プロジェクトの現場には、「見積もれない仕事」が確かに存在する。
たとえば、不具合調査。
どこに原因があるのか、どこまで調べれば終わりなのか、やってみるまでわからない。
一見シンプルな作業に見えても、過去のデータや仕様の変遷、関係部署の意図など、いくつもの層が絡んでいる。
調べるほどに深くなる、出口の見えない仕事がある。
見積もれない仕事に向き合うには、まず「正確さへの執着」を捨てる必要がある。
どれだけ詳細に計画しても、その通りには進まない。
それは見積もりが甘いのではなく、そもそも構造的に予測不能なのだ。
だから、見積もりとは「精度」ではなく「仮置き」だと割り切る。
「○時間で終わる」と断言するのではなく、「この時間でどこまで進めるか」を決める。
次に大切なのは、「進めながら可視化する」技術だ。
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何を調べたか
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どこで行き止まりになったか
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何が分からないまま残っているか
これらをメモや図にして共有すれば、上司や関係者も現状を把握しやすくなる。
「まだ終わっていない」のではなく、「ここまで進んでいる」が伝えられるようになる。
また、「相談のタイミング」も重要だ。
行き詰まったときに、ただ「分かりません」と伝えるだけでは、助けを得るのは難しい。
必要なのは、「ここまでやったが、ここから先は判断がつかない」と説明すること。
相談とは、丸投げではなく“構造を渡す”ことだ。
見積もれない仕事に向き合うというのは、
不確実性の中で自分の立ち位置を保ち、
周囲にその風景を見せる技術でもある。
「まだ終わっていない」は、責められる言葉ではない。
「いまここまで来た」と伝えられるなら、それは十分に前進だ。