まだうちのCL500はできあがってきません。
なので、CL500がどうしてこんな珍妙トンデモ仕様なバイクなのかを考察します。
CL500ってじつはたいへんに適切な仕様で作られてることを、妄想とゲスな勘ぐり全開で説明してまいります。
 
2024年5月追記:
本稿には以下の姉妹編があります。あわせてご覧ください。
CL500は寄せ集めでできている。:CL500の部品の流用元
CL500のプレスリリースを読んでみました。:説明資料で読み解くCL500/250の仕様

 

・なぜ500cc(471cc)なの?
欧州の免許制度に最適化されたエンジンだからです。
日本の中型二輪免許に相当する欧州の「A2」免許では、乗れるバイクの上限が最大出力で規定されています。
35kwがその上限値なのですが、CL500の最大出力は34kwでほぼぴったりです。
500-650ccクラスのバイクは、欧米市場では幅広い用途に使われる安価で頑丈な実用車として供給されてきました。エンジンの設計では大量生産が容易かつ高い信頼性があることが重要です。
この商品企画のもとで確実に性能を出せるスクエア(ストロークとボアがおなじ)な構成で無理のない排気量を模索した結果、「67.0×66.8」という現状値、つまり471ccに落ち着いたと考えられるのです。これにより、CBR600RRと共通のボアとなり燃焼室設計情報の流用を可能ともしています。要するに最も重要な設計値は排気量じゃなかったというわけです。
このエンジンはホンダさんのグローバルスタンダードエンジンで、2013年に発表されてから小改良のみで2023年まで生産され続けています。
当初からCB500F/CBR500R/CB500Xという3つのカテゴリで共有されており、昨今ではRebel500とCL500にも展開され、ぜんぶで5つのカテゴリをまかなっています。

 

なお、CBR400Rのエンジンは我が国の免許制度に合わせるためにストロークを短縮した国内専用品ですが、基本部分は共通です。
2013年のホンダさんのプレスリリース資料をみるとこのエンジンが性能を追ったものではないことがよく判ります。
CLが400ccじゃないのはなぜか、ですがもとになったRebel500が売れないだろうという前提でコストをかけず世界標準のまま発売されたからじゃないかと思っています。Rebel500の発売当初の年間販売目標はたったの1000台ですから。
余談ですが、ホンダさんは1998年にXR400R系の空冷単気筒エンジンを載せたCL400というモデルを出していました。不人気であっさり滅びましたが、やはりキックスタートのみというのは無理があったんじゃないでしょうか。

 

・なぜ250と共通の車体なの?
CL500もCL250もグローバル市場向けのコミュータ/フラグシップ/エントリというおなじモデルだからです。
近年のバイク史を振り返ってみましょう。
2008年、カワサキさんのNinja250Rが発表されました。このバイク、東南アジア市場ではフラグシップで欧米ではコミュータで我が国ではエントリになるモデルで、全世界で超ヒット商品になりました。
これの後追いで各社が似たようなモデルを出したのは記憶に新しいところです。
その後、カワサキさんは欧州市場のA2免許向けとして出力に余裕のあるNinja300を発表し、これまた各社が追従してCBR300RとかYZF-R3などというモデルが出てきました。
つまり、この時点で各社は欧州と東南アジアと日本の3大市場をひとつのモデルでまかなうというイカサマくさい企画が間違いなくもうかると気づいたわけです。
そこで古来より後出しジャンケンでぜんぶ持って行ってしまう悪癖のあるホンダさんは、グローバル市場向けのふたつのエンジン、CBR250R用の250cc単気筒とCBR500R用の500cc2気筒を、ひとつの車体に載せて売ってしまうというさらにえげつない手法を取ったのです。
それがRebel500/250であり、その派生商品であるCL500/250なのです。

 

・250ccの車体でだいじょうぶなの?
だいじょうぶです。
なぜなら、20世紀の250ccは45馬力つまりだいたい34kwかそれ以上を発生するエンジンを積んでいましたが、充分な余裕がありました。
タイアサイズは前110/70-17で後140/70-17あたりでしたがCL500のタイアはこれを上回るサイズですし、タイアは当時から長足の進歩をとげています。
ブレーキも同様で、当時320mmシングルディスクで充分な制動力がありましたしこれまた現代のは超高性能になっています。
車重こそちょっと重めですが、狂乱のレプリカブーム以前の250ccは車両重量190kgで33馬力なんてのがふつうだったので問題ありません。

 

・なぜスクランブラーなの?
これは流行ってるからとしか言いようがありません。後出しジャンケン大好きなホンダさんとしては、流行りに乗らないわけにはいかなかったんでしょう。
現用機におけるスクランブラカテゴリは、トライアンフのボネヴィルの派生商品がきっかけだったと記憶しています。
20年とか作り続けてカテゴリとして認知され、弱小欧州メーカが商品レンジを広げるために手っ取り早く採用して現在にいたります。
いまでこそ欧州各社はどこもスクランブラモデルを出していますが、日本のメーカではホンダさんが最初になりました。
似たカテゴリでアドベンチャモデルってのがありますが、あっちはラグジュアリなロードツアラであってダート向きではありません。
トライアンフのスクランブラは、初期モデルでは車体に手を入れておらず砂利道を走るようにはできていませんでした。
これに対してCL500/250はもとになったRebelにくらべると大幅にストロークの長いサスペンションを装備しており、フラットダートなら走れなくもない仕様になっています。
グローバル展開中のエンジンで手堅くまとめておいて、売れたらもっとイケてるのを作るつもりなんだと思います。Rebel1100みたいに。