どうしても我慢できなかったんだ
潤を引き寄せ抱きしめていた
潤も嫌がらず抱きしめられていたけど、どう思ったのだろう
タクシーから降りてマンショに向かう後ろ姿をずっと見ていた
自宅マンションに戻るとあかりが付いていて彼女が来ているみたいだ
今日は約束をしていないはずなのに
鍵を開けリビングに入るとソファーで本を読んでいた
「おかえりなさい、今日は遅かったんですね」
「今日会うって約束しましたっけ?」
「いえ、何となく会いたくなってきたのですが迷惑でしたか?」
「いや、電話1本してくれたら良かったのに」
「それではサプライズになりませんから」
そう言って俺が脱いだジャケットをクローゼットに片付けに行った
「疲れてるようなので、また後日に伺います」
「えっ、帰るの?」
「今日は車で来たので帰ります」
そう言って帰って行った
なんなんだ
訳が分からず玄関を眺めていたが
マサかなぁ俺が浮気でもしてるのかと疑ってるのか
はっと思いクローゼットのジャケットに鼻を寄せるとうっすらと潤の残り香がした
あれから2週間が過ぎた
仕事が忙しくなかなかか医務室にも顔を出せず潤の顔を見ることも出来なかった、そして彼女とも会っていない
一日の仕事が終わって会社を出たのが20時過ぎ、入口付近で先生に会った
「櫻井さんお疲れ様です、今終わりですか?」
「はいっ!先生は?」
「あー僕は医務室に書類を忘れましてね、取りに来たところです、どうです予定がなければ1杯何処かで奢らせてください」
「ありがとうございます、では車を回しますのでここでお待ちください」
先生を乗せて近くのイタリアンレストランに入った
「この前は潤くんがご馳走になったみたいでありがとうございました」
「えっ?!いえいえ松本さんとたまたま会いまして帰り1人で食事するのもつまらないので声を掛けさせてもらったんです」
「そうですか、食事に行ってきたと話すだけだったので」
「そうでしたか、先生は何処に出張だったんですか?」
「出張と言っても金沢で、泊まり予定だったんですがその日に仕事が早く終わったので最終便に飛び乗って帰ってきたんですよ」
あの晩もう家に帰ってきてたのか?
色々気になって聞きたいところだがやめておこう
それから当たり障りのない話をして車は店に置いてタクシーを2台お願いした
流石に一緒に乗って帰る気にはなれなかった
「潤くんが世話になったね、昔のことを思い出させないで欲しい」
と言い
タクシーに乗り込み帰って行った