変わりダネの自動販売機が、愛媛県松山市内に続々と登場している。温泉で焼き芋が買えたり、コインランドリーでギョーザが買えたり。こだわりのもつ鍋を並ばずに買える自販機もある。人と顔を合わせずにいつでも買える気軽さからか、人気を集めているようだ。(照井琢見)
松山市中野町の温浴施設「南道後温泉ていれぎの湯」の入り口に置かれた自販機。お金を入れてボタンを押すと、銀色の缶が出てくる。
缶を開けると、真空パックに入った焼き芋が顔を出す。通常サイズは190グラムで500円。少なめ(110グラム、400円)もある。焼き芋を缶に封入する作業は、市内の障害者就労支援事業所が担う。
熱々の南九州産「紅はるか」は蜜が多くてやわらかく、一口ほお張れば口溶けなめらか。まるで“飲み物”のようなのどごしだ。
8月下旬に設置して1カ月で約1700個が売れ、いまも連日、品薄が続いている。小腹をすかせた湯上がり客が、冷たい牛乳と一緒に買って食べるという。
ていれぎの湯の副支配人・上岡志保さん(41)のおすすめは、自販機で選べる「冷たい」焼き芋。「フォークで切れるやわらかさ。とろっとしたスイーツを味わった気分になれます」
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松山市南斎院町のコインランドリー「ランドリーワークス南斎院店」では、洗濯機や乾燥機の横で、冷凍ギョーザの自販機が異彩を放っている。「餃子(ギョーザ)のヒーロー」と名付けたギョーザは30個入りで1100円。
店を経営する門田商店の門田新平社長(39)はコロナ禍、スーパーで品薄になった冷凍食品に着目した。人の目に触れやすく、監視カメラもあるコインランドリーで、冷凍ギョーザを売ったらどうだろう――。
ギョーザは二番町1丁目の居酒屋「旬彩あさつき」と共同開発。豚肉は「ふれ愛・媛ポーク」、ニンニクは四国カルスト産「ホワイト六片」を使い、「地産地消」にこだわった。9月末に稼働させたところ、今では、洗濯ではなく、ギョーザ目当てに店を訪れる人もいるほどの人気ぶり。
「味には自信があったけど、期待を上回る売れ行き」と門田社長。水ギョーザにして食べるのがおすすめだそうだ。
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松山市道後樋又の牛もつ鍋専門店「まるしょう」の店先に9月28日、「もつ鍋冷凍自動販売機」がお目見えした。買えるのは凍らせたもつ鍋の具材。保冷バッグの中に黒毛和牛のもつ、4種類のしょうゆをブレンドしたスープ、ニンニク、トウガラシが入っている。
店内で頼めるのは2人前からだが、自販機の具は1・5人前(1200円)。お一人様にもぴったりの量だ。冷凍に向かないニラやキャベツは自分で用意する必要があるが、多い日は1日300セット以上が売れ、夕方には完売することもある。
もともと店内で売っていたテイクアウト用の具が人気で、自販機での24時間販売に踏み切った。代表取締役の下窪一司さん(36)は「人件費をかけずに色々な生活リズムの人に買ってもらえる。お客様の幅が広がりました」。店の営業は午後のみだが、自販機の売り上げは午前中も好調だという。