スケアクロウ・ソング | AFTER THE GOLD RUSH

AFTER THE GOLD RUSH

とおくまでゆくんだ ぼくらの好きな音楽よ――

最近、めっきり寒くなった。冬が近づくと心に響く歌というのも数多あるが、ボクの場合、リンディスファーンのこの歌が最もしっくり響く。

 

 ねぇ君 すごくラリって見えた
 あの色つきのコートは もう捨ててしまったんだね
 今、冬がやってきて
 君はカカシの歌を聞く
 幸運な日々はもう終わったんだ
 幸運な日々は行ってしまった・・・

 (スケアクロウ・ソング)

 

1970年産のこの美しいバラードを聴くと、酔いどれたアラン・ハルが、一人冬の街をさ迷っている情景が目に浮かぶ。賑やかだった夏が終わり、秋を通り越して、いきなりやってきた冬。
Your luckey days are over/Your luckey days are gone・・・
それは、お祭り騒ぎのような60年代の終焉と共にやってきた、シラケた70年代のことなのかもしれない。

 

スケアクロウとは言うまでもなく案山子のこと。そういえば、70年代には、ジーン・ハックマンとアル・パチーノが共演した同名の素晴らしいロード・ムービーがあった。その中で、パチーノが「カラスは案山子を怖がってるんじゃないんだ、笑ってるんだ」と言ってたっけ・・・。カラスは、案山子のことをいいやつだと思ってるから、田んぼを荒らさない、とも・・・。

 

シラケた70年代、暴力の鎧を捨てた若者にとって、照れ笑いと自己卑下が、自分の田んぼを「カラス」から守ってくれるプロテクトだったのだろうか?それは、2005年の冬を生きるボクも同じかもしれない。

 

Lindisfarne/Nicely Out of Tune (1970年作)
英国フォーク界の酔いどれ吟遊詩人アラン・ハル率いる5人組の1st。
ヨレた歌声と哀しくも美しいメロディラインで、英国の寂れた冬の情景を描く。
2ndの「Fog on the Tyne 」も英国フォーク・ロックの名作。