こんにちは。茨木元町どうぶつ病院 獣医師の森岡です。

 

今日は腎臓病のお話です。

腎臓病は高齢のネコちゃんに多く見られる病気ですが、今回は、私の大学時代の研究テーマであった『多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)』と呼ばれるちょっと変わった腎臓病についてお話します。

 

 

 

まずは腎臓についてのお話です。

腎臓は、からだにとって不要なもの、有害なものをおっしこにして、からだの外に出してくれる大事な臓器です。

毎日絶え間なくはたらいている腎臓は、年をとるにつれて徐々に傷つき、疲れ、その機能が落ちていきます。

しかも腎臓は、再生することができない臓器のため、一度悪くなった腎臓は良くなることがないのです。

疲れてしまった腎臓が、不要な老廃物をうまくおしっこにすることができず、からだの中に溜まってしまう状態を『慢性腎不全(まんせいじんふぜん)』と呼んでいます。

これは高齢のネコちゃんに多く見られる病気です。

点滴や投薬、食事療法などにより、腎臓の負担を軽くすることがメインの治療になります。

 

 

多発性嚢胞腎はペルシャやエキゾチック・ショートヘアに多く見られる遺伝的な腎臓の病気で、腎臓に『嚢胞(のうほう)』と呼ばれる、液体の溜まった袋がたくさんできることが特徴です。

↑↑左図が正常腎、右図が嚢胞腎です。

 

 

嚢胞はエコー検査で、腎臓に黒く抜けた影として見ることができます。

↑↑上図が正常腎、下図が嚢胞腎です。

 

 

この嚢胞は少しずつ大きくなり、正常な腎臓の組織を圧迫して破壊していきます。

 

当院では多発性嚢胞腎の遺伝子検査も行っています。

多発性嚢胞腎は遺伝子の異常によって起こる病気であることが分かっており、この遺伝子の異常は、発症前であっても血液を採取し、検査センターに提出することで調べることができます。遺伝子に異常があれば、定期的にエコー検査を受けていただくことで、嚢胞の発生を早期に発見することができます。

 

しかし、今のところ嚢胞の発生を抑える有効な治療法はなく、慢性腎不全と同じく、残った正常な腎臓の負担を軽くすることしかできません。

慢性腎不全であっても、多発性嚢胞腎であっても、できるだけ早く発見し、できるだけ早く治療することが重要です。

 

① お水を飲む量が多い

② 薄いおしっこをたくさんする

③ 食欲がない、吐く

 

このような症状は、腎臓が弱っているサインかもしれません!

少しでも不安なことがあれば、いつでもご相談ください。

 

茨木元町どうぶつ病院 獣医師 森岡

 

※※2023.2.9追記

猫の多発性嚢胞腎に対しトルバプタンという薬が、効果的ではないか?という報告が上がってきています。そして当院でもトルバプタンを導入しております。トルバプタンによる治療をご希望の方は当院までご連絡ください。 松本