『果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語ー㊱ー』にゃんく | 『にゃんころがり新聞』

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果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語

ー㊱ー

 

 

 

 

 

にゃんく

 

 

 

 

 どれほどの時間が経過したのかケイには一瞬分かりませんでしたけれど、ふと目が醒めた時、目につく位置に手紙が置いてあるのに気がつきました。そこには、
(ちょっとの間、旅に出ます。心配しないで下さい。親愛なるミミとリューシーより)
 と書かれていました。家の中を見回してみると、誰もいませんでした。荷造りをした後のように、部屋の中が散らかっていました。ケイは自分がカエルの化け物たちを目撃した後、気を失って倒れていたのだと思いました。
 もしやと思ってケイが家の扉の覗き穴から外を見てみますと、やはりあのカエルの化け物達がいました。ケイは此処にいると自分は食べられてしまうことになるのではないかと思い、泡を食って家の裏口から逃げました。

 

 家の正面でカエルの兵隊たちは時々ゲロゲロと鳴きながら、支度をするからしばらく待っていてくれというリュシエルの言葉を信じて首を長くして待っていましたが、黄昏時になっても家の中は森と静まりかえったままでしたので、口々にゲロッゲロッと鳴いて慌て出しました。これほど暢気なカエル達が突然慌て出したのには、自分達の夕食の時間が近付いていたということもありました。
 唯ひとり人間の言葉が喋れるリーダー格のカエルが戸口を激しく叩いて、リューシー様! リューシー様! と叫びましたが、家の中からは何の反応も返って来ませんでした。当然のように扉には内側から閂がかけられているのか、押しても引いてもビクともしません。
 カエル達はああでもない、こうでもないとカエル語で議論を交わし合った後、こうなったら実力行使で家の中に踏み込むしかないだろうという結論に達しました。そうして一匹のカエルが「ゲロッ」と気合いを入れて戸口に体当たりをすると、扉がバリバリとおもちゃのように踏み破られて、カエル数匹が家の中に闖入しました。しかし当然のように家の中はもぬけの殻でした。
 これはまずいことになった、とリーダー格のカエルは思いました。こんなに帰るのが遅くなったあげくに、肝心のリューシー様の身柄を押さえることすら出来なかった。今夜は食事抜きかも知れないぞ、と他のカエル達にカエル語で話しました。
 カエル達はしばらくロゴーク村周辺をうろついて捜してみましたが、やはりリューシーを見つけることが出来ませんでしたので、仕方なく手ぶらで洞窟に戻りました。カエルの中には暢気に口笛などを吹いている帰る者もありました。
 しかし、カエル達が洞窟に到着してそれまでの経緯をリーベリに説明しますと、話を最後まで聞かずにリーベリは激怒しました。そしてリーベリの命により、任務に失敗したその七匹のカエル達は全員串刺しにされ、丸焼きにされることになりました。リーダー格のカエルが飛び出た目に涙を浮かべて命乞いをしましたけれど、リーベリはまったくもって聞く耳を持ってくれませんでした。
 その夜、生き残った二匹のカエル達は、洞窟の外で篝火に照らされながら、七匹の同僚達が悲しげな目つきを浮かべ丸焼きにされている恐ろしい光景を目の当たりにし、怖気を震いました。そうしてますますリーベリへの忠誠を誓うようになりました。そもそも人間のように巨大化する前に、足の指を一本引きちぎられているからには、完全にこころをリーベリに奪われて思いのままに操られる運命にあったのです。ですからこのかわいそうなカエル達にとって、リーベリという怖ろしい魔女に従うしか自分達が生き延びる道はありませんでした。

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

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