水の惑星、地球。しかし地球上の水がお風呂一杯分の水だと
仮定すると、私たちが使える水はほんの一滴ほどだといわれている。
そして、そのわずかな水の事情も、近年の人口増加や気候変動と
あいまって、悪化しつつある。どうやら増加の一途をたどる水の需要に
供給は追いつかないようだ。
このたびカナダ・ウォーター・ネットワーク(CWN)は、「3月22日・
世界水の日」に先がけ、オタワで国際会議を主催した。会議には、
各国の政策担当者、科学者、経済学者、総勢300名もの人たちが出席。
世界の水問題について協議した。そこでは、現状のままでは
今後20年以内で、世界の水需要が供給を40パーセント上回る
見通しを、科学者たちは指摘している。
その場合、次のような事態が予想される。まず、世界の人口の1/3が、
日々の生活で必要となる水の半分程度しか得られないこととなる。
そうなると、安全な飲み水を確保できない人たちは、やむなく不衛生な
水源を利用するしかない。それにより、多くの人々が病気に感染し
死亡することになるのだ。
実は、不衛生な水が原因で死亡する人は、戦争などのあらゆる暴力で
死亡する人よりも多いと、昨年パン・キムン国連事務総長は公式の
場で述べている。実際、途上国では不衛生な水しか得られないため、
毎日6000人もの子どもたちが死亡しているのだ。
さらに、世界の水使用量の内訳は、ざっと生活用水が1割、
工業用水が2割、そして残り7割が農業用水だ。農産物を生産する
ためには多くの水が必要なのだ。増え続ける世界人口を支えるため
食糧をさらに増産させなくてはならない中、水不足は食糧生産に
いっそう深刻な影響を与える。水不足、食糧不足、そして環境難民や
死者の発生、これらの事態が深刻化すれば国際社会は不安定になり、
紛争の要因ともなりやすいだろう。
では、需要が供給を40パーセント上回るのに対し、どう解決したら
よいのだろうか。会議ではその解決方法が話し合われた。
予想される需給ギャップを埋め合わせるのに、供給を増やすことだけで
対応すると、毎年1240億ポンド(16兆1200億円)必要となる見込みだ。
しかし、供給を増やすこととあわせて、需要の伸びを減らすことにより
対応すると、310億~370億ポンド(4兆300億~4兆8100億円)まで
切り詰められそうとのこと。つまり、供給を大幅に上回らないよう需要を
抑えることが、低コストで問題を解決する方法となるのだ。
需要を抑える方法として、米環境保護庁のニコラス・アッシュボルト
博士は、先進国の各家庭における水需要を減らすことを提唱している。
博士はその例として、「乾燥堆肥トイレ」や「路上雨水吸収装置」などの
導入を挙げている。家庭でもっとも水使用量の多いトイレでの水を農業に
転用し、そして雨水を積極的に利用するようにすることで、家庭からの
水需要は最大70パーセント削減できるようだ。「これらの装置は、
人口が密集する都市部でも簡単に利用できます」と博士はいう。
また、国際環境技術コンサルタント「クリーンテック・グループ」の
会長ニコラス・パーカー氏は、莫大な量の「仮想水」に焦点を当てて
いる。仮想水とは、生産過程で必要とされる水の量のこと。
デスクトップ・コンピュータに1500リットル、ジーンズ1着に6000リットル、
鶏肉1キロに4000リットル、そして牛肉1キロに30000リットル、
それぞれの生産に必要とされるが、これらの水が仮想水といわれる
ものだ。
パーカー氏のアイデアは、仮想水を多く使う財の消費を減らすことで
水の需要を減らそうというものだ。牛肉1キロに30000リットルの仮想水が
必要だが、鶏肉なら4000リットル。だから、牛肉の代わりに鶏肉を
食べるようにすると、水を節約できる計算になるのである。こうして、
仮想水の少ない代替財を消費することにより、水需要を抑えられると
パーカー氏は主張している。 ロケットニュース24
参照元:DailyMail (英文)

