若松孝二考 その1 | AFTER THE GOLD RUSH

AFTER THE GOLD RUSH

とおくまでゆくんだ ぼくらの好きな音楽よ――

若松孝二の「初期傑作選 DVD-BOX」なるものが発売された。
低予算でアングラな傑作を量産した監督に似合わず、本ボックスは3枚組で税込1万5千円強と、かなりバブリーな価格。残念ながら、これでは気軽に手が出ない。

 

収録されているのは、若松監督がエロスと暴力を武器に政治の季節に真っ向から挑んだ「新宿マッド」「性賊/セックスジャック」「天使の恍惚」の3作。


kagekiha どれも60年代末から70年代初頭にかけてのヒリヒリと尖った空気が充満しており、ボクの好きな作品なのだが、多分この3作を続けて観ると、

 

サイケなヒッピーがギターと火炎瓶を抱えて、ハレクリシュナな革命を叫び(新宿マッド)、学生活動家が官憲に追われつつも、薔薇色の連帯を唱える(性賊)、そんな牧歌的時代から、次第に個人テロの狂気が芽生えだし(性賊)、それは孤立した精鋭による爆弾闘争へとエスカレートしていく(天使の恍惚)・・・。

 

そんな時代の様が見えてくるだろう。

 

いや、こういう見方はもう古いのかもしれない。21世紀の今なら、若松映画から古色蒼然とした政治的意匠を剥ぎ取り、映画の核心、つまり、剥き出しの「復讐心」を感じ取るだけでいいのかもしれない。集団や組織の論理に振り回され、イジめられ、追い詰められた真の弱者が、大きなものに対して一人きりで戦いに挑む、そのカタルシスに酔うのが、若松映画本来の楽しみ方なのだろう。

 

しかし、この監督のことを書くのは重い。ボクの思い入れが強すぎるのか? メゲずに、次回は「天使の恍惚」について書こうと思う。