「北京冬季ボイコット論が補強される」
新型コロナウイルスの起源解明へ大きく進展する可能性が出てきた。中国の武漢ウイルス研究所が扱っていた膨大なデータを米情報機関が入手、解析を進めていると報じられた。コロナ禍で行われた東京五輪の閉幕後は、習近平政権が国威発揚の一大イベントと位置づける2022年北京冬季五輪が議論の中心となるが、香港や新疆ウイグル自治区の人権問題によるボイコット論に続き、ウイルス拡散の責任論も改めて強まりそうだ。
◇
情報機関は、武漢のウイルス研究所が扱っていたウイルスのサンプルの遺伝子情報を含むデータを入手したとみられる。入手方法や時期は明らかになっていないが、CNNテレビは、ウイルスの遺伝子情報を解析する機器は通常、外部サーバーとつながっていることが多いことなどから、ハッキングで得た可能性があるとした。
武漢ウイルス研究所をめぐっては、世界保健機関(WHO)の調査団が今年になって入ったが、まともな成果は得られなかった。
中国がデータの提供を拒否する中、バイデン政権は5月下旬、新型コロナウイルスについて研究所からの流出説と動物を介した感染説があるとして、追加調査の上で「90日以内」に結果を報告するよう情報機関に指示した。結果の公表期限が今月24日だ。
2日には、米下院外交委員会ナンバー2で共和党のマイケル・マコール議員が報告書を公表した。2019年9月と10月の衛星写真で武漢ウイルス研究所周辺の病院に集まる人が急増している様子や、同年9月12日深夜に研究所のウイルスデータベースが突然削除されたことなどを指摘しており、初症例を「19年12月」とする中国の見解と食い違う。
中国外務省の報道官は「でっち上げの嘘とゆがめられた事実に基づいており、証拠も出せていない。全く信頼性がない」と非難した。
米国政治に詳しい福井県立大の島田洋一教授は「マコール議員の報告書の資料も同様に研究所から出たものにみえる。情報機関内部でも起源をめぐって内部で意見の食い違いがあるようだが、米政府の調査結果も最終的には政治判断の側面が強くなるだろう」とみる。
6月にはドナルド・トランプ前大統領が南部ノースカロライナ州で開かれた共和党の集会で、中国のウイルス流出の責任を追及、10兆ドル(約1110兆円)の賠償請求を主張した。
米国内では与野党の支持を問わず、反中感情が醸成されている。米政治ニュースサイト「ポリティコ」とハーバード大学が7月に行った世論調査では、武漢の研究所から流出したと思うと回答したのは52%だった。米シンクタンク「ピュー・リサーチ・センター」の4~5月の世論調査では、中国政府が発信するコロナ情報の信憑(しんぴょう)性について「全く信用できない」が49%、「あまり信用できない」が35%で計84%が否定的だ。
前出の島田氏は「仮にバイデン政権が武漢起源に消極的またはあいまいな発表をしても、米国を挙げての中国攻撃の姿勢は変わらないだろう。共和党には研究所の上部団体である中国科学院や出入り業者まで制裁対象にすべきだとの意見や、調査への非協力を理由に、国際法上の『主権免除の原則』を適用せず、損害賠償請求を主張する強硬派もいる」と指摘する。
中国共産党は7月に創建100周年を迎え、3期目を目指す習国家主席(党総書記)にとって、北京五輪の開催は中国の国力を国際社会にみせつける晴れ舞台となるはずだった。
だが、香港やウイグルの人権状況改善を求めて、欧州議会や英米で「外交的ボイコット」を決議を打ち出す国が出てきたほか、米議会超党派が五輪の有力スポンサーの営利優先を非難するなど、風当たりは日増しに強まっている。
さらに世界で2億人が感染、427万人が死亡したウイルスの起源と立証されれば大きな痛手となる。
評論家の石平氏は「ウイルスの流出は意図的ではなくとも、公表遅れやデータ隠蔽が確認されれば、賠償請求や制裁につながりかねず、五輪ボイコット論もさらに補強されることになるだろう。米中対立のレベルを超え、『世界vs中国』の構図になってもおかしくない」との見方を示した。
○ワタシ想います。
もし、武漢が発症元なら、世界は彼を許さない。
北京冬季五輪ボイコットで済む話ではない。