酔っ払った大人はカッコ悪い…全世代で進む「アルコール離れ」にアサヒビールが始めた新戦略。 | ★マエちゃん噴泉記★【大阪DE農業】

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アサヒビールのノンアルコール飲料「アサヒ ドライゼロ」が好調だ。健康意識の高まりからノンアルコールビールテイスト飲料市場が拡大する中、同商品は6年連続売り上げ1位となっている。なぜ支持を集めているのか。経済ジャーナリストの高井尚之さんがリポートする――。

コロナ禍で売り上げが伸びた「ノンアルコール飲料」市場

2020年から続くコロナ禍も3年目。この間に起きた「在宅勤務の定着」「飲食店での酒類提供制限」で伸びた飲料がある。「ノンアルコール飲料」だ。

 

ノンアルコール飲料は、日本では「アルコール分が1%未満の飲料」とされる。酒税法でアルコール分1%以上の飲料が酒類と定義されているためだ。ただし、業界自主基準により通常はアルコール分0.00%の飲料を指す。

 

近年はビール大手各社が積極的に商品開発をしており、ビール風味、チューハイ風味といった“アルコール分0.00%”の商品が店頭にずらりと並ぶ。繰り返し発令された「飲食店での酒類提供制限」では、酒類の代わりにお客に提供された。現在、注目の市場なのだ。

 

今回はその中で、ビール風味の「アサヒ ドライゼロ」(アサヒビール)に焦点を当ててみた。缶の商品パッケージは同社の看板ブランドに似ており、以前の缶には「目指したのは、最もビールに近い味」の文字もあった。今年4月からはテレビCMもスタートしている。

 

なぜ、ビール会社がノンアルに注力するのか。ブランドの責任者に取材しながら考えた。

「在宅時間が増えて運動不足」が追い風に

「ビール類市場を『100』とすると、ノンアル市場は『5』程度。まだまだ小さいですが近年の伸び率は高く、業界誌などの推定によると、2021年はノンアルビール全体で前年比約111%となっています。海外でも成長が続いており、将来的にも有望な市場といえます」

 

ブランドマネージャーの吉岡孝太さん(アサヒビール マーケティング本部 新価値創造推進部 担当課長)はこう説明する。

 

「その中で、2021年の『アサヒ ドライゼロ』は前年比113%で、市場全体よりもさらに伸びています。ノンアルコールビールテイスト飲料市場(※)では6年連続売り上げ首位です。ドライゼロはビールらしい味わいが好評ですが、ノンアル市場全体が伸びた最も大きな理由は、健康意識の高まりです。

 

社会人の場合、コロナ前に比べて出社日数も少なくなり、在宅勤務が増えました。得意先への訪問や出張も制限されるなど運動不足になりがちです。自宅でお酒を飲む機会が増えた人も、時にはノンアルに変えて調整したいなど、健康志向が追い風となりました」

 

この2年で“コロナ太り”した人もおり、健康意識がより強まったのだろう。

 

※インテージSRI+ノンアルコールビールテイスト飲料市場 2016年1月~2021年12月 累計販売金額 7業態(SM・CVS・酒DS・一般酒店・業務用酒店・DRUG・ホームセンター)計

試行錯誤の末、ビールの味にかなり近くなった

昨年、競合他社に取材してこんな話を聞いた。各社の共通認識のようだ。

 

「かつては、ビールが飲めないときの代替品という位置づけでしたが、今は消費者から積極的に選ばれます。味も進化してビールの味に近づいています」

 

この春「アサヒ ドライゼロ」はリニューアルを実施した。吉岡さんはこう説明する。

 

「原材料の配合を見直し、より麦の香りや飲みごたえ、のどごし、キレを強化しました。ビール特有の“発酵由来の複雑な香気成分”を再現するため、通常のビールからアルコール分を除去した際に、アルコールと共に喪失してしまう香気成分について、香料会社と共同で研究・開発し、ビール感を高めたのです」

 

味の好みは、人によって分かれるが、周囲の仕事関係者に話を聞くと、「ドライゼロが一番ビールっぽい」という愛飲家が多い。

 

同ブランドが発売されたのは2012年、今年で10周年を迎えた。その前身となる商品にも関わってきた吉岡さんにとって、10年という歳月は感慨深いようだ。

 

「おいしさは進化しましたが、お客様の嗜好(しこう)もどんどん進化します。ブランドが掲げる『目指したのは、最もビールに近い味』にはゴールがないと思っています」