過ちを正しつつ許して未来へ進む:ウルトラマンブレーザー | “迷い”と“願い”の街角で

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確固たる理想や深い信念があるわけではない。ひとかけらの“願い”をかなえるために、今出来ることを探して。

ウルトラシリーズ最新作のウルトラマンブレーザーが最終回を迎えました。
かつては1年間だった放送期間が今は半年になったようですが、その分クオリティの高いものができているように感じます。

そして、この最終回には、本当に考えさせられるものがありました。
以降で物語の核心部分に触れますので、ご注意ください。

これまで複数の宇宙怪獣を地球に送り込んできた存在V99が、最強の怪獣を送り込むとともに、自らも宇宙船団を編成して飛来します。
V99の正体や目的を探る防衛チームの一員アオベエミでしたが、既に引退した防衛組織の元長官ドバシユウに妨害され、拘束されてしまいます。
V99との全面戦争が迫る中、救出されたアオベエミは、たどり着いた真実をドバシユウに突きつけます。

1999年に地球に飛来した隕石を防衛組織が破壊したとされていましたが、それは隕石ではなく、異星人の乗る宇宙船で、それこそがV99でした。
その撃墜を命じたのは当時の長官であったドバシユウでしたが、調査の結果、宇宙船に武器はなく、侵略の意図はなかったことが判明、ドバシユウはその事実を隠蔽していました。
V99は、移動中に正当な理由なく同胞を撃墜した地球を危険視し、宇宙怪獣を送り込んでいたのです。

アオベエミは、V99に対して、地球側に攻撃の意思がないことを伝えることを提案、一蹴するドバシユウでしたが、アオベエミはドバシユウに言います。
「あなたはやるべきことをやったのだと思います。だから今度は、私達にやるべきことをやらせてください」

地球側の意思はV99に通じ、船団は撤退。ウルトラマンブレーザーと防衛チームは、残された最後の宇宙怪獣との決戦に挑みます。
全てが終わったとき、ドバシユウはアオベエミに「あとは任せるよ」と言い残して去っていきました。

地球を守るために宇宙船の撃墜を決めたドバシユウ、しかし、結果的にその行為は、何の罪もない異星人の命を奪うとともに、地球を危険に晒すことになりました。
ドバシユウは、その罪悪感と恐怖に苦しみ続けていたのではないでしょうか。
隠蔽を続けた際の冷淡、傲慢、戦争が迫る中の焦燥、嘲笑、そして、危機が去った後の穏やかさ、自分を責め続けたドバシユウは、アオベエミによって許され、救われたように思います。
(なお、ドバシユウを演じたのは寺田農さん、悪人も善人も演じこなすベテラン俳優こその演技と感服するほかはありません。)

自らの過ちを隠し、正当化するために新たな過ちを犯す一方で、他人の過ちを徹底的に責めて傷つける。
そのような光景が溢れかえる世の中で、過ちを正しつつも、それを許し、それを踏まえて正しい道を切り開こうとする姿勢は、奇麗な理想論かもしれませんが、作り手の強いメッセージと感じます。
アオベエミがV99の説得のために最後に送ったメッセージは「未来」でした。

(追伸)
昨年最後の想い出。仕事で訪れた宇都宮、3年ぶりの訪問でした。