主治医から、
【年内はもたない】 と聞かされたその日、
私は仕事で居残り当番で、退勤が夜の8時半になった。
いつもは、お昼の12時と夕方の6時の母のご飯時に合わせて母の病室へ行く。
その日も6時のご飯時に行って、母に全然食べないご飯を促し、
薬を飲ませ、歯磨きティッシュをして、
『また明日な』
と別れていたけど、
職場を跡にする前に、こっそり病室へ行き母に会いに行った。
6時に来た時とは違い、暗い母の病室へ入ると、
母がすぐさまこちらを向いて、
母 『にょろちゃん・・・紙と鉛筆持ってきてぇ・・・』
にょろ 『えっ なんで 何するん 』
母はうわぁ~んと泣き出して、
母 『あんたになぁ、感謝の気持ちを書きたいねん・・・・・』
にょろ 『そんなん、書かんでも伝わってるやん』
母 『あんたにどれだけ感謝してるか・・ おかーちゃん、それを全部伝えられへんから、紙に書くねん』
にょろ 『いいってー。 大丈夫。 充分伝わってる。』
母 『あんたにいっぱいおかーちゃんしてもらって、あんたになんでもしもらって、全部あんたにさせてもーて、おかーちゃんあんたにどれだけ感謝してるか・・・・おかーちゃん、恩返しがしたいけど、なんにもできひん ごめんなぁーー』
にょろ 『何言うてんのん。 感謝しなアカンのは私の方や。 おかーちゃんはいーっぱい私にしてくれたやん。 ほんまに感謝してるで。 ありがとうな。』
母 『(うっっっ・・・うっっ・・・・)おかーちゃんあんたに、なんにもしてあげられへん。 情けない・・・』
にょろ 『何言うてんのん、おかーちゃんは、今まで一生懸命、可愛がって育ててくれた。それわかってる。』
母 『そんなん・・・・・当たり前の事やもん・・・・』
にょろ 『当たり前じゃない。 他のどこの親よりも、いーーーーっぱい色々してくれた。 だから、そんなん言わんといて。』
母 『ごめんなー、ごめんなー。 あんたに何もしてあげられへんくて・・・』
もう母がうずくまって泣きじゃくり、全然泣きやまないんで、私も泣けて泣けて、母を抱きしめて、二人して離れれなかった。
母が、ここまで私に感謝をしてくれてる事にも驚いた。
それと、母は、右手が不自由になってから、人前で字を書くのを嫌がっていた。
なのに、私への感謝の気持ちを書くという母の気持ちにもビックリしたし、
私に【恩返し】って・・・・・ 普通、子供が親に恩返しするんやろ・・・・なのに、そこまで言ってくれる母が、愛おしくて、切なくて、有難くて、胸が痛い。
それと何よりも、母は本当に、もう自分が残り少ないんだと解っている事も悲しくて切なくて苦しかった。