映画やドラマで、ガソリンを撒いて、火のついたライターを持って、
誰かを脅迫する、というシーンがよくあります。
僕は、そういうシーンを見る度に、やめて欲しいと思います。
多くの場合、ガソリンと灯油を間違えています。
そして、灯油は、易々とは火がつきません。
ガソリンは、温度が高くて、まいた面積が広く、ある程度時間が経過したら、
十分に気化してしまうから、ライターに点火しただけで爆発します。
映画やドラマでよくあるシーンを再現するためには、
灯油よりも燃えやすく、ガソリンよりも燃えにくい燃料が必要です。
お話しを盛り上げるための非現実的な演出が、
お話しを盛り上げるための非現実的な演出が、
すくなからずの人に間違った認識を教育してしまい、
それが、今回のような悲惨な事件につながったとしたら、
そういう演出をした人たちの社会的な責任は、少なからずあると思います。
ていうか、もっと科学的に検証してから脚本を書きましょう。
映画やドラマを鵜呑みにした人は、安易にガソリンを使いますが、
以前、新幹線でガソリンをまいて火をつけた人がいました。
僕の知人がその新幹線に乗っていました。
何両も離れた車両にまで、爆発の衝撃波が来たそうです。
悲しいことに、爆発に巻き込まれた人もいました。
僕らは、ロケットの開発をしていますから、
燃料や火薬類については、かなり学んでいます。
以前、植松電機では液体燃料ロケットの開発の支援をしたこともありますが、
そのときはガソリンではなく、アルコールを使用していました。
アルコールは、水で薄められるので、ガソリンよりは安全に感じましたが、
それでも、プラスチックを使うハイブリッドロケットよりは、
ものすごく精神的に疲れました。
なんせ、液体酸素と、液体燃料は、「混ぜるな危険」だからです。
火薬に関しても、製造と運用の資格を得てみてわかりましたが、
火薬に関しては、ものすごく規制があるのに、
燃料に関しては、運用に関する規制が驚くほど少ないと感じています。
同じ質量の火薬とガソリンを比較したら、
ガソリンの方が発生熱量が大きいです。
なぜなら、火薬には、燃焼に必要な酸素も含まれているから、
同じ重さで比較したら、ガソリンよりも燃料の成分が少ないからです。
僕は、液体燃料(特にガソリン)の運用には、
もう少し規制があった方がいいのではないかと思っていますが、
ただ、世の中には、携行型発電機があります。また、小型のエンジン式かりばらい機なども
沢山普及していますから、個人が携行缶でガソリンを買う必要があります。
それを規制するのは、かなり難しいです。
でも、最近、プロパンガスで作動する小型エンジンの性能は上がっています。
また、電池の性能向上で、バッテリーで駆動されるかりばらい機もうまれましたし、
発電機ではなく、携帯型のバッテリーを使用するケースも増えています。
今後は、小型のエンジンは、軽油を使用するディーゼルもしくは、
アルコールを燃料に限定してはいかがでしょう。
そして、それでは実現できない小型サイズのエンジンは、
プロパンガス駆動か、モーター化に限定する。
そうすれば、個人が携行缶でガソリンを買う必要が無くなります。
つらいのは、競技用の小型バイクかな。スタンドに行けないもんね。
でも、競技をする人ならば、「ガソリン運用免許」のようなものを
設定してもいいかも。
植松電機を会場とするツクリテフェスタには、沢山のお店が出店します。
気がついた人もいるかと思いますが、ツクリテフェスタの会場は、とても静かでクリーンです。
なぜなら、発電機が一台も動いていないからです。
それは、発電機のガソリン補給に関する事故をなくしたいからです。
すべて、植松電機から電源を供給しています。
植松電機には電気のプロがいますから、あっというまに配線を敷設してしまいます。
(当日になっての依頼が多すぎて、苦労していましたが。)
一般的な消防法の規制では、ガソリンをまかれて火をつけられる、という状態には
対応出来ません。
ガソリンをまかれた段階で、ほぼ終了です。
犯人が火をつけなくても、静電気で爆発する可能性があります。
ガソリンをまかれたときに、ガソリンを無力化するためには、
(1)ガソリンより比重が軽くて揮発性の低い液体を散布する。
=燃えにくいアルコールとかつくれないかね
(2)ガソリンと親和性の高い油系で、燃えにくい液体を散布する。
=混合油にするだけでも、燃えにくくなりました。重油とかどうかな。
今回の、恐ろしくて、悲しい事件の再発を防ぐための努力をすべきだと思います。
犠牲になった人と、その人達を愛し、愛された人達の哀しみに、すこしでも報いたい。
日本中のエンジニアと科学者と、そして、ガソリンを運用する人達が協力すれば、
不可能ではない。