「…で?」
「はい?」
「色々気になるんだけど?」
「え、何が?」
生明はため息を大袈裟についた。
「まず、カクさんは左胸を突かれて出血してる…見たところ心臓を貫通してるようにしか見えないけど。よく生きてたね、ってこと」
「あー、それね!僕はね、特異体質で心臓が右にあるんだよ…確か」
「(確か、とな!)ふ、ふーん…でもまぁ、それにしても痛みは…?それと出血もあまり無いのも気になる」
「うーん、それはわからないなぁ。でもいいじゃん…生きてるんだもんね。痛いけど」
「生きてるんだもんね、じゃねーよ(生明は苦笑して)…ま、確かにそうね。それが大事よね」
「でしょ?」
格之進も笑った。
「でさ…りりは?さっきも聞いたけど」
「あ…それが…」
そこに、テツヤが割って入ってきた。
時間は数時間前に遡る…
テツヤがチョークスリーパーでマァル将軍を仕留めた…かに見えた。
思わずテツヤがスリーパーを外すと、急に白目を向いていたマァル将軍は、赤く目を光らせた後、ピースタムに変身した。
素早く璃彩を片手で拾い上げ、目からテツヤとアラタの命を奪うべく、光線をはなった。
直撃しつつもテツヤとアラタは、咄嗟にバリアで防御した。一命はとりとめたものの、流石にダウンしてしまった。
薄れゆく意識の中で、テツヤとアラタは璃彩を連れ去って行くマァル将軍の姿を見続けるしかなかった…
★☆★☆★☆★☆★☆
「そっか…璃彩が…」
生明がそう呟くと、アラタが申し訳無さそうに言った。
「ママ…ごめんね。大切な妹を奪われちゃった。守れなかった…」
「何言ってるの。キミたちは、よくやったよ。そんな強そうな相手に、よくそこまで追い込めた!」
と、二人の間頭を撫でた。
「それに、大切なのはりりだけじゃない。もちろん君たちも、あたしには同じくらい大切なんだよね。武事に生きていてくれて、良かった!」
格之進はそのやり取りを聞いて、ミョウにモヤモヤした。
いつの間にかテツヤとアラタに「パパ」と呼ばれ、リリーサ(璃彩)も娘になってるやないかい!と。
確か僕らは助け合って生きていく同志じゃなかったっけ…?
ま、いいか。
格之進がモヤモヤしていると、生明は急に真顔になった。
「じゃ、みんな。いこっか」
「うん」
テツヤとアラタが声を揃えて返事した。
「(行くって…?!)まさか、リリーサを取り戻しに行くって言うのか?!」
「だって、ここにいても、りりは戻ってこられないでしょ?」(生明)
「まだ赤ちゃんだもんね」(テツヤ)
「そうそう」
「そんな無謀な!危険過ぎる!」
「そう、だからカクさんは、ここに居てよ」
『な、なんでだよ!僕だけ残って君たちを行かせられるわけ無いだろ!』
そこへアラタが割って入って言った。
「パパ、僕たち子供だよ?まだ働けないの、3歳だから。りりを可愛がる事はできても、育てるのはチョットねー」
「野生児に育てたいなら別だけど」(テツヤ)
と、完全に取り戻すつもりでいる。
「サウサリコは危険な国だ!君たちだけで何とかなるワケ…」
「(遮るように)これまで何人かかろうと、みんなでやっつけてきたの見てたでしょ?怖いのは、マルハダカさんだけよ」(生明)←もはや名前覚える気ない
格之進が何も言えずにいると、生明は続けた。
「確かに取り戻せるかは分からない。とても危険なコトは分かってる。でも、りりを助けないと、なんだかヤバい予感しかしないんだよ。だから少しでもそれを阻止する可能性があるとしたら、地球連邦じゃなくてあたしらなんじゃないかい?…ネ?」
生明がニッコリ笑った。
格之進は何とも言えない表情で、それを見つめた…
(その4につづく)