まだまだ届かないうちのCL500、おかげでますます妄想がはかどります。
このエントリの主題は、CL500がなにによって構成されているか、です。
CL500は全体が流用部品まみれですが、それは悪いことではなくて手堅く安価に安定した性能を出せたということでもあります。

 

・エンジン
以前のエントリでも書きましたが、CL500のエンジンは流用品です。
2013年に発表され小改良を受けつつ生産が続く欧米市場対応の汎用実用車向けエンジンが搭載されています。
このエンジンは日経クロステックさんの記事で紹介されてしまうくらい重要な戦略商品で、東南アジアで生産され全世界に出荷されているグローバルスタンダードです。いまはタイ製部品を熊本で組んでいるかもしれませんが。
構造的には、ローラーロッカーアームの採用に偶力バランサの背面搭載にクランクケースと一体になったシリンダと、合理性と耐久性をきっちり盛り込んで内燃機の終焉まで?使い倒す気満々なのがみえみえです。
また、おなじ欧州A2免許対応商品である2018年式以降のNinja400のエンジンとくらべるとすごくでかいのもそういう理由と思われます。
だいたいおなじ出力なのに発生回転数が1500rpm低く排気量が73ccおおきく、雄大なシリンダヘッドとクランクケースを持っている、となればCL500のエンジンがいかに頑丈さ優先に作られたかが判ります。そのぶん重いエンジンではあるんですが。

 

ただ、流用と言ってもRebel500と完全に同じエンジンではないようです。
ホンダさんが公開している仕様のページを見ると、エンジン型式名はCL500がPC68ERebel500はPC60Eとなっていて、別種とされています。
レビュー記事にはエンジンフィールをCLに最適化したとの記載がありますので、おそらく機構部品は変更せず制御プログラムのみで作り分けているんだと思います。

 

・フレーム
一目瞭然、シートレール以外はRebel500からの流用で、軸間距離はわずかに違いますがスイングアームも共通だそうです。
補機類の配置も当然Rebel500とおなじなので、レギュレートレクチファイアがリアタイアの直前にあるという前代未聞の構成も同様です。
クルーザとスクランブラでフレーム共通なんて普通に考えたらイカれた発想ですが、Rebel500がクルーザと呼ぶに値しないスポーツ仕様のバイクなので、意外に親和性が高いんじゃないかと思っています。ホンダさんそういうところは容赦なく詰めてくるし。
もちろん、速度計とメインキーとハンドルロックと灯火類もRebel500と共通です。
それにしても、ハンドルロックがメインキーと別なのはどうにかならなかったのでしょうか。原型のRebel500はクルーザの作法に則ってメインキーをメータ周辺から追放しましたが、ふつうにトップブリッジ上に設置してくれてもよかったのにと思います。

 

ホンダさんの商品って、古来へんなこだわりがあってめんどくさいという印象があります。
そのこだわりのせいでRebel500/250はハンドルバーの直径がハーレーダヴィッドソン社商品で使われる1インチになっており、グリップラバーの選択がやっかいです。ツーリング向きなのに純正ハンドルヒータがつけられないのってどうなんでしょう。
Rebel1100のハンドルバーはそこの対策でわざわざ握る部分だけ一般的な22.2mm径の細いパイプが溶接されているわけですから、もうほんとに度し難いとしか言いようがありません。

 

・サスペンション
Rebel500のものを基本にストロークを延長されました。
さすがにフロントフォークのボトムケースは共通じゃありませんが、インナチューブ外径は共通です。
当初は共通と思われたトップブリッジ/アンダブラケットは、Mortor Fanさんの記事によると専用品だそうです。Rebelではキャスタ角(ステアリングステムの対地角度)28度からフロントフォークを2度寝かせる「スランテッドアングル」フォークだったんですが、CLではこれをあらためてキャスタ角とフォーク角が同一になっています。また、Webikeさんの記事によればフォークピッチもRebelの230mmから204mmに狭められているそうです。
このおかげか、ハンドル切れ角も38°とRebelより3°増えています。最小回転半径が減るのはいいことです。

 

共通で使われるスイングアームに取り付けられたリアサスペンションは、みためそっくりですがものすごく長くなっています。
※7月26日追記:CLのスイングアームはRebelと共通の部品ではないとのことです。日本自動車工業会さんのインタビュー記事によると、排気管を通すためにスイングアームの曲げ位置を変更し、サイレンサを避けるために右ショックユニットを内側に寄せているそうです。:追記終わり
CL500はサイドスタンドからバイクを起こすとぐっとサスペンションが沈み込みます。Rebel500のリジッド的なサスペンションに対してかなりしなやかな設定になっています。
ホイールトラベルはRebelの前140mm後95mmにたいしてCLは前150mm後145mmだそうです。
あと、スイングアーム後端のドライヴチェーン調整ネジが工具のかかりが浅くてなめやすいはずなので気をつけないと。ここはRebel500と共通ですからたぶん問題になります。
 
(2024年1月15日追記)
CL500と250、サスペンションは共通だそうです。
それによると、フロントフォークとリアショックユニットのダンパ部分は共通で、それぞれスプリングのみの変更とのことです。
車重が20kgちがうのにスプリング変更だけでふつうに走るってふしぎです。
伊藤さんは原型が500であるとされていて、250はプリロードと減衰が高すぎる傾向であると評価しておられます。

 

・タイアとホイール
ホイールは400X(グローバル市場ではCB500X)からの流用だそうです。
タイアサイズは前輪が110/80R-19のHレンジでこれは400Xとおなじ、後輪が150/70R17のHレンジでGB350Sと共通です。ってことは、400XとCL500/250に加えてGB350Sもリアホイールは共通部品だってことですね。
CL500のタイアは、そんなわけでラジアル指定になっています。Dunlopさん製「TRAILMAX MIXTOUR」ですが、これはZカテゴリ/Wレンジのが各社のアドベンチャモデルに採用されている既存の銘柄です。
CL500のは、サイズも違いますが速度記号が「H」になっていて時速210キロまで対応しています。

 

でも、どうせ160km/hくらいしか出ないのにラジアルなんて贅沢だと思います。
なのでちょっとタイアのカタログ情報を当たってみまして、バイアス化が可能であることが判っています。
リアタイアの150/70-17はオンロードバイアスタイアの一般的サイズですから問題ありません。フロントタイアはちょっと工夫が必要で、おなじリム幅に対応する100/90-19というサイズならバイアスタイアを選択できます。
110/80-19と100/90-19の寸法を比較すると、外径も幅もほぼ誤差範囲と言ってよい程度の違いしかありません。
なので、Bridgestoneさん製のBT46でHレンジのを前後セットにすればだいぶお安くなりますし、もっと節約したい場合はIRCさん製の「RX-02」を後輪に装着し前輪に「RS-310」を装着するとびっくりするくらい安上がりになります。