会議で話そうとすると、言葉が出てこない。 自分なりに調べて、理解していたはずなのに、話しているうちに何を言いたいのかがわからなくなる。
そんな経験がある人は少なくない。 だが、それは決して「頭が悪いから」ではない。
現場には、アウトプットよりも早く理解を求められる空気がある。 「わかっているのか」「説明できるのか」「すぐ答えられるのか」。 こうした圧力は、ゆっくり構造を組み立てるタイプの人にとっては厳しい。
特に視覚優位型──頭の中に図や映像で記憶するタイプ──の人にとって、口頭での瞬発的な会話は得意でないことが多い。 彼らの脳内には構造がある。 ただ、それを言葉にする変換がうまくいかないだけだ。
さらに、仕事で扱う内容が複雑であるほど、情報の前提や依存関係、処理フローなどを頭の中で一度「展開」しないと、適切に言語化できない。 そのプロセスには時間がかかる。 時間がない場面では、言葉が途切れるのも当然だ。
会話で詰まるとき、自分を責めるのではなく、 「これは処理速度の問題だ」と割り切ることが必要だ。
瞬発力よりも、構造理解に強みを持つ人もいる。 アウトプットは遅くても、精度が高い。 その価値は、対話の場面では見えにくいだけだ。
私たちは「話すのがうまい人=頭がいい人」という誤解にさらされやすい。 だが、実際には話せない人の中に、深く構造を捉えている人がいる。
会話がうまくいかない日は、黙っていてもいい。 そのかわり、時間のあるときに文書で書き出してみよう。
理解は、声ではなく、思考の手ざわりとして確かにそこにある。
話せなくても、あなたの頭はちゃんと動いている。