おびクリニュース2024年10月号を転載いたします。
Q.認知症の母にカッとなって暴言を吐いてしまいました。良い介護はどうすればできるでしょうか?
A.この間まで元気であった親が、高齢になって物忘れが多くなると、コミュニケーションに苛立ちを覚えることが増えます。
「言った、言わない」論争が多発します。
元気であった頃の親を知っているからこそ、苛立ちが倍増するという面があります。
認知症だから仕方がないとわかっていても、時に激しい言葉で罵ってしまい、あとで自己嫌悪に陥るという場面は、誰もが必ず経験することでしょう。
私は内科の臨床医として様々な家族の在り様に触れてきましたが、介護に綺麗ごとは通用しないという持論を持っています。
ですから、カッとなって親に暴言を吐いてしまったご自分をあまり厳しく責めないで頂きたいと思います。
なぜ、こういう事があちらこちらで発生しているのかと考えると、人類の平均寿命が伸び、高齢者と若者が長く一緒に暮らす時代=未知の領域を生きているからだと思います。
人類にとって初めての経験です。
おそらく30年後には高校の授業に介護という科目が新設されるでしょう。
なぜなら、介護の担い手である、介護士さん、ヘルパーさんの待遇が良いとは言えず、担い手がどんどん減っており、家族が介護する割合が増える可能性が高いからです。
その背景として介護保険制度成立の理念である「介護を受ける方、介護をする方、双方の負担を軽くする」という理想が雲散霧消し、介護の名目で保険料を国民から集め、特定天下り法人や裏金献金事業者を潤わせるための、集金・分配システムに置き換わってしまったからです。
長期政権の弊害です。
当初は崇高な目的で導入されたはずの、消費税も復興特別税も10年も経過すると、特定の人達に都合の良い集金・分配システムに変わってしまいました。
長期政権=権力の固定化は、支配層の方たちが潤うだけで、現場の介護士さんやヘルパーさんの処遇は改善しないので、外国人労働者も増えず、いずれ家族で介護するしかないという、逆戻り現象が起こる恐れがあると考えています。
その日に備えてではありませんが、早めに認知症の家族との接し方を学んでおくことは後々役に立つでしょう。
冒頭の質問へのアドバイスとして、認知症の方との会話は、「言葉ではなく口笛が聞こえているだけ」と考えて接してください。
普通の会話で「298円の卵一パックください。高くなったわね~」と言えば、10個入りの卵一パックが画像としてイメージされます。
認知症の方は言葉を聞いても画像がイメージできず、「卵一パックってなんだろう?」と思っています。
同じく「298円」と言われても硬貨なのか、食べ物か区別がつかなくなっています。
したがって、お互いに口笛を吹いて、それを聞いただけと解釈し、言葉に意味を持たせないことがコツです。
良い意味で「適当に相槌をうつ対応」がよいです。
そうすれば、カッとなることは減ります。
根底にある考え方は、「理想の介護は脇に置いて、笑顔を増やす介護を目指す」です。
介護される方が笑顔になると、介護する方も笑顔になります。
赤ちゃんが笑ってくれるから、子育てが楽しくなることに似ています。
とは言っても、介護は綺麗ごとではありませんので、時には自己嫌悪することもあるでしょう。
でも、安心してください。
親子だから、最後はお互いを許しあえる日が来ます。
親に怒鳴り散らした後、親が「迷惑をかけて悪かったね」としょんぼりしたのを見て、「私もいい過ぎた。ごめんなさい」と涙声になって、お互いの顔を見ているうちに、優しい気持ちに戻っていきます。
親子だからこそ、本音でぶつかり合えます。
教科書では学べない介護の実地教育です。
何か起きたとしても、親子で介護について学んだと解釈して前向きに捉えてください。
最後までお読みいただきありがとうございました![]()