コメントにて、多発性嚢胞腎とは何かと質問があったので、今回は、今までの物と重複する点もあるかと思われるが、この病気で悲しい思いをされた諸先輩の方々、またかかりつけ医、サードオピニオン医、大学病院の獣医、大学での研究結果データ、学会資料、様々な文献とネットなどからの情報と私自身の経験から、まとめてみたいと思う。



<多発性嚢胞腎>

人間にも同様の病があり、遺伝性の難治病として、難病指定となっている。病が発症した場合、ゆっくりだが確実に進行し、いずれは慢性腎不全と体をなし、人間であれば人工透析となり、その後少しずつ腎機能が弱まり死に至る。猫も同様で、現状、完治させることはできない。人間では70歳、猫では7歳が平均寿命とされている。治療法は確立されていない。(完治不可)

病態としては、両腎臓に複数の嚢胞が発現され、少しずつ大きく、また増殖し、腎臓の正常な細胞を壊していく。残された正常な腎臓細胞が、最後まで頑張ってくれるので、表面的に異変が現れた時には、かなり進行している場合が多い。




<多発性腎嚢胞>

こちらは、名前も間違いそうな程似ていて、腎臓の病態も一見似ている。腎臓に複数の嚢胞が見られる。多発性嚢胞腎と違う点は、この多発性嚢胞腎の嚢胞は、増えたり、増大したりはせず、生涯そのままで特に問題を起こさないということだ。もちろん、通院の必要もない。

最初に、これらの病気の見極めが大切だ。これにより、治療が必要かどうかが変わってくるからだ。




ここからは治療法などを書いていきたいと思う。


<腎臓移植>

アメリカでは、腎臓移植も行われているが、ドナー猫は、必ず家族として受け入れることが条件となり、複数件の経過は、おおよそが術後1年程度で、生涯を終えているようだ。ペットの血液型等、まだまだ詳しく研究され尽くされていないのが現状で、拒否反応にもどのような症状が顕著なのか等々、まだ症例が少なくまだまだ未知の分野となっている。また、人道的問題もあり、賛否両論あるが、日本でも一部の施設では、行えるようだ。日本の場合、同じ家ので共に飼育されている猫がドナー対象となるようで、多頭飼いでない場合は難しいだろう。







<輸液、慢性腎不全に伴う治療薬とトルバプタン>

現時点での治療方法としては、慢性腎不全と同様の投薬(腎臓の炎症を抑えるラプロスなどが使用されることが多い)と輸液がメジャーとなっている。ただ、最近、新しい治療法として、サムスカ(トルバプタン)と言う人間の多発性嚢胞腎の治療に使われる薬を猫にも使えるという研究結果が岩手大学から発表され、少しずつだが取り入れている病院も増えてきている。


https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-26450421/26450421seika.pdf









<遺伝子検査>

http://news7a1.atm.iwate-u.ac.jp/~hospital/download/pkd_diagnosis2023.pdf



<トルバプタン治療を行なっている病院>

トルバプタン治療を行なっている病院は、圧倒的に関東周辺が多い。私が住んでいる地域では、大学病院ですら、取り扱い不可と言われ、藁にもすがる思いで、かかりつけ医に懇願し、更に関東の病院から資料を分けていただき、それを元に手探りで治療を行なっている最中だ。また、かなり高額な薬のためか、私の地域では、同じ病気で、トルバプタンを使って治療を行なっているという話は、聞いたことがない。知り合いの猫も、同じ病気で、命を落としてしまったが、トルバプタン治療の知識もなく、なすすべなく腎不全に対応する処置のみだったようだ。








ネットで検索すれば、今では結構な数の病院が見つかる。ちなみに、私の地域からは、飛行機を使わなければ通えないので、残念ながら受診することができない。が、3つ目の茨木元町動物病院の先生とは、一度ブログ内で、やりとりをさせていただいた経緯がある。そして、関東でご意見をいただいている病院は、インスタで出会った同じ病気で今現在闘病をされている方からご紹介いただき、そのご縁でお世話になっている。



<多発性嚢胞腎の治療の矛盾性>

ちなみに、多発性嚢胞腎は、輸液により増量、増大し、慢性腎不全と似たような病態を示すものの、似ていて非なるものだ。ただし、輸液が必要なほどの脱水が進んでいる場合、その状態で嚢胞どうこうという段階ではなく、少しでも身体が楽になるよう輸液で、尿毒素を排出してあげるのは、間違いではないどころか、最後の手段となる。


最終的には、嚢胞により腎臓自体が大きくいびつになり、正常な腎臓細胞が壊され、尿毒症となりその毒素が全身をまわり、脳へ辿り着き、毒素の濃度も上がっていき、意識障害や痙攣を起こし、最後を迎えることになる。このあたりは、慢性腎不全と同じような症状だ。



<トルバプタン治療>

嚢胞の増殖、増大のスピードを緩めてくれると言われている。開始時期は、腎臓数値に何らかの腎臓病が疑われる数値が現れ、更に嚢胞の変化するスピードが早くなって来た時が、治療開始のタイミングと言われている。トルバプタンも万能ではなく、やはり薬なので、副作用もあり、また長期に渡り服用することとなるため、あまり早い時期からは使用されてはいないようだ。元々、この多発性嚢胞腎の悪化するスピードがゆっくりなので、中には何の症状もなく10歳を迎える猫もいるらしいので、トルバプタンが効いてのスピードなのか、元々のその子の嚢胞のスピードなのかは、なんとも言えないところらしい。ただ、人間でも使用されている薬なので、やはり何らかの延命効果はあると思われる。


簡単にまとめてみたが、よろしければ過去のブログをお目通しいただけると、より詳細が理解できるかと思われる。