『果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語ー53ー』にゃんく | 『にゃんころがり新聞』

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果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語

ー53ー

 

 

 

 

 

にゃんく

 

 

 

 

 

 

 

 晩餐会はいつ終わるともなく終わっていました。
 隣の部屋から、ばか力の鼾が聞こえています。リュシエルが見ると、ばか力は臍を出して寝ていました。その隣では、背を向けて、静かにスナイパーが目を瞑っています。
「さ、あんたたちも、こっちの部屋で眠りな」ミコさんに案内され、夕食の皿を片付けた部屋で、ミミ達三人は横になりました。三人は、お昼寝をしたせいで、なかなか寝付けませんでした。

 

 

                            ☆

 

 

 ようやくうとうとしはじめたように思った朝方に、何やら騒々しい物音がしますので、リュシエルはベッドから体を起こしました。
 リュシエルはそっと部屋から出て、音のする方へ行ってみますと、山荘の戸の前で、オカシラとばか力、スナイパーの三人が、昨日総督府の検問所から奪って来た食料や衣類を積んだ荷車を何処かに運び出そうとしているところでした。指輪やネックレスなどは山荘に残していくらしく、ばか力とスナイパーふたりで手分けして荷車から降ろしていました。総督府の役人の生首は、何処で処分したのか、消えていました。
「やあ」リュシエルに気付いて、オカシラが快活に挨拶をしてきました。
「おはよう御座います」
「まだ寝ててもいいんだよ」
 すでに東の空が明るくなっていました。カラスがやかましく鳴いています。
 リュシエルは疑問に思ったので、訊いてみることにしました。「何処へ行くのです?」
「村さ」
「この食べ物を、どうするのです?」
「村に落として行くのさ。世間には、飢えた人がたくさんいるからね」
「……」
「此処には、いつまで居たっていいんだぜ。オレ達の仲間になるって云うんならさ」そう云うと、オカシラはばか力に荷車を引かせて山を下りて行きました。

 

 

 その日、ミミ達三人は山荘でのんびり過ごしました。
 山荘の窓辺には、花をつけたジャスミンの植木鉢が置いてあり、ミミはその香りを嗅いで楽しみました。
 山荘の庭では、コユビちゃんが山羊の乳を搾っていました。
 すこし山を下ったところに、大きなニレの木があり、おやつの時間になると、ミミたちはミコさんに連れられてその木の下でお菓子を食べました。
 そして気が向くとミミはリュシエルに魔法の教科書を読んでもらい、魔法を覚えました。
 ミミは「雨を降らせる」魔法を覚えました。難易度は高めの魔法でしたが、ミミは一度聞いただけでその魔法を覚えることが出来ました。
 ミコさんは、「私にも、魔法の教科書を見せて」とミミに懇願しました。ミミは、「好きなだけ見てください」と云って、それをミコさんに渡しました。
 ミコさんはしばらく魔法の教科書をつまみ食いするように読んでいましたが、思い切ったように、こう云いました。
「ねえ、人に自分のことを好きにさせる魔法ってないのね」
 リュシエルはちょっと考えた後、「そうですね、ないですね」と答えました。「人の気持ちをどうにかするって、魔法でも出来ないことなんですかね」
 ミコさんはがっかりしたように、魔法の教科書をミミに返して、空を仰ぎ見ていました。
 ミコさんは魔法を使ってオカシラのことを振り向かせたいのかな、とリュシエルは思いましたけれど、黙っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

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