書評『ゆりかごの唄』(郭公太さん作) | 『にゃんころがり新聞』

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 『ゆりかごの唄』(郭公太さん作)の書評です。


 『ゆりかごの唄』は↓こちらから読めます。
http://ncode.syosetu.com/n6762bj/

(書評)
 いつも最悪のタイミングで我が家にやって来るミツコ姉さん。
 本作は、主人公の修のいとこに当たるミツコ姉さんにまつわる物語です。
 結婚し、子供ももうけた修は、暗に金策をせがむように我が家にやって来るミツコ姉さんを、迷惑に思っていたのですが……。
 
      *
 
 安定感のある文体で、安心して一気に最後まで読めました。
郭公太氏は、「中田病院」三部作で、凝縮力のある作品を書ける短編作家としての実力は証明済みですが、「ゆりかごの唄」を一読すれば、中編以上の作品も優にこなせる筆力があることは、誰の目にも明らかです。
 純文学的質の高さと、エンタメ的ストーリーテリングが絶妙なさじ加減で融合された「ゆりかごの唄」を、是非ひとりでも多くの人に読んでもらいたい。
 最後の一文、「私は今、三十五歳になって、やっと自分のことを大人だと思えるようになったのである。」というのは蛇足ですが、それすら許せてしまえるほど、本作の完成度は高いのです。