今日は、前に「法律事務所の経営の躓き 」で書いた、アメリカの大手法律事務所Dewey & LeBoeuf LLPの経営の行き詰まりの続編だ。Dewey & LeBoeuf LLPは、過大な資金調達による圧迫とパートナー弁護士の離脱に苦しんだ末、昨日、ニューヨーク南部地区米国破産裁判所に連邦倒産法チャプター11の申請を行なった。New York Timesの報道("Dewey & Leboeuf Files for Bankruptcy" )によると、アメリカで史上最大の法律事務所の倒産となったそうだ。
Dewey & LeBoeufのチャプター11申請書類 を読むと、前のエントリーで書いた主な破綻原因は的を得ていたようだ。前回までに明らかになっていなかった事実を補足すると、Dewey & LeBoeufは、申請時点で、取引銀行とNoteホルダーに対して合計で約2億2,500万円の負債を負っていたのを含めて、約3億1,500万ドルの負債と5,000名を超える債権者を抱えていた。また、倒産に至るまで、同事務所がこれらの取引銀行やNoteホルダーとの間で事務所の縮小計画(Wind-Down Plan)について何度も激しく交渉したこと、他の法律事務所に救済合併を依頼して回ったが引き受けてくれる事務所は見つからなかったことが記載されている。また、4月には、同法律事務所の元会長Steve Davis氏に不正行為があったとしてマンハッタン地区検察局から捜査を受け、その後、Davis氏が会長を解任された。さらに、5月になると事態はさらに切迫し、同事務所が所属する全パートナーに対して他事務所への移籍を容認したこと(パートナーシップ契約上の60日間の事前告知義務を免除した)、従業員に対して事務所が閉鎖されて解雇される可能性があることを告知したこと、全米・世界中のオフィスの閉鎖や海外の提携事務所との関係の解消、オフィスの売却を進めたことなどが、生々しく記載されている。関心がある方は、上の申請書類の原文を読んでみることをお薦めする。法律事務所の倒産申請書類など、なかなか見られるものではない。
また、申請書類によると、Dewey & LeBoeuf LLPの主な保有資産は、申請時点で、約1,300万ドルの現金と、約2億5,500万ドルとされる売掛金と仕掛りのリーガル・サービスに対する報酬くらいだ。しかし、この売掛金と仕掛りの報酬は依頼者に支払ってもらわければならず、今、現実に同事務所の手元に存在するわけではない。既に事務所を去って他の法律事務所に移籍した元パートナー弁護士が倒産前に売掛金などを依頼者から回収してしまっていたら、そのパートナーから払い戻しを求めていかなければならない。また、元パートナーが移籍先の事務所に仕掛り中の法律案件を持っていってしまっていたら、その仕掛り部分の報酬はDewey & LeBoeuf LLPに帰属するものとして回収しなければならない。今後の倒産手続の中でこれを回収するのだろうが、どれほどの額が回収できるのだろうか。これから大変な作業が待っている。
今回の件は法律業界にとってとても残念なニュースで、破綻の原因の一端がリーガル・マーケットの低迷にあったことを考えると自分としても気が重い。しかし、これからもこの業界で働いていくのであれば、この事件から学ぶことがあると思う。歴史は繰り返す、ことがあるからだ。上のNew York Timesの記事によると、かつて、Finely Kumbleという大手法律事務所が急激な拡大路線をとり、多額の借入によりスター弁護士に多額の報酬を支払うという経営戦略をとった結果、1987年に崩壊してしまったことがあったそうだ。前回のエントリーでDewey & LeBoeufの経営の行き詰まりの原因について書いたが、まさにFinely Kumbleの破綻の原因と一緒ではないか。保守的に過ぎるかもしれないが、法律事務所はクライアントが第一であり、重視するプラクティス分野で経験を積んで人を育て、クライアントの要求を満たせるような陣容を確保することが優先的な戦略であり、成長があるとすればその結果に過ぎないと考えるべきだろう。
WSJのウェブサイト でDewey & LeBoeufの倒産を伝える短いニュース映像を見ることができる。同事務所のHQから段ボール箱を持ってやりきれない表情でビルを後にするアジア系の人の写真が印象的だ。この事件に対する現地NYの関心の高さを感じることができるので、関心のある方はご覧ください。
