会話になると、うまく話せない。
頭では理解しているのに、言葉にしようとすると、どこかが抜け落ちる。
そんな感覚を持つ人がいる。
それは、理解や記憶のスタイルが「視覚」に偏っているからかもしれない。
たとえば、図や表を見れば一瞬でわかるのに、文章で説明されると頭に入ってこない。
マニュアルを読むよりも、画面を実際に操作してみたほうが覚えやすい。
プロジェクトの構造やシステムの流れも、全体像を絵として描けばすっと頭に残る──
こうした傾向のある人は、「視覚優位型」とも呼ばれる。
記憶や理解を、文章よりもイメージや空間の構造で処理しているのだ。
だが、現場の多くは「言葉で動く」。
業務のやりとりは、Slackやメールの文章。
会議は、言葉のやりとりの積み重ね。
進捗報告やトラブル共有、タスク指示──いずれも言語情報が基本になる。
このギャップが、「知っているのに、うまく話せない」という感覚を生む。
たとえば、頭の中ではフローチャートのように整理できているのに、それを順序立てて言語化しようとすると、どこから話していいか分からなくなる。
イメージで保持している知識を、線形の言葉に変換する作業が、認知的に重い。
それが、沈黙やしどろもどろを生む。
視覚で記憶する人にとって重要なのは、外部の「補助線」を作ることだ。
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話すときに紙に図を描きながら説明する
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箇条書きメモを手元に用意して話す
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頭の中の構造を「見える形」に一度落とし込んでから話す
このように、視覚→言語の変換を支える補助具を使うことで、会話はスムーズになる。
一方で、周囲の理解も必要だ。
「言い方が下手=理解していない」と誤解されやすいのが、視覚記憶タイプの弱点でもある。
だが、図を描けば伝わる人もいれば、言葉で話しても伝わらない人もいる。
コミュニケーションのスタイルに多様性があることを、職場全体で意識しておく必要がある。
視覚で記憶する頭を持つ人は、実は全体構造に強く、理解が深いことも多い。
ただ、それを言葉にするのが苦手なだけだ。
そのギャップをどう埋めるか。
視覚でつかんだものを、他人と共有するための手段を、ひとつずつ工夫していく。
それが、自分らしく働くための小さな戦略になる。