野菜が育った場所でそのまま買えたら――。そんな願いをかなえる産地直売がスーパーマーケットの店内で始まっている。東京都足立区のサミットストア五反野店では、野菜の陳列棚と並ぶ水耕栽培の装置内で野菜が青々と育ち、その前で売られている。
手がけるのは、欧米を中心に水耕栽培の事業を展開するオランダの会社「インファーム」の日本法人。2021年1月からこれまで都内7店舗に装置を導入し、都内の工場で育てたイタリアンバジルやパクチーなどの苗を植えて栽培。農薬は使わず、LEDの光と肥料入りの水で約3週間育て、収穫・販売する。スーパー店内で栽培することで、輸送に伴うエネルギー消費や温室効果ガス発生、廃棄ロスを削減。天候不順や自然災害のリスクが少ないため、販売価格も一定だ。同社広報担当の大木ひかるさん(30)は「環境負荷が少ない食料生産や消費を志向する価値観を育むきっかけになれば」と意気込む。
栽培中は、センサーやカメラを通して得られた生育状況をクラウドで海外の本部とも共有。遠隔で24時間生育管理しながら、国内の社員が週2回、収穫や苗の追加などをする。柴田泰弘店長(50)は「育ってゆく様子や収穫作業が見えるので子どもが興味を持ってくれ、単に数字だけではない効果もあってうれしい」と話す。【吉田航太】