巨大脂肪肉腫の摘出手術を受けました。
その後、2016年9月、2017年11月、2019年9月、2020年9月、2021年6月、2021年10月、再発手術を受けました。
私にとってまさに戦いです。
これまでの経過を綴っています。

麻酔から覚めました。私にとって手術時間は1秒ほどです。そしてまたあの激痛が襲ってきます。4月の開腹生検の時の比ではありません。
傷口は縦34センチ、横14センチ。腹部全体が訳の分からない状態です。堀君の声が聞こえてきます。彼も手術に立ち会ってくれました。
「終わったよ。腫瘍は全部取れた。腸は切らずに済んだ。左の腎臓は残念ならが取ったよ。よく頑張った。」
意識は混濁しています。思考力も落ちています。とにかく終わったこと、そして結果は良好なことは理解できました。
私は集中治療室のベッドに横たわっています。全く身動きができません。しばらくして家族も来てくれました。眼鏡がないとほとんど表情は分かりませんが、みんなほっとした感じでした。長時間手術が終わるのを待っていてくれたに違いありません。お疲れ様でした。まずはみんなで一つの山を乗り越えたのです。
最も大きな時で腹囲100センチもあったお腹はぺっちゃんこです。ほとんど感覚はありませんが両手で触るとそれが分かります。取れたんだ。実感しました。
しかし、ここから本当の苦しみが待っていました。
まず、身体が冷え切っていたので寒くて仕方がありません。全身ゾクゾクして震えが止まりません。電気毛布で温めてもらいましたがなかなか温まりません。震えて疲れてしまうほどです。
身体は管だらけです。上から、右の鼻の穴、首の右側、左右の腕、腹部の右と左、尿道の合計7本の管に繋がっています。さらに手術中の出血が激しかったことから、右脚の付け根からもう1本管を追加してすぐに輸血が始まりました。全部で8本の管に繋がれています。
また、膝から下の両脚にマッサージチェアにあるような圧力をかける風船のようなものが巻き付けられており、2,3分おきにそれが自動的に膨れ脚に圧力がかかります。これは血栓が脚にできるのを防ぐための道具です。
この日は、取り敢えず容態が落ち着いてきたので、家族はみな安堵し帰りました。
この状態で夜を迎えましたが、眠れるはずもなく動けない苦しみそして襲い来る激痛と戦っていました。鎮痛剤を投入しても少し痛みが引くだけでしばらくするとまた襲ってきます。2種類の鎮痛剤を交互に打ち続けます。
幻聴が聞こえてきます。なぜか右の耳にだけ聞こえます。不思議な単調なメロディーです。初めて聞くどこかの民族音楽のようです。
眠りに着けるよう睡眠導入剤を投与してもらい、少しうとうとして夢を見ました。痛みにうなされる夢です。釣り針が、それも大物を釣り上げるための鉛筆の太さくらいある釣り針が、百本くらい腹部に刺さっています。そして、物凄い勢いで自分がその釣り針で釣り上げられます。激痛が全身に走ります。そして、目が覚めてそれが現実の痛みでありことが分かります。
手術1日目はこんな感じで激痛との戦いでした。今考えても恐ろしくなります。

下の写真は、摘出した脂肪肉腫です。
心臓が弱いかたは見ない方がいいです。
さらに下の写真は、脂肪肉腫とともに摘出した腎臓です。スケールがその大きさを物語っています。